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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.91
Doodlin’

Funky,Gutsy,ジャズの路地。
@神戸・元町

神戸元町、駅南。神戸プラザホテルのちょうど真裏。
いわゆる「オッシャレー」な神戸とはちょっと違う、細い路地の入り組んだ僕の愛するダウンタウン。
近くには小体ながら餃子の旨いあの店や、某ミネラルウォーターと同じ名前の古い喫茶店(決してカフェなんぞと呼んではいけない。いや、こういう店こそカフェと呼ぶべきか…)もある。

昔はこういう街の魅力がまるでわからなかったものだけど、今はこういう街にこそ惹かれる。なんというか、人と歴史がつみかさなってこそ醸し出される独特のにおいが、通りのあちこちに心地よくしみ込んでいるのだ。それはまるで、水草の豊かな場所に魚たちが集まるかのようなものかもしれない。

そんな通りにあるのがこの店、Doodlin’。
看板をたよりに細い階段を上がるともうそこがファンキーなジャズの入り口である。
迎えてくださったのはオーナー兼バーテンダーの小倉慎吾さん。真っ赤なアロハがカッコいい。
なんでも以前は会社勤め、辞めてから「さて何をしよう?」みたいな感じだったらしい。エエカゲンといえばエエカゲン、しかしこういうときこそ縁とか運命に人は動かされてしまうのでありますね。
お好み焼き屋をやるという友達とあちこち物件を探しているうちに、たまたまこの場所を「見つけてしまった」ということらしい。もっとも、このあたりは昔から小倉さんの遊び場だったということなのだが…。

なんでもジャズとの出会いもそんな感じで、今は昔の80年代、ベストヒットUSA(←しかしこれもすごいタイトルですね)「こんばんは、小林克也です」みたいな音楽ににどっぷりだったというから面白い。そんな頃に高校の同級生に誘われたってのがアート・ブレイキーのコンサート。完全にノックアウトされ、これがジャズとの衝撃の出会いだったということで。
それから後はジャズ、それもファンキーでソウルフルなジャズ一辺倒、働いて呑んで、レコードを探しまわる日々が始まったわけである。

コンサートにもできるかぎり行ったということだけど、いまでも心残りの「行けなかった3人」てのがあるそうで。
それがディジー・ガレスピー、デクスター・ゴードン、アーネット・コブ。もう土のにおい、硝煙のにおい、そしてホルモン焼きのにおい、馥郁とはいいかねるような強烈な個性の持ち主ばかり。たしかにアーティストも生きている普通の人間であり、歳もとり、やがてはいなくなってしまうわけで、出会い損ねるともう一生出会い損ねちゃうわけですね。それを思うと、出会い損ねてしまった後悔もさもありなん、惜しまれることしきりだろう。それを残念だ、という小倉さんの横顔には一瞬、青年と老人(失礼!)の表情が交錯する。

お店を訪れる年配のジャズファンには教えられることが多いという小倉さん。
「よくジャズのことを知っていて、音楽に対して情熱も持っている人が多い」のだそうだ。おもしろいのは若いお客さんの反応で、かかっているLPレコードをすぐにスマホで検索して、某ブラジルの大河サイトですぐに買ったりするのだそうだ。なるほど、たしかにそんなことができるのが現代。そこでオーダーされるのがまだまだケータイはおろかPCすらなかった時代の音楽ってのがまたおもしろい。

まあそんなこんなで…。
Doodlin’ではかかる99%がドラムが入っているらしい。「お客さんのスペースよりバーカウンターの後ろのほうが広いですから」と、よく踊っているという小倉さん。そしてわいわいにぎやかに聴いてほしい、たぶんジャズってそういう音楽だと思うから、とも。ようするに、アフリカ系移民のソウルあふれる音楽、ガッツのあるジャズがお好きなのだ。そしてもうひとつ「日本一オルガンの入ったジャズがかかる店かも」しれないということだ。ピアノに比べてオルガンは粘っこく弾きやすいような気がする。そしてその粘っこい呼吸がそもそもジャズだったのではないか。

ジャズが生まれたのはたぶん、オシャレな街角ではない。餃子の店や古い喫茶店、中華街やおいしいシュークリームの店なんかが混在するこの街で、僕はジャズという音楽のことがちょっとわかった気がしたのだ。