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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.72
ROYAL HORSE

ジャズクラブのサラブレッド
@大阪・兎我野町

さああて。
どう書いたものか迷うのである。
あまりにも名店、あまりにもよく知られている。そう、今回ご紹介するのは大阪のジャズクラブの大看板、ロイヤルホースなんである。
関西でジャズが好きって人でここを知らない人はいないだろう。それくらい歴史のある名店なのである。
僕自身も何度かお邪魔して、ここで楽しいライブを聴いている。取材でうかがうとなるとかえって妙な気分にもなるくらいだ。

今日もまた時間に磨かれ、落ち着いたたたずまいのドアがいつものように迎えてくれた。
広いのである。そしてゴージャズなのである。
かつてジャズが時代の最先端の音楽であり、超カッコいいものであり、ファッションや哲学をもリードしていたあの時代。そんな時代にこのお店をオープンしたのが、オーナーの關 基久さん。
お会いするのは今回が初めてなのだけど、ジャズの世界に触れているとあちこちからいつの間にか聞えてきて、なんとなく知り合いのような気になったりするのが關さんのお名前である。
いや、実に飄々として、さらにおしゃれでこだわりのない感じ。こんな感じこそが育ちの良さというか、僕なんかがどうしたって追いつけないところ。お聞きすると甲南大学のご出身とのこと、今さらながら膝を打つ思いである。

さて、その關さんがこのお店を開かれたのがなんともう35年前。「学生時代にハワイに行ったことがこの店のあれこれのヒントになりました」とのこと。ハワイなんて夢のまた夢、クイズの賞品か、某洋酒メーカーのウィスキーを飲むかしか渡航の可能性はなかった時代ですよねえ。その時代にですよ、こんな空間を作ろうと思い、さらにそれを実現したってのがすごいじゃありませんか。なぜと言うなかれ、その空間が今でもちゃんと生きているんですからね。お店の随所に飾られたジャズミュージシャンたちの写真がそれを裏付けているんです。
お話をうかがった時も、妙なこだわりとか思想とかを語る事なく、「ジャズとおいしい食事。そのふたつがあったらたくさんの人が楽しんでくれるんじゃないかなあ、そう思って…。なんとなく今までやってきてしまいましたねえ」とのお言葉、なんともカッコいいじゃありませんか。

本当にたくさんのミュージシャンがここで演奏し、またその音楽を愛する人々が集まってきた。それ自体が、とても豊かなことだって気がするんですよねえ。
今、僕たちはそんな風に音楽を楽しんでいるだろうか…?そんなギモンすら湧いてきてしまう。そして、そんな風に音楽を楽しめることが、人生を楽しんで生きることと通じてはいないか。
世の中がいつの間にか効率とか生産性のようなものばかりを大切に考えるようになり、逆に、そのことが豊かさを僕たちから奪ってはいないだろうか。
なーんてことを考えちゃったりする訳です、ここで音楽を聴いていると。

ライブは毎日、基本的には無休。
そんなところも音楽好きにはうれしいポイントですね。
店名をよく見ると、今でも「レストラン・バー」という文字が先に来ている。それも、關さんが「気軽においしいものが食べられるように」と考えたのがきっかけなんだそうだ。これもハワイの影響のようである。
そう、ジャズがオシャレで、楽しいものだった時代が確かにかつてあったのですね。もちろん今だってそうなんだけど、いつの間にか難しくとらえられるようになっちゃったのもまた事実。ロイヤルホースが僕たちに語りかけているのはつまり、「いや、別に難しいことはいいんじゃないかな?今晩、音楽と食事を楽しむことができるなら」ということだ。

印象的だったのは、スタッフのみなさんと關さんがとても仲良しなこと。それはお店を支えるスタッフをとても大切にしているということのように思えた。

どうかするとドクターになってたかも、という關さん。
ちょっとオシャレして、おいしい食事と音楽を楽しむ夜を持つこと。そしてその楽しみを共有できる人がいること。
それこそが人生の楽しみなんじゃないだろうか。
關さんの笑顔を見ていると、ついそんなことを考えてしまった。

運がよければ…、いろんなミュージシャンのエピソードを直接お聞きする事もできるかもしれない。磨き込まれたカウンターでグラスを傾けながら、ね。