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ジャズピープル

表情豊かに描く、フルートの音色。

温かく表情豊かなフルートの音色と美しい姿で人々を魅了する、ジャズフルート奏者の酒井麻生代さん。今月7月18日にクラシック曲をジャズアレンジした最新アルバム「展覧会の絵」をリリースしたばかりです。関西がご出身の酒井さん、その音楽性の礎は滋賀・大阪・明石にありました。フルートを始めた頃からジャズへの転向、最新アルバムについてまで、酒井さんにお話をうかがいました。

person

酒井 麻生代
フルート奏者
11歳よりフルートを始め、山腰直弘氏、中務晴之氏に師事。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コース卒業。学生時代はクラシックを学び、全日本学生音楽コンクール、びわ湖国際フルートコンクールなど多くを受賞。独奏のほか、吹奏楽団やオーケストラに所属し、演奏活動を行う。2011年ボストンに短期留学。Fernando Brandao氏などにジャズフルートを師事。2012年にNHK「ジャズライブ神戸」に出演。2013年より拠点を東京に移し、岡淳氏、グスターボ・アナクレート氏に師事。2016年、初のリーダーアルバム「Silver Painting」でポニーキャニオンよりメジャーデビュー。(2018年、2ndアルバム「展覧会の絵」をリリース。)



interview

「やっぱりフルートの音色が好き」。クラシックからジャズへの転向。

── ジャズ専門のフルートの方って珍しいですよね。酒井さんはもともとはクラシックを?

酒井「そうです。もともとは大阪教育大学でクラシックを学んで、オーケストラに入ってという感じでした。でもジャズにも興味があって、卒業後にジャズピアノを習いに行ったんですよね。三原和子さんの教室に通ってたんです。ずっとクラシックピアノもやっていたので大丈夫かなと思ったんですけど、こんなに弾けないものだとは思わなくて(笑)。やっぱり私はフルート奏者だし、ジャズフルートでいこうと思ったんですよね。」

── 大学を卒業してから違うジャンル、しかもピアノを、というのはなかなか勇気がいりませんでしたか?

酒井「大学のときからキース・ジャレットとかビル・エヴァンスとかが好きだったんです。その時は、黒っぽいというよりはキレイめなものを好んで聴いてて。ジャズのハーモニーを理解するために、ピアノでコードをちゃんと勉強したいなと思ったんです。」

── なるほど。だからピアノだったんですね。サックスやトランペットに持ち替えようとは思いませんでした?

酒井「やっぱりフルートの音色が好きなんですよ。でも今でもトランペットやサックスに憧れますけどね。家ではトランペットの曲をよく聴いてます。やりたい気持ちもあるんですけどね。でもやっぱりフルートが好きです。」

── クラシックからジャズに転向した際には戸惑いはありませんでしたか?

酒井「最初は本当に戸惑いました。リズムも全然違うし、やっぱり譜面を見ないっていうのが信じられなくて。だから最初はずっとアドリブを書いて吹いてましたね。でも即興演奏にはずっと憧れていて。」

── なるほど。そういえば兵庫県明石市は酒井さんにとって第二の故郷とおっしゃっていましたが、縁がおありなんでしょうか。

酒井「幼少中までは滋賀で、高校のときに父の転勤で明石に移り住んだんですよ。大学は大阪でしたけど、卒業してからはまた実家に戻ってという感じだったので、明石は思い出深い街ですね。今はまた実家は滋賀に移ったんですけど。」

── ということは、関西でも音楽活動をされていたんでしょうか。

酒井「それがあんまりしてなくて。大阪では普通に会社員をやっていました。4年くらい勤めたあと、自宅でフルート教室とピアノ教室を開いていました。それをやめてから東京行こうかなと思って。ライブ活動はしていましたが、そこまでがっつりという感じではなかったので、関西には知り合いのミュージシャンが少ないんですよね。」

── じゃあ、「よし、東京で活動しよう!」という感じで上京を?

酒井「いえいえ。両親も昔東京に住んでたこともあって、『何をやるにも東京に行ったら面白いことがあるんじゃない?』という感じで。あと単純に、実家が明石から滋賀に移るときに両親に『麻生ちゃんの部屋ないよ』と言われて(笑)。じゃあ東京行ってくるね、という感じで(笑)。なもんで、東京に行っても音楽活動で食べていけるとは思ってはいなかったので、お昼はフルート教室でバイトをして、夜はジャズクラブでウエイトレスをしてという感じでしたね。」

「前作よりも意識の違った作品に」。最新アルバム「展覧会の絵」について。

── 現在の話になりますが、7月18日に2枚めのアルバム「展覧会の絵」がリリースされました。

酒井「2016年に1枚目のアルバムを出したので約2年ぶりですね。前回はポニーキャニオンからCDを作りましょうと言ってくださって、クラシック出身なのでそれを活かしたものを作りませんかということで、クラシックを題材にジャズアレンジしたものになりました。それが結構好評をいただいたので、今回の作品もクラシック曲の作品集になってます。前作より、よりジャジーな感じに仕上がっていると思います。」

── 選曲は酒井さんご自身ですか?

酒井「全部自分で決めたので、好きな曲ばっかりです(笑)。前回は初めてということもあり、プロデューサーの方をはじめ、周りの方に『こんなのどう?』と勧めていただいたきながら作ったんです。私もまさかメジャーデビューするとは思っていなかったので、あれよあれよというままに出来上がったという感じだったんですけど、今回は自分からやりたいことを結構提案させてもらいました。この曲はこういうアレンジのものにしたいとか、レコーディングのときにももっとこうしたいとか意見を言いながら。なので、だいぶ意識の違う感じのものができたと思います。」

── こだわりが詰まった1枚になったという感じですね。

酒井「そうですね。曲もそうですし、ジャケットからライナーノーツまでもやりたいことをやらせてもらったと思います。」

── クラシック曲のジャズアレンジは、クラシックファンからもジャズファンからも楽しめていいですね。

酒井「耳馴染みもいいし、クラシックを聴いてる人にも手に取っていただけるのがいいですよね。ジャズとクラシックの橋渡し的な感じで、幅広い方に聴いていただければと思います。実際、前作も地方ライブで『この曲が入ってるんやったら買うわ』と言ってくださる方も結構いらして。ジャズのスタンダードは知らなくても、クラシックの有名な曲は知っているという方はわりと多いんですよね。」

── ちなみにオリジナル曲は演られないんですか?

酒井「ライブではたまに。でも数はまだそんなにないので、徐々にもっと作っていけたらと思っています。ゆくゆくはオリジナル曲のアルバムも作れたらいいなと思います。」

── レコ発ツアーなども予定されていますか?

酒井「最初は渋谷で、10月の地方ツアーは1週間だけですが予定しています。関西だと10/17に大阪はロイヤルホース、あと10/18に京都のバハブラットで。あと10/14は地元の大津ジャズフェスティバルにも出演します。兵庫は、先日ライブをしたばかりですが、また明石のPOCHIに。」

「もっとステップアップを図りたい」。さらにパワーアップする、酒井麻生代。

── 酒井さんは普段どんな編成でライブをされることが多いんでしょう?

酒井「いやもう…毎日全然違いますね。ギターとデュオでやったり、カルテットでやったり。ボーカル・ピアノ・フルートとか。呼ばれたらどこでも行くって感じです(笑)。トランペットとサックスともやったりもしますし。」

── フルートが入ることで、音の幅がぐっと広がりますよね。

酒井「そうですね。フルートって結構ボサノヴァのイメージが強いみたいなんですけど、私は結構ハードバップのナンバーとかもやったりしているので驚かれますね。しかもフルートは持ち替えでやられる方が多いので、フルート専門でハードバップをやるってなると東京でも少なくて、それで珍しがられているところはあると思います。」

── フルート奏者同士で一緒に演奏することも?

酒井「東京だといろんな人がいるので、フルート4本とピアノトリオという編成でやったりしてます。面白いでしょう?そのうち二人は持ち替えなんですけど、私と太田朱美さんはフルート専門で。まあでもやっぱり専門職でジャズでというのはあまり多くないかもしれません。」

── 普段は東京を中心に活動されていると思いますが、明石のPOCHI以外で神戸で演奏されたことはありますか?

酒井「すっごい台風のときに、一度ソネにも出たことがあります。高橋リエさんというボーカルの方に呼んでいただいたんですけど、もう電車止まりまくってて、のきなみキャンセルみたいな台風で(笑)。私、雨女なんですけど、あれはすごく覚えてます(笑)。」

── それは確かに大変な思い出ですね(笑)。言われてみると、ジャズのミュージシャンの方は本当に小さいライブハウスから大きなホール、フェスまで幅広いところで演奏されますよね。

酒井「ねえ、ほんとに(笑)。地方よりも逆に東京がすごいんですよね。なにせ数が多いので、世界一狭いライブハウスなんかもあったり。すっごくきれいなところもあれば汚いところもあったり。本当に面白いです。」

── 移動も大変ですよね。特に管楽器の方は呼吸のコンディションが大切でしょうから、風邪とかも引けないですよね。

酒井「そうなんですよ。こまめに手洗いうがいをして、時々ヨガもやっています。呼吸法もですけど、集中力も高まります。地方だとホテルでは加湿に気を配ったりしてますね。」

── 最後になりますが、今やってみたいこととかありますか?

酒井「練習したいですね。」

── 練習、お好きですか?

酒井「いや、正直あまり好きではないです(笑)。でもこれまでがむしゃらにライブ活動をやったきたんですけど、ずっとレギュラーで出演していたお店でのライブを今年から一気に減らしたんです。一個一個のライブの内容を濃くしようと思って。もっとステップアップをしないといけない時期かなと思っています。」

── 次のステージを目指しているんですね。

酒井「そうなんです。東京のライブシーンで活動を始めて、3、4年目になるんですが、周りに恵まれていて、素晴らしい方たちと一緒にステージに立つことが多くて。そのたびに『こんな人たちとやって大丈夫なのかな』と不安になったり、毎日緊張もするし、録音を聴いて反省することもまだまだ多くて。でもすごくありがたいことなので、自分にもっと自信を持って臨みたいなという意味でも、練習をもっとしたいな!というのが今一番の心境です。」

── 常に高みを目指されていて素敵です。今日はどうもありがとうございました!

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[ Live Information ]

酒井麻生代「展覧会の絵」発売記念LIVE

8/29(水) 渋谷 JZ Brat
酒井麻生代(fl)納谷嘉彦(p)俵山昌之(b)大坂昌彦(d)小畑和彦(g)
開場 17:30 開演 19:30〜2ステージ (休憩あり 22:00終演)
前売 ¥4500 当日 ¥5000
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2018/08/#20180829
10/13(土) 豊橋 BUZZLE番地
10/14(日) 滋賀 大津ジャズフェスティバル
10/15(月) 岡山 live cafe tonica
10/16(火) 明石 POCHI
10/17(水) 大阪 ROYAL HORSE
10/18(木) 京都 Baja Bluet
10/19(金) 名古屋 Jazz inn Lovely
ツアーメンバー:酒井麻生代(fl)納谷嘉彦(p)俵山昌之(b)大坂昌彦(d)
お問い合わせ:http://makiyo327.wixsite.com/flute/contact



[ Release ]

酒井麻生代/展覧会の絵
麗しのフルーティスト、 好評の第1弾に続きクラシックのジャズアレンジアルバム第2弾を発表。温かく豊かな音色で、人気のクラシック曲をお洒落な心地良いジャズ・アレンジで奏でる。クラシックファンとジャズファンが楽しめるアルバム! (C)RS

1. 私のお父様
2. 展覧会の絵
3. 白鳥の湖
4. 小フーガ ト短調
5. G線上のアリア
6. アラゴネーズ「カルメン」組曲より
7. ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
8. タイスの瞑想曲
9. ファランドール「アルルの女」第2組曲より
10. 別れのワルツ

レーベル:ポニーキャニオン
品番:PCCY.30249
価格 ¥2,778(本体)+税

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