vol.131

スイーツと音楽のお店 cachecahe（カシュカシュ）

街場に流れるのはジャズとお菓子の香り？
＠神戸・湊川

オシャレな街というイメージの神戸だけど、この辺りにはかなり下町っぽい空気が流れている。
にぎやかな商店街を行き交う人々もちっとも気取っていない、アタリマエの日常を生きている顔だ。
そんな湊川商店街の中、スイーツと音楽のお店カシュカシュがある。
こちらは言うなればスイーツ店＆音楽事務所で、こちらのスイーツとお茶を楽しめる同名の喫茶店も近所にある。
営業終了後には大物ミュージシャンのライブや新曲の収録なども行う空間。ライブはともかく、「曲の収録」ってのがなかなか謎ですね（笑）。

さて、オーナーさんは波戸岡正章さんとおっしゃるのだけど、まだまだお若いのです。いままでこのサイトでお会いした方々の中でも一番にお若いのじゃないかしら。
それなのに活動範囲も顔も幅広く、神戸の街を歩くと四方八方から声がかかるほど。

まあ顔の広さはともかくとして、波戸岡さんの活躍についてである。

ベテランジャズメンsax.土岐英史さんの神戸でのライブは波戸岡さんの店だけで定期的に行われ続けている。
最近ではボーカリスト•小関ミオさんの総合プロデュースを手掛け、ブルームーン・カルテット、いま超人気のH ZETTRIO(ハハハ、僕は以前入院した時に、ZETTRIOファンの看護師さんに彼らのことを教えてもらったのです）その他、ジャズだけにこだわらず、たくさんの魅力的なミュージシャンといろんな活動を幅広くしてらっしゃる。
む？あれ？いや、待てよ。この「なんでもアリ」なのがそもそもジャズなんじゃないのか？

でも「なんで湊川のケーキ屋さんが？」と思ったでしょ？いやごもっとも、僕もそう思いました。
しかしどうやら、人を引き付ける磁力みたいなものを持ってる人ってのはいるようで…。

そもそもは北野で小さな会員制のバーをされてたという頃のこと。
とあるお客さんとの話の中で、チキンシャックという、かつてならしたカッコいいフュージョンバンド（当時はカシオペアとかT-スクエアとか、カッコいいバンドがたくさんいましたね）が出て、調べてみるとこれがホントにカッコいい。そしてその後、波戸岡さんは、新開地音楽祭に出演する土岐さんにいきなり声をかけ、それ以来のおつきあいなのだとか。土岐さんからすれば「いい度胸してるじゃん！」ってところだったんでしょうかね（笑）。

お父様の店だったこちらを引き継がれたのが10年ほど前。最近は朝から波戸岡さんもケーキを作っているそうだ（笑）。
ケーキ・バウムクーヘンのレシピ改良なんてマニアックなことに手を染め（窓ガラスには、「神戸バウムクーヘン開発研究工房」なんて文字も見えます）その凝り性は音楽の方面にももちろん繋がってるんでしょうね。

須磨海岸での海の家（…とおっしゃってるけど、ブーヴ・クリコともタイアップしたイベントであります）で夏に似合う音楽をチョイスしたり、とにかく「フンイキ作り」にアイデアを絞る。

今でも続く一連のイベント、あるいはサウンド・空間プロデュース活動は「IN THE MOOD」と呼ばれている（必見！）のだけど、波戸岡さんの提唱するのは「豊かさに繋がるちょっとしたアイデア」のようである。
暗闇の中では蛍光灯の照明よりゼッタイ裸電球やロウソクの灯のほうが雰囲気が出る。コタツがあったらみかんもあったほうがいいじゃん？、みたいなことなのだそうだ（笑）。たしかに、生活の中に音楽がなければ、それはとても味気ないものだろう。

さて、波戸岡さんのお話の中には、「街場」という言葉がよく出てくる。
それは人々の暮らし、生活がある街とでもいうものだろう。そこはいのちが息づいている場所であり、ある意味、予測のつかない展開を秘めている場所のことでもある。そこに積み重なっているのは暮らしと時間、そして人と人との繋がりだ。

いろんな活動を「毎日ドラクエをやっているような気分」とおっしゃる波戸岡さん。
これからの神戸で、神戸の街場でどんなMOODが作られていくのか。
とても気になるところである。

そうそう、実はH ZETTRIOの「Dancing In The Mood」は波戸岡さんのイベント「In The Mood」にちなんで書かれた曲らしい。
「今でもずっとこの曲を聴いてモチベーションを上げています」と波戸岡さん。

登場するジャズタクシーは以前このサイトでもご紹介しましたね（vol.38）。
曲もPVもサイコーに楽しいのだけど、この中でメンバーが乗っている自転車、これも波戸岡さんの私物だそうである（笑）。