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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.92
TOP RANK

こいさんと、行きたや昭和のジャズ横丁。
@大阪・難波

キタから言うなら道頓堀を渡って少し、心斎橋筋を東に折れたあたり。
オダサクの「夫婦善哉」の舞台としても知られるにぎやかな横丁である。ただ心斎橋のにぎやかさとはかなり印象が違って、どことなくはんなりした雰囲気のながれるところでもある。もっとも取材にうかがったのはまだ日の高い時刻、とっぷりと暮れればまたちがった表情を見せてくれることだろう。

赤いサインを目印に、螺旋階段を昇ったところがTOP RANKなのだが…。
トビラを開けて驚いた。
ホントにもう、視界のいたるところがレコードとCDとオーディオ機器で埋まっている。まさに「埋まっている」という感じなのだ。
もちろんバーなのでお酒のボトルはたしかにたくさん並んでいる。でもそれをはるかに凌駕する迫力である。
そして、ジャズの音源はもちろん、よく見ていくと妙に懐かしい気分になる。そちら方面だけを並べると、小川知子、和田アキ子、ザ・ピーナッツ、さらにフランスからはENZOENZOのコンプリートなんていうオシャレ系も…。
なんという品揃え。いや、それだけではない、ジャズやシャンソンのSP盤までという驚くべき幅広さである。ジャズだけでなく、楽しい音楽のワンダーランドというべきだろうか。
オーナー・武村秀夫さんはコレクター体質なのかもしれない。そして、曲名ではわからないけれど「アーティスト別、アルバム別なら何がどこにあるかちゃんと把握しています」というのがものすごい。ちらかしっぱなしの部屋に住んでる人の言い訳じゃないんですよ。

お聞きすると、「世界で最初に録音されたジャズのレコードの復刻版とか、去年録音されたばかりのアルバムなんてのもありますよ」と涼しい顔でおっしゃる。
ジャズ・バーとうたっているくらいだからジャズは当然お好きなのだそうだけど、「みんなが顔をしかめて黙り込んでジャズを聴いているような昔のジャズ喫茶」が嫌いで、それを180度うらがえしてみたら…?というのがこのお店のコンセプトだったそうだ。

そのへんが、要は楽しい音楽が好きなだけで、「僕はフツーの音楽ファンです」という衒いのなさにつながっているのかもしれない。
そういう気楽さは若いDJたちにも慕われているようで、最近手に入れたレコードは彼らに教えてもらったものなのだという。
それを何だと思し召す?アルバムタイトルは「YESTERDAY」、ビートルズのアレである。
なんと歌っているのは勝新太郎。いい声なんですよ、これが。いやー知りませんでしたねえ…。
他にも、エール・フランスが協賛してブラジルでレコーディングしたという山本リンダ「燃えつきそう」なーんてのもあるんです。

「ボーカルものが好きなんですよねえ」とおっしゃる武村さん、さりげなくCHET BAKERが並んでいたりするのもそのせいかもしれない。
さらに、蓄音機でSP盤が聴けるお店ってのもなかなかないのでは。すくなくとも僕は、ここで初めてその音を生で聴きました。
かけてくださったのは古い古いシャンソンとジャズ。
ああ、これで「サクランボの実る頃」なんて聴いてみたいなあ。
TOP RANKでは「ライブはしません」ということなのだけど、この蓄音機の音は、昔、たくさんの人々が聴いた音そのもの。時代を超えたライブなのではないか?なんて思ったことだった(余談ですが…。回転数の問題とかあるんだけど、こんな蓄音機でPerfumeとか聴いてみたいと思っている僕です。アナログ盤は出てるけど、さすがにSP盤まではねえ)。

昭和って、音楽的にもずいぶんおもしろい時代だったんですねえ。
ジャズが入ってきたのももちろん昭和、それを展開させて歌謡曲へと進化させたのも昭和。
「上を向いて歩こう」の人気の元には、きっと「ジャップのガキがジャズを歌うって?そんなバカな」なんていう感覚がきっとあったろう(6・8・9トリオは偉大でした)。実際それはとても良かった。ストレートな、素直なジャズ、大衆音楽としてのジャズがあったのも昭和という時代ではなかったかと思うのですね。

いいものはいい。
テクノ時代に論議を呼んだ考え方ではあるのだが。
ここではそれがリアルなのだ。
いささか反語的ではあるのだけど、いい音楽はジャズだけではない。もちろん、ジャズもいい音楽のひとつなのだ。
SP盤をかけていただいたときには、一枚ごとに針を交換する武村さん。
「もっと使えるには使えるんですけど、盤を痛める可能性があるので…」
大切に大切にレコードを扱う手つき、こういうところに愛がうかがえるのである。

あ、そうそう、ここではあえて名を秘すわけだけれども。
武村さんが最近ハマっているというとっても意外な日本のグループがあるのです。
それが誰かはぜひ、直接お聞きになるのがよろしいかと…。