ジャズ探訪記
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Jazz Live CANDY(キャンディ)

花街の隠れ家ジャズスポット@京都・祇園

こぬか雨降る御堂筋ではなくて、小雨模様の京都・祇園の街を歩く。四条通りを八坂さんに向かい、一力のある花見小路を北に上ル。地名さえわかっていれば京都の街はほんとうに歩きやすい。「青菜の炊いたん」みたいな名前イコール調理法みたいな、とても合理的な街造りですね。
これぞ花街というべきか、辺りはたくさんのクラブや洒落たレストラン、割烹のお店が並んでいる。でもこんなところにジャズのお店が…?

あ、地名をたどって探していくと確かにありました。
四条からやってくると、もう少しで白川に突き当たるというところ。さすがに祇園、雨に煙る風景もまた雅な風情である。階段を降りると(いや、エレベーターもあるんですけどね)もうすぐにキャンディがある。

ドアを開けると真正面にライブステージ。右にはお酒のボトルが並ぶカウンター、左側にはテーブル席がある。まあ小バコといっていいでしょうね、いかにもジャズファン好み(?)のスペースだ。
ふと振り返ると、ドアの周囲や壁面にはたくさんの写真の額がディスプレイされている。マイルスやコルトレーンの写真が飾られてるお店はたくさんあるんですけどね、ここに飾られててるのはそれぞれ美しいシンガーやミュージシャンのポートレートである。誰のこととは言わないけれど、眉間に深いシワを寄せてトランペット吹いてる人や妙に哲学的な顔をしてサックスを持ってる人の写真よりも「見て嬉しい」ってのは正直なところである。

「いやあ、お客さんが撮ってくれた写真なんですよ」
と教えてくださったのは、オーナーの平木さん。一見、ジャズというよりロックンローラー風の平木さん、でも「楽器はなーんにもできません」とのこと(笑)。お店は今年でもう30年、この場所に移ってからでもすでに10年という老舗である。もともとは映画製作の仕事をされていたという平木さんは、まあさまざまな紆余曲折の後、いろんな人との出会いによってお店を開くことになったのだそうだ。お話を聞いていると、どんどんおもしろい話が出てくるのだけれど、ちょっとここではおおっぴらにできない話もあって…、ぜひ直接、お店を訪ねてご確認ください。

お店の左右にはさすがに大きなスピーカー。
小川のせせらぎからダイナマイトの爆発音まで忠実に再現するというA-7。「ボイス・オブ・シアター」のニックネーム通り、映画館でもよく使われていたという名器だそうだ。いやたしかに、自然でいい音だなあ。なんでも、昔の北浜・三越劇場にも同じものが採用されていたらしい。三越劇場もなくなってしまったし、このスピーカーの音が聴けるのは今やここキャンディくらいしかないのかもしれない。

それにしてもこんな小バコで、それでもほぼ毎日ライブが聞けるってのはスゴい。ブッキングもミュージシャン側からオファーがあるらしく、東京など京都以外からのミュージシャンの名前も多い。おもしろいのはスケジュール表で、アマチュアミュージシャンも大御所ミュージシャンも同じ大きさ・同じ書体で書かれている。「いや、変化つけていくとキリないし、なによりめんどくさくて」と平木さんは笑っているのだけど。
そんな気楽さのせいかどうか、このお店がきっかけで全国のジャズイベントにもつながりができてきたそうだ。季節やタイミングによると、ジャズ好きのお坊さんやお相撲さんがやってくることもあるという(笑)。さすが京都というべきか。

そうだな、白川辺りでちょっとゴハンでも食べて。祇園のお茶屋で遊んだ後にでも、芸妓さんを誘ってこっそりジャズライブなんてのもいいかもしれない。そんな気分にさせてくれるライブスポットだ。

Jazz Live CANDY(携帯サイト http://www.h3.dion.ne.jp/~candy-h/i/)
●京都市東山区花見小路新門前上ル汀館B1F
●TEL:075-531-2148
取材日:2011.04.28

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