ジャズ探訪記 バックナンバー
●LIVE SPACE APPLAUSE(ライヴスペース アプロウズ)
晴れた空、そよぐ風、スティールギターの音も楽し。
レストランとかクラブがたくさん入った、巨大なビル。三宮駅すぐ近くの、ほとんどこの一区画を占める大きさだ。このビルの6階に、目指す「アプロウズ」はある。ジャズのお店は数々お邪魔したけど、ハワイアンの、しかもライブが聴けるお店なんて初めてだ。ハワイアンというと、古くはエルビス・プレスリーの「ブルー・ハワイ」とか加山雄三の「お嫁においで」、最近だとカラパナ(あ、古いかな?)ジェイク・シマブクロとかハーブ・オオタとかの名前がすぐにアタマに浮かぶ。いったいどんな雰囲気のお店なんだろう?
ハワイアン…というと、一時代を築いたミュージシャンとしてすぐに思い浮かぶのがバッキー白片とアロハ・ハワイアンズ、そして大橋節夫とハニー・アイランダーズの両巨頭。
ここアプローズのオーナー、河田信秀さんは、その一方の雄、ハニーアイランダーズのメンバーだったのだ(ちなみに、前にも書いた「お嫁においで」のバックで演奏しているのはハニー・アイランダースで、もちろん河田さんも参加しているそうだ)!
当時ハワイと言えば、南の海に浮かぶ夢のパラダイス。「○○を飲んでハワイに行こう」なんてCMがあったり、某クイズ番組の優勝賞品がハワイ旅行だったり、ともかくほとんどの日本人にとっては遠い遠い場所だったんである(…って僕はその時代を見ていないんだけど)。ハワイアンミュージックは、その遠い南の島を身近に、しばらくの間だけでもはるかなハワイの風を感じさせてくれる音楽…今風に言うなら「癒し」の音楽だったわけだ。
ただ、それが一時の流行で終わらず、今でも多くのファンの心をつかんでいるのは、どこか日本人の心に訴えかける何かがハワイアンにあるからだろうな。
こじんまりした店内にはハワイの写真やポスターが飾られ、ライブステージにはたくさんのアンプやギターに並んで、ウクレレやスティールギターが見える(当然?)。さすが、このへんはジャズのお店と違う所だなあ。開店して間もないというのに常連の、そして長年のハワイアンファンらしいお客さんたちはニコニコ語り合いながらライブの開始を待っている。
今日のライブも、みなさんベテラン・ミュージシャン。
サウンドチェックも大まかで、曲順も演奏しながら変わったりしているようだ(このあたりの呼吸はジャズにも通じますね)。全員で担当するコーラスも実にハワイアンなスタイルで、曲目もガーシュインの「I GOT RHYTHM」なんかもおりこまれいて楽しい。そしてアップテンポな曲にもどことなく流れるおおらかでゆったりした空気。ああ、聴いているだけで海からの南風を感じるようだ。





オーナーの河田さんに、いろいろお話をうかがった。
ハワイアンとの出会いは大学時代。友人が「ハワイアンをやらないか」と誘ってくれ、そこからキャバレーのバンドに参加、そこをスカウトされ、もういきなりプロミュージシャンになってしまったという、筋金入りのハワイアンミュージシャンなんである。
現在でもお店のオーナーとしてだけでなく、現役ミュージシャンとしてコンサートやイベントに忙しく活躍されている。
「夏はもちろん、冬場でもハワイアンは人気があるんですよ。映画『フラガール』の影響もあるんでしょうけど、最近は若い女性の姿も多く見られるようになりました」
お店のライブでも、飛び入りでフラを踊る人もいるとか。ハワイアン・ミュージックもフラダンスも、演奏する側・踊る側はもちろん、観たり聴いたりするファンも数多く、そして根強くいるようだ。
最近のウクレレやフラダンスの人気もあって、なんとなく知っているつもりのハワイアンミュージック。でも、意外と生演奏を聴く機会って少ないんじゃないかな?いや、僕ももちろん初めてでした。
ライブは金曜と土曜だけど、「おそらく神戸で唯一の、毎週ハワイアンのライブが聴ける店」と河田さんもおっしゃる、ここアプロウズ。
アロハな風と音楽をぜひ一度、ライブで経験してほしい。
あ、そうそう、「また会う日まで」でレコード大賞を受賞した尾崎紀世彦さん。ハワイアンの歌手でもある彼も、しばしばこの店を訪れるそうだ。
ライヴスペース アプロウズ
●神戸市中央区北長狭通2-11-5 グランドコーストビル6F
●TEL:O78-391-7328
取材日:2007.08.24
●http://www014.upp.so-net.ne.jp/applause/  
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