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ジャズピープル

縁が縁を生み、ジャズへの道のりは続く

昨年、ピアニストの大石学さんとのデュオアルバム「Love You Madly」をリリースし、自身の活動の現状の集大成を形にしたジャズボーカリストの末元紀子さん。3年前から活動拠点を地元の岡山から関西に移されて、益々活躍の場を拡げている末元さんがジャズを歌うようになった経緯や歌に込める想いなどを今回インタビューさせていただきました。

インタビュー・文 小島良太(ジャズライター、ジャズフリーペーパーVOYAGE編集長)
インタビュー撮影 荒川翔太

person

末元紀子

岡山県美作市出身。 心地よい歌声とジャズスタンダードをはじめ、さまざまなレパートリーが好評。 幼少よりクラシックピアノ、学生時代にはサックス、また和太鼓など多様な楽器経験を通じて音楽に親しむ。 2008年ごろからジャズに出会い、歌いはじめるうちに、どっぶりと浸かる。 ジャズをピアニスト木畑晴哉氏に師事。 クラシックのボイストレーナーより発声を学ぶ。 さまざまなミュージシャンとの共演をかさね、神戸や大阪を中心に幅広くライブやイベントなどで演奏している。 好きな歌手は、カーメン・マクレエ、サラ・ヴォーン、シャーリー・ホーン、ニーナ・シモン他多数。


interview

幼少期から音楽に触れる

── 音楽にはいつ頃から接していらっしゃったのですか?

末元「もともと3歳からクラシックピアノを始めて、高校生まで練習を続けていました。中学校の時は吹奏楽部でバリトンサックスを吹いていた経験も。なぜバリトンかというと、たまたま余っていたのと、同級生の中では体が大きい方だったので。音は出せるでしょうけど、今はまともに吹けません(笑)。でもサックスの息の使い方は今につながっているかもしれませんね。小さい時から歌はすごく好きで。自分の記憶がない時から、ずっと歌っていたみたいです。ちょっと変わった子だったかな(笑)。とにかく歌はずっと好きでしたね。ロックバンドに入って歌っていた事もありました。ディープパープルなど、60~70年代のロック、あとオジー・オズボーンとか!バンドメンバーに言われるがまま歌っていました。ハードロックはもともと好きだったのですが、ハードロック以前のロックに出会ったのは、このバンド時代ですね。今でも大好きでよく聴いてます。うーん、あと、世にはびこるJ-POPとかも普通に聴いていましたけどね(笑)。 」

── プロフィールに“和太鼓”の経験とありますが、ボーカリスト、そしてジャズの方で和太鼓の経験されている方って珍しいですよね。

末元「ですよね(笑)。当時会社勤めをしていたのですが、地元有志の和太鼓グループがあって、その演奏を地元のお祭りで聴いて格好良いなぁと思って。10年くらい週1で練習に通っていましたね。ジャズを練習するようになって時間が取れなくなって、やめてしまったんですけど、リズム感は養えたと思いますね。正確なタイム感とか。この経験も糧にはなっていますね。」

ジャズとの出会い

── ジャズとの出会い

田舎に住んでいたので、ジャズに触れる機会が全然なくて(笑)。湯郷温泉にライブをしているカフェがあって、そこで「Indigo Jam Unit」のライブを聴いたのがジャズに本格的に触れるキッカケでした。皆さんサラ・ヴォーンを聴いて衝撃を受けて、というのを期待されていたかもしれないですが(笑)。それが28~29歳ぐらいの時だったんで、けっこうジャズの出会いは遅かったんですよね。あとジャズ好きの友達と、たまたま関西まで行ってライブを聴いたのがピアニストの岩佐康彦さんのライブで。ドラムはIndigo~の清水(勇博)さんでした。そこで、“すごいの聴いちゃったな”って。一気にドハマりしましたね。そこからジャズ一色になりました。一時期、他のジャンルは一切聴かなかったですね。 ジャズのサウンドに早く染まりたくて。ジャズの魅力は答えがない、ゴールが無いという所かな。一生をかけて追い求められるものというのが面白いなぁと思います。難しいですけどねぇ(笑)。

── どういったジャズシンガーを好んで聴かれましたか?

末元「ダイアナ・クラールから聴きだして、特に一時期、“鬼聴き”したのはカーメン(・マクレエ)ですね。シャーリー・ホーンも好きだなぁ。よりサウンドしたい、というのが目標なのでカーメンからの影響は大きいですね。男性ボーカルなら、ダントツでトニー・ベネットですね。ビル・エヴァンスとのデュオアルバムが特に大好きです。それまではエヴァンスが苦手だったんですけど、トニーとの共演盤を聴いてから、聴くようになりました。日本のシンガーなら与世山澄子さん。振りかぶらないでいきなりパンチがくる、でも時にかわいくなる、その自由奔放な魅力に惹かれました。大阪でのライブはもちろん、沖縄の与世山さんのお店(インタリュード)まで聴きに行きました。ジャズ以外ではニルヴァーナやイエモン(ザ・イエローモンキー)や椎名林檎さんを聴きますかね。最近、Apple Musicで聴きたい音源は即チェックしています(笑)。 」

── ジャズを歌いだした経緯を教えてください

なんとかジャズを演奏したい、という気持ちから、ピアノは少し弾けたので。まずは自ら売り込みに行って、地元の旅館でジャズの弾き語りを始めました。弾き語りの譜面を買ってきて、それを見ながら演奏していましたね。それから、Indigo Jam Unitのライブを聴きに行ったカフェでまたIndigoさんのライブがあって、お店の方のご厚意でシットインの機会をいただいて。とにかくジャズの世界に入りたい、と必死でしたね、あの時は。

ピアニスト木畑晴哉さんに師事

── 木畑晴哉さんに師事された経緯は?

末元「岡山のインターリュードというお店に木畑さんがライブに来られていて。演奏を聴いて、この人はすごい!と思って。ホームページを見たらボーカルレッスンをされているとの事だったので、これは行くしかない!と。岡山に住んでいた時に習っていて、車でレッスンに行っていました。最初は半年くらい毎月通っていたんですけど途中から、「毎月来なくていいよ。」と言われて。すぐ卒業させられましたね(笑)。その後は木畑さんとライブで共演させていただく機会をいただいて、ライブで気付いた事をアドバイスしていただくという形になりました。 」

── どういったレッスンを受けていたのですか?

末元「例えばカーメンの作品や曲を採譜したりして、それを元に演奏者としての視点での実践的な歌い方、サウンドに対するアプローチを教えていただきました。今それがとても身になっています。 」

── 3年前から拠点を関西に移されましたね。

末元「岡山での活動から、もっと演奏の機会を増やしたかったし、尊敬する方がたくさんいらっしゃるので3年前から関西に移住しました。今は神戸より大阪の仕事の方が多いかな。関西で初めて歌ったお店は、今は無き神戸元町の「JUST IN TIME」で行われた木畑さん主催のチャリティコンサートでした。本当に縁に恵まれていますよね。 」

── 歌っている時に意識している事は?

末元「サウンドしたい、まずはやっぱりそこですね。そして、お客様の心に響くように歌えるようになりたいですね。歌詞の意味を伝える事はもちろんですし、その場で作る音楽であるジャズのサウンドを作っていく事に重きを置きたいですね。誰とやっても一緒、じゃなくて、その時々の音に溶け込んで一つになっていきたいなぁ。 」

大石学さんとのアルバム制作


── 昨年アルバムをリリースされましたね。大石さんと作られた経緯と作品について教えてください

末元「大石さんが岡山の「インターリュード」というお店に遊びに来られた時に知り合って、その時に2曲ほどセッションして。その後、大石さんがインターリュードでライブをする時に歌わせてもらう機会をいただいて。その機会を作ってくれたインターリュードの丸岡さんには本当に色々な方に引き合わせていただきました。とても感謝しています。去年の8月に録音して、曲は大石さんと共演する時によくやっているレパートリーを中心に選びました。細かい事はあまりおっしゃらない方ですし、私がこんな事を言うのも恐れ多いのですが、大石さんは軸がぶれないんですよ。何に対しても動じない。音色のコントロールも巧みで、どこのピアノを弾いても“大石さんの音”になるんですよ。ミュージシャンとして、とても尊敬しています。アルバム制作においても、レコーディングスタジオやプレスの事など、色々と大石さんが紹介してくださいました。最初にアルバムのミックスを聴いた時にとても感動しましたね。制作スタッフの方がこういう風に自分の音を受け止めてくれたんだと。自分が思ったよりも綺麗に録ってくれて。エンジニアの方が良い所を伸ばしてくれた感覚ですね。未熟な部分も含めて、当時の自分を表現出来た作品だと思います。それに、これからもっと歌を頑張ろうとも思いましたね。アルバムはホームページやライブ会場での販売のみなのですが、あと数十枚、おかげさまで完売間近となりました。 」

── 今後の活動、またしてみたい事は?

末元「今、すごくありがたい環境で活動させていただいているので、それを継続して頑張る事ですね。関西にはたくさん素晴らしいミュージシャンの方がいらっしゃいますから、今後も関西を拠点に活動していきたいです。あと、ジャズの香りがプンプンするような歌手になりたいですね(笑)。さきほど言った、与世山澄子さんみたいなシンガーに憧れますね。またアルバムも出したいですね。今度はデュオではなくて、例えばピアノトリオと録音してみたいかな。今回のアルバムと違う編成で作ってみたいです。一緒にレコーディングしてほしい人は多すぎて悩みますが(笑)。 」

インタビューを終えて
ご自身の活動や歌う事について、ゆっくり噛み締めるように言葉を選んでお話してくださった末元さん。ジャズに対する飽くなき探究心がひしひしと伝わってきました。 そのジャズへの真剣な想いが共演者の方にも伝わって、支持を集めているのではないでしょうか。次回作は未定だそうですが今から楽しみです。音楽に対する真面目な姿勢と裏腹にツイッターでの独特な笑いのセンスとのギャップも要注目(笑)!

information

[ RECOMMEND MOVIE ]

末元紀子1stアルバム『Love You Madly』



[ Live Information ]

末元紀子ライブ
8月13日(月)
ラグタイム大阪
19:30〜3セット
drums石川潤二、guitar大野こうじ、bass宮野友巴、vocal末元紀子
チャージ2500円(テーブルチャージ別途)

8月23日(木)
ジャズオントップアクトⅢ
19:30〜2セット
piano大石学、vocal末元紀子
チャージ3000円



[ Release ]

LOVE YOU MADLY/末元紀子vocal、大石学piano
収録曲
1.Love you madly
2.Alice in Wonderland
3.Body and soul
4.Just friends
5.Sem voce
6.River
7.My favorite things