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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.99
さうりる

ベーシストのオーナーによる新たなライブ・スポットが京都に誕生
@京都・右京区西院

京都で友人がジャズ・ライブハウスをオープンする、というニュースが飛び込んできた。こりゃ行かなくちゃ!ということで、今回は関東首都圏を離れ、めずらしく京都にやってまいりました。
観光客でごった返す京都駅を後にし、四条通と葛野大路通りが交差する一角へ。あ、あのビルだ! 2階へ上がる階段の入り口には、すでにお祝いの花かごがいっぱい。バラとユリの芳香に包まれ、階段をあがると懐かしい顔ぶれが笑顔で出迎えてくれた。
『さうりる』オーナーの今田博史さんとは、都内の社会人ビッグバンドの共通の友人を通じて知り合った。今日のオープニングライブで演奏する立石一海トリオの立石さんも、かつてアマチュア時代に今田さんと同じバンドに在籍。二人は「いつかライブのできる店を持ちたいね」と門前仲町の飲み屋でよく語り合っていたという。
今田さんの本職はDTPオペレータ。大学では情報工学を学び、出版社でアルバイトをした際にDTP部門の設立に関わってそのままオペレータとして独立。その傍ら、前述の社会人バンドでベースを担当。立石さんに「プロのベーシストになるのでは?」と思わせたほどの腕前だ。3年前に地元・京都に戻り、ついに夢を実現させるに至った。

白と明るいベージュで統一された清潔な店内。かつてのジャズ喫茶の「真っ暗・真っ黒」イメージとは正反対。大きなガラスの出窓からは明るい日差しが降り注ぎ、行き交う人や車が活き活きと映し出されている。最も目を引くのは、ステージに置かれた木目調の美しいピアノ『ディアパソン』。浜松の職人が丁寧に制作している国産ブランドだ。ドラムもDWジャズシリーズとマニアック。さすがに楽器は今田さんいちばんのこだわりのよう。
店内を案内してもらっていると、若い女性がおそるおそる入ってきた。向かいにある大学の学生さんで、毎日前を通りながらガラスごしに見える『Jazz Live』の看板がずっと気になって思い切って入ってみたのだという。話を聞けばなんと今田さんの実家近くの生まれで同じ高校に通っていたことが判明。すぐに打ち解けてついでにライブも聴いていくことになった。早くも新しいファンがやってくるなんて、幸先よろしいじゃないですか!店長。
「東京でも、大阪でも、京都でも、どこでオープンしてもかまわなかった。でも心のどこかでいつかは京都に戻りたいという想いはあったかもしれません。プロもアマチュアも、音楽を愛する誰もが楽しく演奏できるスペースにしていきたいですね。また、いずれメンバーを募って『さうりるビッグバンド』を結成するつもりです。ここでライブはできないまでも、リハーサルなら広さは充分。僕自身がビッグバンドという音楽から離れたくない、というのがいちばんの理由ですけどね」と今田さん。

窓の外はいつの間にか夕暮れを迎え、いよいよライブ開演時間がきた。
立石一海(pf)+佐藤 忍(b)+鈴木麻緒(ds)の透明なサウンド、そして『ディアパソン』の初々しい響きに、満席の客席は心地よく包まれる。圧巻は立石氏オリジナル『Something’s Beginning』。ある元日に決意を持って書き上げられたという明るさに満ちたこの一曲。『さうりる』の門出を祝う気持ちにあふれ、胸が熱くなった。
ふと顔を上げると、壁には真っ赤なお祝いのフラッグが掲げられている。今田さんが学生時代に所属した軽音楽部のメンバー一同の名前が連ねられた、心強い贈り物。
時間も空間も飛び越えて、ここにいる人・いない人、みんなの想いが音楽という赤い糸でしっかり結ばれた夜だった。
ところで『さうりる』という不思議な語感のこの言葉、その意味は「ヒミツ」なんだって。
甘酸っぱくてほろ苦い青春が、もしやいっぱい詰まっているんだろうか。うーん、気になるぅ。