ジャズ探訪記
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The Live House CHICKEN GEORGE(チキンジョージ)

不死鳥のニワトリ@神戸・下山手通

さてさて、ちょっと久しぶりの神戸ジャズ探訪。関西ミュージックシーンには欠かせない、そして誰もが知っている「チキンジョージ」である。もうあまりにも有名すぎて、歴史ありすぎて、あらためての説明なんか何も要らないライブスポット。ってことでみなさん、サヨナラサヨナラ、サヨナラ、と終わるわけにもいかないのがツラいところだ、いくら淀川長治センセが神戸のご出身だったとはいっても。

まあね、三宮を山手に少し上って、生田神社を右手に見ながらコンクリート打ちっ放しの階段を降りたらすべてがわかるわけですよ、チキンジョージについては。
タワー・レコードとのコラボ・ポスター、一面に貼られたたくさんのフライヤー、そしてディスプレイされたこれまたたくさんのLPジャケット。サイン入りのものも少なくない。
それらが語りかけてくるのは、ミュージシャンがチキンジョージを愛しているし、ずっと愛してきたということなわけで。

かつて、この神戸の街も、誰もが想像すらしなかった震災で壊滅的な被害を受けた。そのことが信じられないくらい今の神戸はにぎやかで華やかだけど、大きな被害を受けたのはチキンジョージも変わらない。
お話をうかがった取締役の児島勝さんによると、震災の少し前に建て替えをしたばかりだったのだそうだ。それだけにダメージは大きく、一時休業をせざるをえないことになる。
名前は「チキン」だけれど、そのエネルギーはフェニックスのようだったに違いない。
もちろんそれは、お店のエネルギーだけでなく、音楽を愛し、この店を愛したたくさんのミュージシャンや音楽ファンによるものでもあったのだろう。ビルそのものの立て替えを経て、みごとチキンジョージは復活した。1980年の開店以来、去年でなんと堂々30年の歴史を迎えることになったのだ。

石田長生、憂歌団、Char、チキンおなじみのミュージシャンはもちろん、プロ・アマを問わず本当にたくさんのミュージシャンがこの店を訪れ、今でもほぼ毎日ライブを行っている。
逆に、この店があることが、多くのミュージシャンを支えてもいるのだろう。
今後の夢は?とお聞きすると、児島さんは「できるだけ変わらずに、ミュージシャンを大事にしながら長く続けていきたいですね」なんて控えめにおっしゃるのだけど、そのことの意義は大きい。
いつでもいいライブがあって気軽に行ける店がこんな身近にあるなんて、神戸の音楽ファンは本当に幸せである。いや、京都からだって大阪からだって、思いつけばすぐに行ける距離なんですけどね(笑)。

オールスタンディングでイッパイイッパイに使えば、なんと400人から500人が入るという広い空間。それだけにPAも本格的で、取材にお邪魔した当日も念入りなリハーサルとサウンドチェックが行われていた。楽器や照明、本格的なPAもコミコミでのパーティなんかも可能だそうだ。
チキンジョージでは、ミュージック・フィーとは別に1,000円の「食事代」を併せた料金になっている。
お酒はもちろんだけど、お腹へった人はしっかり食事もとれるそうで、カウンターの端には炊飯器が鎮座ましましている(笑)。そのライブハウスらしくない風景には笑ってしまうのだけれど、「チーム炭水化物」の関西人にはうれしいかぎりだ。そりゃいい音楽聴いて体を動かせばお腹もへりますよねえ。

取材にうかがったのは、東北の大震災から半月ちょっとという日。被災仲間というのはヘンだけど、地震によって大きな大きな被害を受けたということは、その大変さがリアルにわかるということでもあるのだろう。ライブの際には募金箱を設置して、義捐金を募っているそうだ。

あの震災から16年。瀕死のチキンは、いま見事によみがえって羽ばたいている。そして、音楽を通じて、世界にエールを送り続けている。

The Live House CHICKEN GEORGE
●神戸市中央区下山手通2-17-2 B1F
●TEL:078-332-0146
取材日:2011.04.08

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