スタジオfの録音レポート

YASUSHI GONJO TRIO

権上康志トリオ

no.06

太く深く美しい音色が魅力とライブでも定評の権上康志トリオ。

今回は関西若手ジャズミュージシャンのなかでも今最も勢いのあるベーシスト、権上康志さん率いる権上康志トリオのレコーディング風景をお届けします。リーダーの権上さんはもちろん、ピアノの加納新吾さん、ドラムの中野圭人さんともに関西を拠点に活動の幅を広げており、ライブではすでに定評のあるトリオとして注目を集めています。
今回録音されたのは今年8月10日に発売されたばかりの1stアルバム「Tomorrow is comin’」。アルバム作りはバンド結成当初から企画されていたものだそうで、「アルバムを作ることによって、レコーディングに向けて音楽的にブラッシュアップされることとCD発売に伴ってツアーができるという目的がありました。アルバム制作を通じてさらに音楽的な成長ができると考えたんです。つまり、アルバム制作は目標ではなくて、さらなる成長への出発。結成から半年、ライブ活動を重ねてバンドのサウンドがまとまってきた手応えを感じて今回の制作に踏み切りました」と権上さん。メンバー全員が「一人でも多く聴いて欲しい」という自信作、いったいどのように作り上げていったのでしょうか。

信頼のおけるメンバー同士、集中力を高めて1日で録りきる。

「今まではスタジオに入ってから構成を決めたりして時間を消費してしまい、結果的に2日間かかっていたのではないか?ということから、今回はあえて1日で録ろうと決めてました」という権上さんの決断によって、今回のレコーディングはフルアルバムをなんとたった1日で録りきりました。
そのために事前にミーティングとリハーサルを重ねて構成を練り、当日は曲構成の話は一切なくメンバーは演奏に集中。「事前に数回行ったリハーサルの後に、みんなでライブを観に行ったり、家で鍋パーティーをしたり、メンバー同士で交流を深めることにもなったので良かったです」という権上さんのお話通り、レコーディング中も呼吸がぴったり。録音中はリーダーである権上さんが常にメンバーの様子に気を配り、「録音の時間にも制限があり録りきれるか不安でした。苦労はしましたが何とか終了してよかったです。事前の準備はとても大切だなと感じました」と演奏後にお話いただいた中野さんの言葉にもあるように、実にテンポよく進められました。
また、ミックス作業においては、エンジニアの長島さんとともに「生っぽい音色とは?」「生っぽい響きとは?」「最後の一音は必要か?」「フェードアウトはどのように…」などの細かいこだわりを大事にしながら音を仕上げていきました。

ミックス終了後、メンバーの皆さんに
レコーディングの感想を聞いてみました。

権上康志さん(ベース、リーダー)
いろいろ大変でしたが、結果としてメンバー全員素晴らしいプレイをしてくれました。みんなの協力に感謝しています。ちなみに録音日は2011年の3月3日、これは偶然にも僕が尊敬するコルトレーンカルテットのベーシスト、ジミー・ギャリソンの誕生日でした。GINGERBREAD BOYSの1stアルバムに、ギャリソンに捧げた「Point Of No Return」という曲が入ってます。
エンジニアの長島さんとは何度も仕事をして信頼していますし、僕の好みの音もわかってくれているので、何の心配もなく作業を進めることができました。いつもとにかく楽器の生の音、木の音を収めたいと思っているのですが、今回もアコースティックな温かみのある、尚且つクリアな音に仕上がったと思います。

加納新吾さん(ピアノ)
権上さんのリーダーアルバムに参加するのは初めてで、色々不安や期待がありましたが、権上さんのバイタリティ溢れるプレイや人柄にとても助けられ、全力で制作することができました。権上さんの作曲、編曲したどのナンバーも個性的で、とても興味深い作品です。アルバム全体を通して、聴き心地の良いジャジーなサウンドに仕上がっているので是非皆さんに聴いて欲しい1枚です。

中野圭人さん(ドラム)
CD全部がトリオだけというレコーディングは初めてだったので、とても緊張しました。正直「Wool of inside」は何度も録り直したんですが、最後まで納得行きませんでした。でもそれが今の自分の実力だと思い、受け入れることにしました。だから、この作品が現在の自分です。ミックス作業では「ここまで変わるのか!」と驚きでしたね。細かい注文まで聴いてくださって感謝しています。

長島 直乗さん(レコーディングエンジニア)

ベースの権上さんのリーダーアルバムとしては、GINGERBREAD BOYSに続き、2作目ということになります。ですので、GINGERBREAD BOYSとはメンバーも違いますし、「少し作品のカラーを変えたいね」ということを権上さんと打ち合わせのときに話しました。「温かみのあるサウンドを」ということで、マスタリングを今までよりもファットで厚みのある音になるようにしてみました。ミックスに関してもベースがしっかりと出てきて、どっしりと重みのあるサウンドになっていると思います。ピアノの加納さんの繊細なサウンドも聴いていただきたいですね。

「Open E Music」レーベル第一弾、権上康志トリオ1stアルバム。

権上さんのお話にあったように、録音日はジミー・ギャリソンの誕生日、2011年3月3日でした。このときに考えられていたアルバムタイトル、曲順は現在発売されているアルバムとは違うものでした。これは録音の一週間後に起こった東日本大震災を受けて、急遽現在のアルバムタイトル、曲順に変更したからだそうです。「アルバムタイトル曲の『Tomorrow is comin’』は元々は自分自身を励ますために書いた曲でしたが、この曲がいつか人を励ますことができる日が来ればと思います」と権上さん。
緻密な計画とこだわりをベースにしながら、スタジオの音響的な環境や製作時の社会環境に呼応して、丁寧に仕上げられた今回のアルバム。権上さんが「OPEN Eとはコントラバスの最低音。僕にとってこの音がもっとも太くて美しい一番好きな音」ということから名付けられた、自身のレーベル「OPEN E」の名にふさわしい、太く深く美しい第一弾アルバムとなったのではないでしょうか。

権上康志トリオ

関西を拠点に全国的に活躍するベーシスト権上康志の呼びかけにより2010年夏結成。メンバー全員関西を拠点に活動する20代の若手ミュージシャンによるトリオで、オリジナルを中心にスタンダードも独自の解釈・アレンジで演奏し、トリオならではのフレキシブルでスポンティニアスなサウンドを追求。2011年8月10日、権上が自主レーベル「OPEN "E" MUSIC」を立ち上げ、1stアルバム「Tomorrow is comin'」を全国発売。

Tomorrow is comin’

権上康志トリオの1stアルバムであり、また権上自身が立ちあげたレーベル「OPEN E」の第一弾アルバム。権上、加納のオリジナル曲をメインにガーシュウィンのスタンダードナンバー1曲を含めた全8曲入り。トリオならではのフレキシブルな表現の詰まった快作だ。2011年8月10日に全国発売。
[OEM-0001(JZ110708-57)/2011年8月10日より全国発売]

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権上康志トリオ参加
東日本大震災復興支援アルバム「道」

関西の若手ミュージシャンによる、ジャズやポップスなどオリジナル楽曲を全9曲収録。収益は全額、被災地に寄付されます。
権上康志トリオ:3曲目「Tomorrow Is Comin'」5曲目「The Sun Rise Again」。ともにスタジオf(フォルテ)にて録音。
公式サイトにて販売/価格:1,200円)