スタジオfの録音レポート

Yusuke Imanishi Sextet

今西佑介セクステット

no.04

トロンボーン、トランペット、サックスが主役の今西佑介セクステット。

今回の録音レポートは今年3月に発売されたばかりの今西佑介セクステット「CRISP」。現在関西でもっとも注目されている若手トロンボーン奏者である今西さんを筆頭に、トランペットの横尾さん、テナーサックスのレイモンド・マクモーリンさんの三管を中心にした6人組のバンドです。リズム隊もベースの光岡さん、ピアノの加納さん、ドラムの弦牧さんと関西を中心に精力的に活動されている若手プレイヤーばかり。
「アメリカから帰国して以来、ずっと三管のバンドでその時の自分の音楽を作品として残したかったのですが、まずバンドがありませんでした。その後このメンバーでなら!と思えるメンバーと出会え、ライブやリハーサルを行って徐々にバンドサウンドを作りました。今回は、僕の作曲、アレンジ、バンドとしてのサウンド、どれをとっても納得のいくアルバムに仕上がり、今までの僕の音楽、そしてこのバンドの集大成となる作品が作ることができたと思ってます。これを僕たちの新たなスタートとして、より成長、進化して、自分のその時の音楽、バンドサウンドを追求していきたいと思っています。全体的に明るく、聞きやすいアルバムなので、ジャズファンのみならず、多くの方に楽しんでもらいたいと思います」という今西さん渾身の一枚、いったいどんな過程を経て生み出されたものなのでしょうか。

遮音性の問題も工夫や配置でカバー、プロが作り出す音。

最初はトロンボーン、サックス、トランペットと生音が大きな管楽器が3本もあるため、遮音性能があまり高くないスタジオfではカブリが大きすぎるのではないか、という心配がありました。しかしそこはやはりプロ、エンジニアの長島さんは今西さんの持つイメージを聞いて、音の最終形をイメージしながらマイク選択や演奏者の配置を計画していました。そして本番録音にいたるまでの録音リハーサルの時間を利用して、管楽器の音漏れを吸音材やマイクの配置を工夫しながら追い込みます。結果、当初心配していたカブリもなく、順調にレコーディングは進んでいきました。
「レイの口癖のようなものに『ハンチ』というのがあるんですが、メンバー皆でことあるごとに『ハンチ』と言いながら、和やかにリラックスした雰囲気でレコーディングできましたね。あと、レイのテナーサックスのオクターブキーがレコーディング前日に壊れてしまったのですが、レコーディング初日はそのまま臨みました。またサックスのリードも良いのがなかったらしく、レイは少し吹きにくそうでしたが、なんとか無事レコーディングをやり遂げました。今回、何度も録り直した曲があるのですが、結局訳あって収録しませんでした。まだいつになるかは未定ですが、次の作品には収録したいと思います」と、レコーディング後に今西さんが話してくれました。

ミックス、マスタリング終了後に今西さんに感想を聞いてみました。

今西佑介さん
ミックスでだいぶ印象が変わりましたね。Criss Cross Recordsの低音がしっかり鳴っていて分厚いサウンドとSharp Nine Recordsの現代的で都会的なハーモニーと奥行き感が好きで、できる限りその二つのレーベルのサウンドをブレンドしたミックスをして欲しいとエンジニアの長島さんにお願いしました。何をどうしたらそういったサウンドになるのか、僕にはミックスの知識がなかったのですが、長島さんがコミュニケーションを取りながら少しずつ僕のイメージしていた音に仕上げていってくださいました。結果、とても現代的で分厚く、低音までしっかり鳴っている録音になったと感じました。マスタリングは長島さんにすべておまかせだったんですが、マスタリングにより角が丸くなり、全体に滑らかに聞きやすい音になったと感じました。

長島 直乗さん(レコーディングエンジニア)

ジャズでは珍しい3管編成!!(Tp,Tb,Sax)ということで、管楽器は、3人横並びでの録音となりました。何よりも、出来るだけ普段に近い状況で演奏のしやすさを大切にしたかったので、管楽器の3人にはリハーサルやライブの時のような立ち位置で演奏をお願いしました。
管楽器の3人の中で、それぞれのマイクに相手の音が被ったりで(TbのマイクにSaxの音が・・)位相の問題には悩まされながらのミックスでしたが、それもミックスの調整で整い、すばらしい作品に仕上がったと思います。テーマでの3管の時の迫力、ソロでのTbの温かい音色が心地よい感じに仕上がっているかと思います。

今西佑介の魅力がたっぷり詰まったデビューアルバム「CRISP」。

今西さん個人としても、今西佑介セクステットとしてもデビュー作となる今回のアルバム「CRISP」。全9曲中5曲が今西さんの作曲、他2曲も新たに今西さんのアレンジによるものとなっており、まさに2011年今現在の彼自身が詰まった1枚になったのではないかと思います。 2008年にアメリカから帰国して以来ずっと持っていたというイメージがカタチになった今回の作品、楽曲の端々にアメリカっぽい雰囲気も感じることができるのではないでしょうか。

Album Information

CRISP

関西若手ミュージシャンが集まった三管編成バンド、今西佑介セクステットによるファーストアルバム。自身が「今までの活動の集大成」と語る渾身の一枚。2011年3月23日JAZZ LAB. RECORDSよりリリース。プレイヤーとしてはもとより、作編曲の才能も光る今西のオリジナル5曲を含む全9曲。
[JAZZ LAB. RECORDS(JLR1103)/3月23日より発売。]

Member Information

今西 佑介さん (トロンボーン)
私立甲南中高在学時に所属したブラスアンサンブル部がきっかけで、トロンボーンを始める。同中高に在学中、宗清洋氏に師事。2004年8月に渡米し、2005年Fall Semesterからコネチカット州University of Hartfordの奨学金、年間$18,000を取得し入学。世界的に有名なジャズトロンボーン奏者Steve Davis氏に師事し、奏方、音楽理論等を学ぶ。トロンボーンの講師を経験。現在、神戸を中心に積極的にライブやレッスンを行っている。2011年3月23日にデビューCD「CRISP」をJAZZ LAB. RECORDより全国発売。
http://jazzbone.exblog.jp/

横尾 昌二郎さん (トランペット)
1984年生まれ。兵庫県西宮市在住。アロージャズオーケストラ3rd trumpetの佐藤修氏に師事。 大阪・谷町9丁目の老舗ジャズクラブ『SUB』を中心に、大阪・兵庫県のライブハウスなどでライブ活動中。G.S.B.、ジンジャーブレッドボーイズなど数多くのバンドに参加。2009年、第3回神戸ネクストジャズコンペティションで審査員特別賞を受賞。
http://yokoobb.blog88.fc2.com/

Raymond McMorrinさん (テナーサックス)
1979年3月13日生まれ。米国コネチカット州出身。ペンシルバニア州フィラデルフィア芸術大学ジャズ科に入学、サックス奏者ロン・カーバーに師事。コネチカット州ハートフォード大学ジャズ専攻科にてジャッキー・マクリーンと出会い、師弟関係となる。2005年に来日し、現在は東京を拠点に活動中。
http://www.myspace.com/raymondmcmorrin

加納 新吾さん (ピアノ)
1986年11月20日生まれ。大阪出身。6歳の頃よりクラシックピアノを始める。大阪芸術大学音楽学科ポピュラー音楽コースに入学とともにジャズに傾倒し、関西を代表するジャズピアニスト近秀樹氏に師事。現在、関西を中心に精力的に活動中。
http://kanoupxmx.exblog.jp/

光岡 尚紀さん (ベース)
1981年10月生まれ。14才の時に兄の影響によりエレキベースを始める。2003年より本格的に音楽の勉強を始め、ウッドベースを始める。藤岡靖博、魚谷のぶまさ、両氏に師事。現在は関西を中心に、ジャズをはじめ、ポップスなどさまざまなジャンルの演奏に参加するなどして活動中。
http://yaplog.jp/mittsunn/

弦牧 潔さん (ドラム)
1981年生まれ。大阪府出身。関西大学在学中にジャズと出会う。ドラムの基礎を竹田達彦氏に師事。西山満氏のバンドで、国内外の素晴らしいミュージシャンと共演を重ねる。G.S.B.、モヒカントロプス、宮哲之トリオ、大塚善章 trio le frais、須藤雅彦クインテッドなど、数々のバンドに参加し、関西を中心に精力的に活動中。
http://tsurumakkinf.blog98.fc2.com/

ジャズやねん関西 http://www.jazzyanen.com/