プロジェクト「YOUNG BLOOD」に集まった関西若手ジャズミュージシャンたちがジャズについて熱く語る「TALKING JAZZ」もとうとう最終回。7回目のテーマはジャズの花形といえばこの人たち、「ホーンセクション」について。今回はトロンボーン奏者の今西祐介さん、アルト・サックス奏者の中島あきはさん、トランペット奏者の、横尾昌二郎さんと内藤咲重さんにジャズとホーンの魅力についてお伺いしました。
——「ジャズに目覚めたきっかけ」について教えてください。
- 「僕は部活がブラスバンド部やって、カウント・ベイシー楽団をやってたんですけど、最初は全然ジャズとか聞いたことなくて、先輩がやってるのを見て格好良いなあって。気がついたらCD買いあさってましたね。まさにハマっちゃった!ていう感じでしたねー」
- 「僕もそうですね。ジャズバンドでたまたまという感じ。最初はね、本当イン・ザ・ムードとか茶色の小瓶とかほのぼのやってる感じでしたけど」
- 「(笑)」
- 「一年間ぐらいはね、課題をやらされるがままにやってた感じですけど、中二ぐらいのときにクリフォード・ブラウンかリー・モーガンかどっちかが入ってるアート・ブレイキーのCDを聞いて、なんやこいつ!って思ったときからリスナーに目覚めて今に至る感じですね」
- 「私も吹奏楽部で、と言ってもラッパじゃなくてホルンを吹いてました」
- 「え、マジで!知らんかった」
- 「そう、ホルンで(笑)。で、A列車でいこうを吹奏楽部でやったんですよ」
- 「ホルンで(笑)」
- 「そう。でも全然ホルンが面白くなくて、トランペットセクションめっちゃ格好良いとか思ってて(笑)。でも中学校でやったのはA列車一曲だけでしたね。それで高校に入っても吹奏楽部入ったんですけど、部員が全然いなかったので一人で個人練習ばっかりやってて」
- 「孤独(笑)」
- 「うん(笑)。それで高校出て二年ぐらい働いたりしてたんですけど、それから大阪音大ジャズ科に入ったんです。二年のブランク中に、働くんしんどいし(笑)、やっぱジャズやりたいなあと思ってたから」
- 「そこからかー。すごいなあ」
- 「私も中学校で吹奏楽部に入って、スウィングガールズっていう映画を観ていいなと思って」
- 「え、あれが中学?(笑)」
- 「そうなんです、あれ観てすごい楽しそうやなって思って」
- 「そうか、あれ観てっていう世代か…世代の差がすごいな(笑)」
- 「で、ちょうど吹奏楽部で先輩と揉めちゃって、私こんな部活やめる!って言ってやめて、でもやることなかったから、あ、そうやジャズやろってなって、そこからチャーリー・パーカーのCDを聴いてのめり込んじゃいましたね」
- 「そうか、じゃあの映画の影響はすごかったんやなあ」
- 「それはもう!」
- 「面白かったしなあ。俺らもウォーターボーイズやろか(笑)」
- 「ウォーターボーイズはちょっとしんどいんちゃうかな(笑)」
——「それぞれの楽器の魅力」について語ってください。
- 「トランペットはね、…最初は押すとこ3つしかないから簡単そうやなって。しかも格好良いし」
- 「(笑)」
- 「でもまあ押すとこ3つしかないんが余計難しかったって話なんですけど(笑)」
- 「そうですよね(笑)」
- 「シンプルでいいですけどね」
- 「私はリコーダーと一緒やったから(笑)。簡単かも、っていう」
- 「そうですよね、簡単そうやし格好良いしってのが楽器選びの基本ですよね(笑)。トロンボーンなんか難しそうやのになんで選んだんですか(笑)」
- 「えー(笑)、僕は中2から始めたんですよ。始める人は中1から始めるでしょう。で、言うたらまあ、空きがトロンボーンしかなかったんでね。僕としてはドラムがやりたかったんですけど、『ドラムは上手い奴がおるからあかん』て言われて、じゃあトランペットって言うたら『もう3人おるからあかん』、じゃあサックス『これも上手い奴2人おるからあかん』…じゃあ何残ってるんですかっていうね(笑)。で、ピアノはどうかって言われたんですけど、僕不器用なんで、鶴とかも折れないんで…って言ったら『じゃあピッタリやな!トロンボーン』って言われて」
- 「(笑)」
- 「『あれ指使わへんぞ、長さで音変えられるからな』って言われて、あ、ほんまやな!って。で、とりあえず吹いてみろって言われて吹いたら音出て、『お前天才や!』って言われてね(笑)。ボタンないし、不器用な僕でもできる、しかも天才らしいわ、ということで始めましたけどね(笑)」
- 「先生が天才やわ…(笑)」
- 「いやマジで(笑)。で、魅力はボタンがないから、そのぶん中途半端な音が出せる。あとは一番シンプルなカタチでしょ。パイプの長さ変えて音出すわけです。トランペットは空気の通る場所を変えたりするわけですけど、トロンボーンは本当に手動で長さを変えるだけなんで、吹奏感があるというか、吹くことだけに集中できるっていうのは唯一かなと思いますね。始め方はこんなんでしたけど(笑)、今では大好きな楽器です。音もあったかいですし、金属から出てるとは思えない暖かい音がね、そこが一番好きなとこです」
- 「どうする?簡単そうとかじゃなくて、トランペットの魅力を語らな(笑)」
- 「吹いてパーンって出るのは魅力ですけどね」
- 「うん、やっぱ花形的なあのパーンて音もそうだけど、それだけじゃなくて中低音も魅力だと僕は思いますね。どの楽器もそうですけど、出したい音が出せるっていうのは金管の魅力やと思いますね」
- 「アルト・サックスは人間の声に似てる気がするんです。私、初めてチャーリー・パーカーを聴いたときに、女の人が喋ってるように聞こえたんです。その喋ってるっていう感じがね、本当に好きですねえ」
——「ステージの上で心掛けていること」を教えてください。
- 「僕はなんですけど、演奏中は演奏することに集中するんですけど、吹いてないときに逆に気を使ってますね。ソロが終わって横にはけた後、横尾くんがソロを吹いてるとするじゃないですか。吹いてないけど、バンドの外に気持ちを離さないようにしてますね。吹いてないときにバンドの一員でいよう、影響しあおうっていうのはとても難しいことなんですけどね。初めはそういう意識がなくて、『お前ソロ終わったらもうどっかいってるで』って人に言われて気づいたんですね。吹いてないときにどれだけ一緒に演奏できるかっていうのは常に心がけていますね」
- 「外から見たら気付きますよね、それ」
- 「うん、そう。プロの人でも結構いますよ、自分のソロが終わったらお客さんになっちゃってるって人。そういうのにはなりたくないよね」
- 「あとは水いっぱい飲む?やっぱ唇とか乾燥するとスカスカして音が鳴りにくくなるよね」
- 「トロンボーンも一緒で、マウスピース使う楽器はみんなそうやんな」
- 「そう、だから喉が乾く前に飲むようにしてますね。特にレコーディング中とかは一日中吹くんで、2リットルぐらい飲みましたね」
- 「その代わりトイレの回数増えるけどね(笑)。でも横尾くんはへばらへんよな」
- 「うん、水いっぱい飲んでる日は大丈夫。お茶は利尿作用があるし、ジュースだと糖分取り過ぎるんで、やっぱり水が一番ですね。エリック宮城さんも言うてました(笑)」
- 「あ、あと関係ないけど、僕は服装をめっちゃ気にします。というのも、僕はアメリカのコネチカット州に留学してたんですけど、そこの先生が私服で行くとナメられるって言ってたんですよ。向こうだとやっぱり黒人の音楽なので、クラシックやったらビシッとしてるけどジャズやったらジーパンTシャツで演奏してるイメージが強いらしいんですよ。でもジャズやからって音楽でナメさせたらあかんって言って、黒人の先生も絶対スーツなんですよ。『ジャズは俺らの文化で歴史やから、態度でも示さなあかん』って言ってて、僕もそうするようにしてますね」
- 「マイルス・デイヴィスの自伝にも書いてましたね。ヒップなスーツを着てっていう。確かに見た目は大事ですよね。譜面台にしてもあまり高くしないとかね」
- 「そうですね。お客さんから見えないと駄目ですよね。それでいくと、私はちょっと前までは見た目とかを気にしない方が逆に格好良いんじゃないかなって思ってたんですよ。なんですけど、最近は女の子っていうのは見られますし、それが得なのか損なのかは分からないですけど、男性とはやっぱり違うじゃないですか。なので、女の子っていうのを武器にしてやっていくのも大事なのかなって思いますね」
- 「うん、なんにせよ『見られてる』ってことを意識することは大事ですよ」
- 「私は演奏を一生懸命やりすぎて何も考えてないですね~。MCワケ分かるように喋るぐらいかな(笑)」
- 「あーそれ、難しいよねえ(笑)」
- 「そう、昔は鏡を前に練習とかもしてたんですけどね(笑)。最近はもう流石にやってないしなあ。もう本当MC難しいですよねえ」
- 「今西さん酷いですよね(笑)」
- 「いやいやいや(笑)。いやーもうだってね、マイク持った途端ぶわあってなるよ(笑)?本当に。気付いてなかったけど、両手でマイク持ってたりするらしいね、俺(笑)」
- 「本当、学生の人の方がMC上手かったりするよね(笑)」
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