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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.67
SOMEDAY

電気とジャズはオレの魂
@東京・新宿

ビッグバンド専門のインターネットラジオに、思わず仕事の手を止め、聴き入ることがある。
"Bobby Watson&Tailor Made with Tokyo Leaders Big Band"が流れた時もそうだった。今まで耳にした限り、この番組で日本人プレイヤーの演奏が聴けたのは、穐吉敏子ジャズオーケストラとこのバンドだけ。メンバーには、今や日本を代表するプレイヤーが名を連ねている。
このバンドをプロデュースし、CD制作をしたのが、今回ご紹介するジャズ・ライブハウス サムデイのマスター・森 茂信さんだと知ったのは随分後になってからのこと。サムデイ店内でのライブ録音・編集も自分でやっていた、と聞いた時にはさらに驚いた。
「電気とジャズはオレの魂」。笑いながらそう語る森さんとサムデイの歴史は波瀾万丈だ。
70年安保世代。大手電機メーカーに電気工学エンジニアとして勤務。やがてその腕を活かして会社を設立。社長を務める傍ら、友人の誘いで好きなジャズの店を始めたのは30歳の時。サムデイは今年31周年を迎えた。
その間、店を引っ越すこと5回。防音設備が機能していなかったり、店のビルが売却されたりとその都度予期せぬ出来事に遭遇。ここでまたビックリさせられるのは、移転するたびに配線や内装工事を森さんご自身の手で行っていることだ。
「最初に引っ越した店は、ガス管以外の工事は全て自分でやりました。旧店舗は移転するまでは通常通り営業していないと金銭的にやっていけない。明け方まで店で働き、昼間は移転先の店に木材などを運び込んで作業。2ヶ月半の間、寝るヒマもなく働いた。しんどかったなあ。」

手先が器用で凝り性。電気技術者時代は人がやる仕事の傍にいれば、見よう見まねですぐにできるようになったという。残業代の出ない仕事でも、技術者としてのプライドをかけていくらでもこなした。現在、店にあるスピーカーは全て森さんの手によるもの。また10年前から開発・製品化し、8号機となったマイクも好評。ミュージシャンの間ですでに何十台と売れているそうだ。

「金がなくて好きなことをやる、ていうのはゲームみたいなもの。まあリスキーな人生ゲームってとこかな」。
そんな森さんからみた今のジャズの現場はどのように映っているのだろうか。
「みんなホントによくがんばっている。ただ少し淋しいのは、ミュージシャン同士の交流の場が減っていること。かつては演奏が終わると夜中まで音楽のことや楽器のことで話し合っていた。今は演奏が終わるとすぐに帰ってしまうことが多い。意思の疎通を図り、交流することでみんなが活躍する場を広げたい。音楽家はいろいろな体験のなかで『目覚める』ことが成長へのきっかけになる。この場所を提供し、定例会のようなものができないかと考えています。これはハコの親父がやるべき義務。長い目で、音楽の発展に寄与していければ」と語る。

森さんはかつて某ジャズ誌で「ビッグバンド」という言葉を普及させることを宣言。「ビッグバンドに特別な思い入れがある訳ではないが、アンサンブルを軽視するヤツが多いから、ビッグバンド=16人で演奏するサウンド、という認識を定着させ、そこを強化するのが目的だった」という。また、他店と競合しないためにも「ここの店ならではのバンド」の必要性を感じ、結成されたのが前述の"Bobby Watson&Tailor Made with Tokyo Leaders Big Band"だった。そして今年3月、また新たなバンドを立ち上げた。その名も"SOMEDAY JAZZ BIGBAND"。
「ストレート・アヘッドな魅力を大事にしたい。しばらくのあいだ、コンマスにはアルト奏者の大山日出男君、司会はトランペット奏者の田中哲也君に務めてもらう予定です」。
この4月26日から8日間のサムデイ創立第31周年記念 BIG BAND FESTIVALを開催。"SOMEDAY JAZZ BIGBAND"はその初日を飾る予定。
森さんにとって重要な仕事は他にもある。
東日本大震災の支援活動だ。震災直後からライブを通して募金を募り、自分の車で福島原発30キロ圏内にも入って支援物資を届けていたことはサムデイに出入りする人の間ではよく知られている。現在では、使われなくなった楽器を被災地の学校へ送る活動に力を注いでいる。すでに管楽器80台ほどが集まり、村田弘樹さんをはじめ国立音楽院管楽器リペア科のみなさんの協力を得て修理され、南相馬市やいわき市の中学校・高校へ順次届けられている。まだまだ募集中だそうだ。
また店のHPでは、自ら東電へ電話して調べた数値をもとに、独自の試算による節電方法が熱く語られている。
電気のこととなると話は延々と続く。「震災による原発事故は戦後最大の危機。日本政府は誤った節電方法で、産業を停滞させてはならない。」と、森さんの関心は留まるところを知らない。
熱く、忙しく、その毎日はまさしくAll that Jazz!