ジャズ探訪記 バックナンバー
bar GRUS(バー・グルウス)
生まれたばかりのジャズのヒナ鳥。
中山手通・北野坂周辺というと、まさにジャズ銀座。たくさんのライブハウス屋ジャズクラブが軒を連ねる神戸ジャズのメッカとも言えるところだ。
その北野坂のとっかかりを右に折れて、加納町の交差点方向に曲がりこむ。なに、ほんの数歩の距離だ。バー・グルウスがあるのは、そこにそびえるビルの7階だ。入り口近くに立っている看板を目印に、エレベーターに乗り込む。
エレベーターのドアが開くと、もうそこはお店の入り口。おっと、今日のライブももう始まっている。ピカピカのカウンターも座り心地のよさそうな椅子も、なんだか真新しい感じだ。
「やあ、いらっしゃい」迎えてくださったのはオーナーの岩本鶴司さん。お聞きすると、このお店を開いたののが一昨年の10月。ということは開店一年半ほどで、ジャズクラブとしてはニューフェイスといっていいだろう。お店のそこここに初々しい匂いがするのも当然かな。そうそう、ちなみに、「GRUS」とは、「鶴」、あるいは「鶴座」のこと。日本ではあんまり馴染みのない星座ではありますけどね、ドイツの天文学者がそう名付けた星座があるんだそうです。そこから、岩本さんのお名前(鶴冶さんとおっしゃいます)の一字をとってお店の名前にしたのだそうで。そういえば、加納町の夜景を見下ろす窓ガラスにも鶴座のシルエットがデザインされていて、由来を聞くとナルホド、ナルホド。
しかし名は体を表すというかなんというか…、まさしく鶴のようにスリムな岩本さん。
ジャズが好き…というよりはジャズの「匂い」がお好きなんだそうだ。お店の佇まいからも感じられる「こだわりのなさ」みたいなものも、そんなところから来ているのかもしれないなあ。「ジャズのお店をやりたい…」というより、神戸で遊んでいるとどこに行っても聴こえてくるジャズにいつのまにか馴染み、好きになっていったのだとか。お店では大型モニターで古のジャズライブの映像が流れているんだけど、岩本さんご自身、「コレを見ながら勉強しています」なんておっしゃる(笑)。一部のお店にあるような、「ジャズのウンチク」とはまったく無縁な明るい印象だ。
料金的にもまったくはっきりしていて、すべてのドリンクがノーチャージで500円!ソフトドリンクでも、もちろんお酒でも、これならずいぶん気楽に出かけられるなあ。
なんでも隠れた人気メニューがあって。それは、グルウスオリジナルのカレーライスらしい。なんでも岩本さんは、某洋菓子チェーン経営のレストランで修行された経験もあるとのことで、こりゃ本格的だ。ある晩には、ライブを終えたミュージシャンとお客さんが、カウンターに並んでみんなでカレーを食べていて、「なんかカレー屋になったみたいでしたね(笑)」なんてこともあったそうだ。
それだけ気楽で、くつろいでいられたってことだろうな。
だいたい20人から25人くらいの、いわば「小バコ」だけど、貸し切りの使用も可能。ピアノやドラムス、ベースやギターまでお店に常備されている(!)ので、音楽仲間でのパーティなんて使い方も楽しそうだ。




たくさんのジャズクラブがひしめくこの界隈。
「他のお店と肩を並べてはりあうのではなく、ウチ独自の企画をあれこれ考えています」と岩本さん。
お店の数以上に、たくさんのミュージシャンが活躍している神戸だけど、「若いミュージシャンに、できるだけ演奏の場を提供していきたい」とも。
生まれてまだ二年に満たない「ヒナ鳥」のバー・グルウス。でも、夜空の鶴座のごとく、大きく羽ばたいていってほしいものだ。
bar GRUS(バー・グルウス)  
●神戸市中央区中山手通1丁目22-27 DOM’Sビル7F
●TEL:078-221-1195
取材日:2008.03.15
PAGE TOP