MAKOTO KURIYA / Jazz Piano Player, Composer
My music is Your music.
アメリカで10年間過ごし、最近はジャズに限らずJ-POPやハウスミュージック、映画、アニメ音楽と幅広い活動を続けるジャズピアニスト、クリヤ・マコトさん。今月20日に行われる神戸新聞松方ホールでのコンサートでは、ベーシスト早川哲也さん、ドラマー大坂昌彦さんと結成したクリヤ・マコト・トリオにジャズボーカリストのケイコ・リーさんを迎えたスペシャルプログラム。世界で活躍する日本人ジャズプレーヤーが集まった注目のコンサートです。 神戸出身のクリヤさん、自身のグループで本格的な神戸公演は、なんと今回が初めてになるのだそう。神戸の街について、今回のコンサートについて、そしてご自身の活動について、クリヤ・マコトさんにお話を伺いました。
person

ジャズピアニスト・作曲家
クリヤマコトさん
10年にわたって米国で活動し、多くのジャズの巨匠と共演歴を持つ。近年は毎年欧州公演を行うなど、世界を股にかけて活躍中。
ソウルフルなプレイと音色の透明感が魅力で、映画音楽や、平井堅、渡辺美里他多くのアーティストのプロデュースも手掛ける。
クリヤ・マコトオフィシャル WebSite
MAKOTO KURIYA  LIVE SCHEDULE
JAZZ ON CINEMA クリヤ・マコト・トリオ meets ケイコ・リー
◎日程/2008年9月20日(土) 
◎出演/クリヤ・マコト・トリオ:(クリヤ・マコト(p)、早川哲也(Bs)、大坂昌彦(Dm))
    スペシャルゲスト:ケイコ・リー(Vo)
◎会場/神戸新聞松方ホール ◎時間/開場16:00 開演17:00
◎チャージ/前売¥5,000 当日¥5,500 友の会¥4,500(前売のみ)
http://www.kobe-np.co.jp/matsukata/schedule/2008/0920.html
interview
「生まれた街だからやっぱり特別」 父親が愛した神戸での公演。
10年にわたってアメリカで活動、そして近年ではヨーロッパと日本を往復しながら活動を続けるクリヤさん。実はご出身は神戸、北野町なのだとか。10歳まで神戸の街で過ごし、その後10年間を関東で、そしてアメリカに渡ったクリヤさんにとって神戸とはどんな街なのでしょうか。今回、初めての本格的神戸公演ということで、街の印象、今回のコンサートについて聞いてみました。
「生まれ育った街なのに、今まで一度もちゃんとしたコンサートをしたことがなかったので、今回は非常に楽しみです。僕の父親が神戸でセミプロみたいなミュージシャンをやっていたんですよ。その父親がすごく神戸を気に入っていたんですね。こないだ亡くなったんですけど、死ぬまで本籍を変えませんでした。僕はパスポートを取るのに面倒なので、すぐに変えちゃいましたけどね(笑)。
それで、今年の初めにこのトリオで小さいライブハウスを回るという小規模のツアーを行ったんですが、たまたま僕らが神戸に足を入れたとき、もうその瞬間っていうときに父親が亡くなりましてね。だから今年はいろんな意味で「神戸でやれ!」と言われているような気がして、やっぱり神戸の街というのは特別なものだなと感じています。
今回やらせていただく松方ホールも、先日見に行かせていただいたんですけど、素敵なホールですよね。今回のトリオは、早川さんは日本でも数少ないガットベースなので、この音は他のベースでは鳴らせない音ですし、大坂くんも皆さんご存知のとおりですし、そういう僕らの出す肉声というか、PAを通さないナマの音色っていうのをせっかくだから皆さんに肌で感じていただきたいですね。それが今回の一番やりたいことですね。同じ空間にいて、同じ振動、空気を感じながら一緒に音楽を作っていきたい。「My music is Your music」というこのトリオのコンセプトもそこからきています。
毎回のコンサートをものすごく楽しみにしてくれているお客さんがいて、すごく盛り上がるんですけど、そういうのってオフステージにも続いていくんですよね。見て楽しんでっていうのが次のコンサートまで続くんですよ。お客さんも「今日元気をもらったから、明日から仕事頑張ろう」とか「なんだかモヤモヤしていたけど、今日のステージを見てすっきりしました」とか、僕らの活動がオーディエンスの生活の支えになってることもあるんだなあと。もちろん僕らにとっても同じで、そういうお客さんがいるから頑張ろうと思えるわけです。お互い他者がいて、支えあってるっていうのは本当に素晴らしいことですよね」
「生で聴いて欲しいバンドです」 クリヤ・マコト・トリオについて。
作曲、編曲も手掛け、プロデューサーとしても忙しい日々を送るクリヤさんが改めて「ジャズピアニストとしてやりたい」と思って結成したのが、このクリヤ・マコト・トリオ。クリヤさんが最も信頼するベーシスト早川哲也さん、ドラマー大坂昌彦さんで結成、2006年11月にフルアルバム「My music is Your music」をリリースしています。
「僕がやってるほかの仕事?映画音楽の監督など、いろいろやってるんですけど、それよりもまずこっちを優先させてやってるというくらい素晴らしいバンドです。早川さんと大坂くん、まず彼らに出会わなければ僕はこういうバンドを作らなかったかもしれない。
だから基本的にゲストはNGなんですよ。このバンドは3人で音が完結してしまってるので、他の楽器を入れても邪魔なんです。本音を言うとPAもいらないぐらい、そう、本当に「生で聴いて!」っていう。「聴けば分かる!」って今こそ言いたいぐらいですね(笑)。「この人とやってくれ」というオファーはいただいているんですが、全部お断りしている状態です。だから、今回のケイコ・リーに関しては例外だと思ってもらったほうがいいですね。15年前には、まだ僕はこのバンドを組んではいなかったけれど、その頃にはやるべきではなくて。お互いにキャリアを積んできた今だからこそやるべきなんじゃないかと思います。彼女とは一昨年、このトリオのレコ発コンサートで一度一緒に演奏しましたけど、ケイコさんも素晴らしいボーカルで。このトリオに、ケイコ・リーなら合うんじゃないかと思ったのが例外の理由です。
このトリオでのコンサートは数を決めてやっているわけでもないので、僕たちにとっても一つ一つがスペシャルなコンサートです。今回はライブハウスと違って、いろんな方が来てくださるので間口を広げたいというか、皆さんに楽しんでいただきたいので、「映画音楽」というテーマも設けています。分かりやすさっていうのは、なにも「知ってる曲だから分かりやすい」っていうだけじゃなくて、分かりやすい音、分かりやすい演奏があると思うんです。一般のお客さんがいらっしゃるコンサートだから、分かりやすさの種類を増やしたいというのもありますね」
「ボーダレスにジャズをやりたい」 ジャンルフリーの音楽活動。
ジャズピアニストとしてはもちろんのこと、映画やアニメ音楽の監督、J-POPへの楽曲提供、R&Bやヒップホップ、ハウスまで、クリヤさんの活動はプロフィールを見るとその多様さに驚きます。「ジャズピアニストであることを大切にしながら、プロデュースも広げていきたい」とクリヤさんは言います。

「お客さんとの距離を近くするというのは大切なことで、今回一緒にやるケイコさんはそれを実践できる人ですね。それってなかなか最近の若い人にはできなかったりします。それぞれのアーティストがインストを、自分の中だけで一生懸命演奏している。でも、どれだけ上手でもお客さんと距離があったら意味がないというか、僕には納得できない。それを変えていこうと思って、僕がジャズをボーダレスにやろうとしているのはそういう理由です。真面目に演奏するだけじゃ音楽は解決しない、だからといってお客さんにサービスするだけじゃダメ。そのバランスを考えて、エンターテイメントとしてどうやってやっていこうかというのが命題です。
僕は僕なりにアメリカでいろんなものをずっと見てきたし、僕なりの答えもあって。それがとにかく楽しんでもらうという部分で、それがオンステージなこともあるし、編曲として出したり、作曲、それも映画音楽であったりJ-POPであったりというのはさまざまです。平井堅くんにジャズを歌ってもらうと、彼らにもジャズのインパクトを学習してもらえるし、彼は元々ジャズを歌ってみたかったというし。それと同時にジャズの人たちにもJ-POPの人がこんなふうに歌うことができるんだよということも知ってもらえるし、それはジャズに対する恩返しということにもなります。そういう交流が生まれるのがいいじゃないですか。
だから一つ矛先を変えて、コラボって言うと簡単ですけど、いろんな人と一緒にやるとそこに交流が生まれて、新しいものが生まれるんですよね。考え方を一つにしてやっていくと同じところを掘ってるだけになってしまうので、そこを僕は変えていきたいと思うんですね。


最近は本当にいろんなことをやっていて、プロデューサー的な面が大きくなってますが、やっぱり僕はジャズピアニストなんです。
ヨーロッパ公演をしているときに「あなたのアイデンティティとは」と突きつけられることが多くて、自分のルーツを考えてみようと思ったんです。日本人が日本の音楽を持っていくならいいんだけど、日本人がヨーロッパにアメリカの音楽を持っていったら「あなたはここで何がしたいんだ」となるわけですよ。僕は悪く言うと「何でも屋」ですが、実際のところ何者なのかと考えてみたんですね。
たとえば「宇宙戦艦ヤマト」の宮川泰先生とは親しくさせていただいていたんですが、あの方はどんな仕事をしていてもやっぱりバンドマンだったんです。ピーナッツをやろうがヤマトを書こうがジャズのバンドマン。そのことが僕は宮川先生に対して、素晴らしいな、誇りだなと思うんです。やっぱりそうでなくちゃいかんよな、と。そういうことをヨーロッパツアーのときに、誰というわけでなくヨーロッパ自身に教えてもらいました。
音楽業界には素晴らしいプロデューサーだけど楽器はやらない、編曲はやらない、という人もいます。いろいろいるけど、僕はやっぱりバンドマン出で、最後までバンドマンでいたいと思います。だからどれだけ大きな仕事をしていても、小さなライブハウスで演奏するというのはやめたくないなと。それが僕のすべての源ですよ」

特集「神戸ジャズ文化を彩る人々の魅力」 KOBE Jazz People