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ジャズ探訪記[特別編]KOBEjazz.jp 10周年記念×BLUE GIANTコラボ

vol.116
COTTON CLUB

東京の表玄関はいま、最前線のジャズが熱い!
@東京・丸の内

東京・丸の内周辺の洗練された風景は、ここが日本の首都なんだなぁ〜としみじみ実感させてくれる。レンガの東京駅は、ライトアップされると特に美しい。
その駅のほど近くに、本日ご紹介する『コットンクラブ』がある。
『コットンクラブ』といえば、往年のジャズファンならデューク・エリントンが活躍した1920年代の高級クラブやそれを題材にしたF・コッポラの映画を思い浮かべる方も多いのでは。ここ丸の内の『コットンクラブ』はそうしたゴージャスでオトナのイメージはそのままに、モダンなジャズクラブとして2005年にオープン。昨年10周年を迎えた。
フロントで名前を告げると、ウェイティングスペースを経て、スタッフさんが席までエスコートしてくれた。赤い絨毯と重厚なカーテン、ちょっとレトロな照明は、通路からワクワク感を盛り上げてくれる。案内されたのはステージから少し離れた、シャンデリアに照らされたボックス席。あのCotton Clubのロゴが真正面に見える特等席じゃないですか。わーいわーい。

こんなオシャレなジャズクラブに、いったいどんな人たちが聴きに来ているのかなとキョロキョロすると、なんだか若い人たちの姿が多いような。中にはいかにもジャズ研の学生同士がジャズ談義に花を咲かせている、といったグループも。へえ〜、これはちょっと意外だな。
その時、「すみませ〜ん!遅くなっちゃって」とやってきたのは、今や若いジャズファンを激増させている人気漫画『BLUE GIANT』の作者・石塚真一さん。『BLUE GIANT』は主人公・宮本 大(ミヤモト ダイ)が、世界一のジャズ・プレイヤーをめざす物語。現在はその海外編『BLUE GIANT SUPREME』を『ビッグコミック』に好評連載中。実はさっき仕事場でお目にかかってきたばかり。(インタビューはコチラ)先ほどはどうも〜。お待ちしておりました♫と、みんなで雑談しつつ、おいしい前菜にワインで喉を潤しているともう演奏が始まった。

今日はウォルフガング・ムースピール(g)+ラリー・グレナディア(b)+ブライアン・ブレイド(ds)というトリオ。
ゆったりした程よい広さの会場を満たす音は、まるで隣で奏でているかのような自然な響きだ。ギターとベースの一弦一弦の残響、ドラムのブラシがスネアに触れる微かな音までしっかり伝わってくる。ステージに近い観客は、ミュージシャンの手元を食い入るように見つめ、プレイヤーも終始テンションの高いパフォーマンスで応えている。
この迫力あるステージについて、セットの合間に『コットンクラブ』広報・上神彰子さんにお話をうかがってみた。
「演奏はもちろん、アーティストの要望に細かく対応できる技術を持ったPAは、お客さま、出演者すべての方に大変好評です。また約180席という広さは、特に今日のようなアコースティックなサウンドの臨場感を間近に体感できる理想的な環境といえます。アーティストの中には『コットンクラブで演奏するのがいちばん好き』とおっしゃってくださるかたも」と上神さん。そうそう、すべてがジャスト!といった気持ちよさなんですよね。
「近年はジャズだけでなく、ワールドミュージックをはじめ多ジャンルになってきました。姉妹店『ブルーノート東京』が座席数約280席以上で大御所のブッキング中心であることに対し、こちらでは海外での評価は高く、かつ日本ではそれほど知られていないといった若手ミュージシャンの出演にも力を注いでいます」。若いお客さまが多いのはそのせいかな。
「最近、世界の新しいジャズについて解説した本が20〜30代のファンの間で人気です。アンテナを張った感度の鋭いジャズに反応し、その本に掲載されているアーティストが出演するときは、若いお客さまがぐっと増える傾向にあります」と上神さん。な〜るほど、若い世代の新しい動きですか。期待しちゃいますね。
席に戻ると、ラリー・グレナディアの演奏を聴いて「うーん、やっぱりベースはジャズのキモ、なのかなぁ」と石塚さん。腕を組んでなにやら考えている様子。おっと、こちらももしや漫画に“新たな動き”か?!
どうやら『コットンクラブ』の伝統あるイメージは、若い世代にとっては“最前線”へのアイコンへと変貌しつつあるらしい。漫画の主人公・宮本 大のような、彗星のごとく現れた若きジャイアントが、あのステージで激しく吹きまくる日ももう遠くないに違いない。