ジャズ探訪記 バックナンバー
Bistro  Side by side
ジャズも料理もハーブを効かせて…?
三宮駅を降りて山手に向かう。週末のこの辺りはいつも通り、仕事帰りにイッパイやりに行く人やらゴハン食べに行く団体さんやら、たくさんの人であふれている。なんというか、このにぎわい感みたいなものが余計に呑みたい気分・食べたい気分を誘うんですよね。古いお店や新しいお店が軒を連ねている光景は見ているだけでも楽しくなってしまう。でも、まあ見てるだけでは満足できないのも人情というもので…。
カラフルな色使いが楽しいブティックを眺め、カッコいいスニーカーを物色し、コンビニが見えてきた辺りで坂道を西側に折れると静かな路地。この路地の途中にあるのがビストロSide by sideなのだ。ビルの二階ということもあって、知らなきゃちょっと気付かない(変な日本語ですね、金田一先生ごめんなさい)お店である。

トントンと階段を昇り、ドアを開けると、こぢんまりと落ち着いたシックな店内。
このほっこりと暖かな雰囲気はいくらかフレンチカントリー風なのかもしれない、。
もちろん「ビストロ」とはレストランよりも気軽に、気取らすに食事したりお酒を飲んだりできるお店という位置づけで、そのテイストは入ってすぐに感じられる(おっと、「Aまから手帖(仮名)」みたいになってきたな)。いや、「いいお店」って、黙って入ればすぐにわかるモンなんですよね。でも僕が「このお店は間違いない!!」入と思った理由は、カウンターの向こうに見える大きな冷蔵庫のピカピカ加減で。レンジもオーブンも見た目にも清々しくて、「この店の味なら間違いない」、すぐにそう思わせてくれる雰囲気なんでした。

お話をうかがったマダムとマスターの赤崎さんご夫妻、おふたりとももとはお勤めだったのだとか。
マダムがこの店を開いたのが5年前、それまでは花のOLさんで、あちこち評判の店を食べ歩いては美味しいモノを見つけ、ホームパーティを開くのが趣味(?)だったそうだ。「仕事帰りの女性がひとりでも寄れるようなカジュアルなレストランがあったらいいのに…」という夢をついに実現したというわけだ。
そんな夢を持つきっかけになったにが南仏旅行。
「地元の人しか行かないような小さなレストランで、老夫婦も女性の一人客も、みんなカウンター越しに店の人たちと話しながらワインや食事を楽しんでいる様子がとても羨ましく印象的でした」と、マダム。
あー、その感じはよくわかります!
老若男女、さまざまな人が思い思いに料理やお酒を楽しんでいる場所、それはなんとも心温まる風景ですよねえ。そして、味をいっそう引き立てるスパイスは「会話」だったりもするわけで。
テーブル席が約10席と、他に席もたっぷりあるのに、人気があるのはやはりカウンター席らしい。お店に入って、カウンター席が埋まっていると「また来るワ」と帰っちゃうお客様もいらっしゃるとか(笑)、いや、お気持ちはわかります。



そして、「2年前から手伝いをするようになって…」というのが、Side by side専属のミュージシャンでもあるマスターで。
2年前ってのが定年退職された時だったんですね。でもお聞きすると、サックスを始めたのが50歳、ずいぶんと遅咲き(?)なミュージシャンなんである。でもそれ以降の、初志貫徹、堅忍不抜、断固決行、栄枯盛衰、焼肉定食、倦まず弛まずな練習の成果、お店でライブ演奏なんてこともできたりするようになったわけで、いやあ、これは大したモンですねえ!!僕も一人のミュージシャンとして(←言うのは勝手ですからね)大尊敬です。実際、お客さんの中にも、その話を聞いたり演奏する姿を見たりして楽器を始めるひとも多いんだそうだ。
誕生日のお祝いに食事に来られたお客様には、「HAPPY BIRTHDAY」なんか演奏することもあるらしい。カップルのお客様の中には、それを聴いて思わず涙ぐむ女性もいたそうで(はい、男性読者の方!ここアンダーライン引いて!)…、そりゃそうですよねえ。

そんなスペシャルな演奏以外にも、水曜から土曜まで毎日ピアニストを招いてのライブが聴けるというの魅力なんだけど、
「ライブというよりは『生演奏のBGM』と考えてます」と、マスター。
「あまりライブハウスみたいにはしたくなくて、まずは料理ありき、の店だと思ってますので」
なるほど、演奏が主になっちゃうと、せっかくのマダムの料理がもったいないかもしれないなあ。フォークやナイフがかすかにふれ合う音やワインを注ぐ音、そして何よりも楽しい会話は、味を引き立てるライブ演奏ですもんね。
料理もコースありアラカルトあり、メニューを見ているだけでも楽しくなってしまう。「エスカルゴや子牛のパイ包みなど、メニューはフレンチ中心だけどピッツァもオススメ。生ハムやジェノベーゼなんかは、個人的にとーっても心惹かれるなー。
神戸の美味しい魚や野菜を使ってどんな料理を作るか…と、マダムは毎日知恵を絞っているそうだ。
お酒はワイン中心、でも焼酎や日本酒も選りすぐりのものをラインナップ。なにしろ「二人とももともと飲んべえで(笑)」とおっしゃるマダムとマスターのチョイスである。
日本酒は磯自慢(静岡)に白滴(奈良)、焼酎は杜屋(大分・麦)に一人蔵(鹿児島・芋)、酒好きなら「え!ホント!?」となること必至のチョイスである。

なんて話をうかがいながらも、取材に応じてマスターが披露してくださった演奏はいきなり"My One And Only Love"。
カップルのお客様は、食事の手を止めて聴き入っていたようだ。
だいたい月1回というライブの日、2時間ほどの演奏が終わった後は飛び入り(?)オッケイのジャム・セッションになるらしい。マダムも「時には私もピアノ弾くんですよ」とのこと。いや、それも楽しそうですねえ…。
にぎやかな通のすぐ横に、こんなに和める店があるなんて。面白いなあ、神戸の街。

Bistro Side by side
●神戸市中央区中山手通1-7-21ホワイトキャッスルビル2F
●TEL/FAX:078-391-6789
取材日:2008.11.6
●http://bistro-sidebyside.com/
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