featuring Kobe Jazz People

ジャズという多面体を生きる「怪人20面相」。

ギタリストとして高い評価を得ながらも、ある時はジュエリーデザイナー、ある時はジュエリー専門店の経営者、またある時はバーのオーナー。しかしてその実体は…と、つい思ってしまうほど川崎さんの人生は実に多岐に渡っています。まるでダイヤモンドのような、多面体の生きかたの謎(?)に迫ります。

person

川崎達彦さん[ギタリスト]

大阪生まれ。小学生時代からギターを始め、大学在学中からジャズの世界に進む。その頃からライブハウスで活動、精力的に演奏活動を行っている。
同時にジュエリーデザイナーであり、「日本ジュエリー協会」のデザインアワードで5回の受賞歴を持つ。現在も全国にジュエリー専門店を経営。さらに現在、北野坂にあるライブジャズバー、「Basin Street」のオーナーでもある。
公式ウェブサイト

interview

始まりはやはり

「小学校のときに出会ったベンチャーズですね。ちょうど加山雄三とかが流行ってた頃ですよ。それからビートルズ、時代的にはグループサウンズでしたからね、その後はヤードバーズ、クリーム、今でもクィーンなんか好きですよ。ロックも好きなんですが、大学の時に、ケニー・バレルの音楽に出会ってしまいました。ジャズの世界に来てしまったのはそれ以来。そしてずっとそのまま(笑)。彼の音が好きで好きで、いまだに「一生の師匠」と思っています」

——たしかに、にこやかで紳士的、でも決して浮つかない川崎さんの姿勢は、ケニー・バレルの音と一脈通じているように思えます。

「でも一年ほど前に病気をしまして…。右半身不随になってしまいました。必死にリハビリをして、ようやくまたギターを弾けるようになりました。いまでもリハビリ中で、まだ昔のようには弾けないんですが」

——ライブ演奏を聴かせていただくかぎり、そんな風には思えないのですが、やはりプレイヤーとしては「まだまだ」ということでしょうか…。

理数に語学に芸術に…

「高校は理数系、でも大学は外国語大学。その間も、ずっと絵は描いてまして。そんなことが以後の仕事や音楽に通じてるんでしょうね」

——ええっと、ぜんぜんバラバラに思えるんですが…。

「理数系の考え方と絵が描けるというところがジュエリーデザインにつながっていると思いますし、外国語はジャズの歌詞の理解や発音に通じてるんでしょうねえ。僕自身もそうですが、ボーカリストの発音が通じにくいものだとやはり気になります。『それだと外国人のお客様にはわからないよ』なんて言っちゃうこともあります。ミュージシャンに対しては辛口なんです(笑)。どんなに技術が優れていても、『ミュージシャンでござい』という態度ではお客様には聴いていただけない。それではいけないと思うんです。ジャズの街・神戸から発信しているという意味でも、ジャズをよりたくさんの方に楽しんでいただくためにも、そのあたりのことにはついきびしくなってしまうんですね」

人生を貫く基調

「何ごともマジメに、本気で取り組む。それが大切なことだと思っています。もしいいかげんになってしまうと、絶対に人を納得させることはできない。ジャズに限りません、経営も含め、どんなジャンルでもそうだと思います。ですからつい辛口になることも多いんですが(笑)、技術だけではけっして人を喜ばせることはできないと思っています」

——お客様に対する川崎さんの姿勢を見てもそのポリシーを感じました。音楽にも人にもマジメに、本気で向かい合う。もちろんにこやかに、紳士的に。これこそが川崎さんの音楽と生き方を貫くキー(基調)なのでしょうね。
貴重なお話、ありがとうございました。さらなるご活躍を楽しみにしております。

ライブジャズバー「Basin Street」の
「ジャズ探訪記」はこちらでご覧ください。