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さて、このコーナーポケット、店名はもちろんカウント・ベイシーの名曲から。
ただ、作曲はべイシーではなく、ベイシー・オーケストラのギタリストでもあるフレディさん。お店のドアを押すと、すぐ脇にはフレディさんの「お墨付き」ともいえる色紙が飾られている。
そんなコーナーポケットも、なんと開店は1975年の2月。つまり、すでに32年の歴史を持つ老舗なんである。
それだけに「学生時代に来てました」なんていう昔馴染みのお客さんもいる。それだけに「前のオーナーのお嬢さんですか?」なんて言われることも多いそうだ。それもそのはず、32年前の開店時、鈴木さんはまだまだ学生といっていいお年だったわけで(笑)。そんな若い女の子がオーナーとは思えなかったとしても、そりゃあムリはないというものだ。
そうそう、オーナーといえば。
ついこのあいだまで、お店のオーナーは優子さんのご主人である鈴木喜一さんだったのである。なぜ過去形か?というと、喜一さんがこの7月に急逝されたからなのだ。喜一さんの遺志を引き継いで、優子さんと息子さんの遼さんが今のコーナーポケットを切り盛りしているということになる。 |
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かつて、このパラゴンの導入を決めたのもやはり喜一さんで、大阪は梅田にあったジャズ喫茶「ファンキー」でこの音に魅入られたかららしい。それが開店してからほんの2年か3年ほど後のこと…というから、もうほぼ30年の間、このスピーカーはここで素晴らしい音を響かせていることになる。
ただ、オーディオというものも、ただ買って接続すればいいというものではないようで、導入後の喜一さんも、延々と細かなチューニングを繰り返し繰り返し、亡くなる直前まで音にこだわっておられたそうだ。
その甲斐あって、「パラゴンでこの音が出せるなんて!?」とオーディオの専門家をも唸らせる音が生まれたわけだ(このあたりの詳細はぜひホームページで!)。
とはいうものの、何から何まで高級品で…となるかというとそうでもなくって、音に影響ない部分ではかなり気楽なものも使用されているらしい(いや、ハハハ、このあたりの裏話もすごくおもしろかったんですけどね、今はナイショにしときますね)。 |
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喜一さんも優子さんも、ジャズを提供するだけでなく、積極的に聴きにも出かけていたそうだ。そしていい演奏に出会ったときのことを、眼をキラキラ輝かせて語る優子さん。そんなお二人の人柄に惹かれて、ジャズ好きの高校生や大学生も足繁く通ってくる。
12月には喜一さんの追悼コンサートが開かれる。詳細は「追悼コンサート実行委員会」のホームページでチェックして欲しい。
http://www.cp-paragon.com/concert1209/main.html |
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喜一さんが、まさに心血を注いだこの音。
この音が出せる限り、ここでこの店を続けたいと優子さんはおっしゃる。
そろそろ取材を終えようかというとき、「この音が主人の声ですからぜひ聴いていってください」と、一枚のCD をかけてくださった。
タイトルもアーティストも、あえて書かない。僕が聴いたのはきっと、喜一さんの声と、そして優子さんの喜一さんへの思いだったのだろうから。 |
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