ジャズ探訪記 バックナンバー
●お好み焼きとジャズ・葱焼倶楽部(ねぎくら) 
ジャズの響きはソースの香りにも似て…?
緑深く広がる、湊川神社。その静かなたたずまいは、ここが神戸の町中だなんてちょっと思えないくらい。JR神戸駅から、あるいは高速神戸駅から、にぎやかな地下街を歩くのも楽しいけれど、天気が良ければ地上をぶらぶら歩きたいところだ。今回お邪魔する「ねぎくら」こと葱焼倶楽部は、湊川神社の西隣、写真館のあるビルの地下。神社と大きな写真館を目印にすればゼッタイに迷うことはないだろう。
いや、まあね、最初は「え?お好み焼きとジャズ?」って思ったんですよ、正直なところ。で、すこーし首をひねりながら歩いて来たわけです。でもお店の看板とか見て、そのギモンは吹っ飛んでしまいましたね。
だって、センスいいんですよ、もう一目瞭然に。
天然木の一枚板で作られた看板には墨痕鮮やかに(文字は白いんですけどね)「葱焼倶楽部」、並び立つのは関西人にはお馴染みの、あのコテを(笑)ぶっ違えたマークと「Negikura」のロゴ。イーゼルには手書きのメニューが置かれている。お、こりゃあ楽しみだなあ。
脇にいろんなジャズのフライヤーなんかがいっぱいにピンナップされている階段を降りると、流木のようなハンドルがついた大きなドア。それをくぐるとアンティークのミシンや花が置かれていて…、聞いてなければここがお好み焼きの店とは誰だって思わないだろう。地下とはいうものの、まずこのエントランスが楽しい。さていよいよ店内は…。
流れてきたのは優しいピアノの音。
落ち着いた照明の中に、アンティークの家具や楽器、絵皿や写真が木目の壁面を飾っている。すぐ手の届くところにはたくさんの本も並んでいて、なんというか、お好み焼きの店というよりはパブとかクラブ(北新地とかじゃなくって、ロンドンの方ですけどね)印象…、あ、たしかにここは葱焼「倶楽部」なんだった。たしかに、ソースやコテや、お好み焼きにはお馴染みのメンメンがテーブルの上に顔を揃えている。ああ、でも音も雰囲気も、全部がうまく調和しているなあ。




『やあ、いらっしゃい~』と、にこやかに迎えてくださったのはオーナーの田中さん。ゆったり響く神戸弁、田中さんは生まれも育ちも、ここ神戸だそうだ。
お聞きすると、お店を始める以前はカーオーディオメーカーのC社にお勤めだったらしい。昔からジャズ好き、特に震災前には生田さんのそばにあったには有名ジャズ喫茶には毎日通い詰めるほどだったという(今はトア・ウエストに移転した、ほら、あのお店ですね)。ジャズそのものが好きなのはもちろんだけど、魅せられたのはその音。
『いつも閉店前にかかるコルトレーン、その音がなんともよくって…。スピーカーの真ん前で聴いていてもぜんぜんうるさくないんですよ。いやこれには驚きました』。ジャズと、ジャズにまつわる思い出を語る田中さんの声は、言葉は少ないがらだんだんと熱を帯びてくる。
そして『いつかは同じ機材で店を…』と思うようになり、8年前にお勤めを辞め、ついに「ねぎくら」を開いたということだ。
今のお気に入りは英国製のスピーカー、「タンノイ」。しかも35年前のものだそうだ。
本来はクラシック向きのスピーカーらしいけど、たしかに、柔らかく自然な響きがなんとも心地いい。
『いやあ、安かったもんで』とおっしゃる田中さんだけど、きっといろんな経験を生かしたチョイスだったのに違いない。
お店の奥にはピアノやドラムが置かれていて…、あれ、ギターだってエレキもアコースティック揃ってるしトランペットにクラリネットにフリューゲルホーンまである?ライブもあるんですか?
『固定のライブは第一と第三の土曜日。その他に、第一水曜には「おけいこセッション」っていう気楽なライブをしています。まあライブというよりも公開の練習といってもいいかもしれませんけど、時には中学生や高校生のプレーヤーも参加してくれますよ。もちろん飛び入りも大歓迎です!』
あ、そりゃなんか気楽そうでいいですねえ。
『他の曜日でも、お客さんのご希望があればライブをしています。ミュージシャン仲間の応援がとても嬉しいですね。ライブの時なんか、仲間が集まって立ち見になることもあります。いや狭い店なもんで』と田中さんは苦笑する。
お母様と奥様もお手伝いに来られるというランチタイムの人気メニューは、チーズとトマトのソースをかけたチキンとポークのステーキ(800円)。そしてさすがに神戸、ソバメシももちろん大人気。
そしてこれは言っておきたい「神戸焼き」(700円)!大葉をの上にモチと豚肉をのせて焼いた、ねぎくらオリジナルの四角いお好み焼きだ。
ジャズを聴いて、あるいはライブを見て。お腹がへったら香ばしいお好み焼きにビール。
もうこれ以上何かいりますか?
お好み焼きとジャズ・葱焼倶楽部
●神戸市中央区多聞通4-1-2 
●TEL:078-351-1166
取材日:2008.02.07
●http://negikura.han-be.com/
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