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ジャズ探訪記[特別編]大学生が行く、初めてのジャズバー

vol.109
サテンドール神戸

今夜はオーディエンスで。エスコートはおまかせください!
@神戸・中山手通

さてさて、今日はちょっと変わった企画で。

ジャズをやってる大学生を、ジャズクラブへご案内…というものなのです。
しかもエスコートする先は、ジャズ探訪記第二回(ほとんど10年前になるんですね、いやあ早いものです)で訪ねた神戸・三宮の名店「サテンドール」さんというから、自ずと気合も入ろうというもの。
近くで落ち合った我々は、いよいよお店へと向かいます。
階段を上がると、その時の記憶がよみがえる。ゆったりとした店内、壁に飾られた、ミュージシャンのサインでいっぱいのパネル。居心地のよさそうなカウンター…。
なつかしい思いに包まれながらライブを待つことに。

今夜のゲストは増田(ましだ)奈都美さんと藤村陽(はる)さん。二人とも神戸大学のジャズの部活に所属、藤村さんがアルトサックス、増田さんがドラムということなんだけど、とても小柄な増田さんがドラムってのがとても意外です。ふたりとも吹奏楽の出身で、大学に入ってからジャズを始めたらしいのですが、それが今やスイングジャズクルーズ(神戸ハーバーランドを中心に、大規模野外ジャズイベントを運営する学生団体)の実行委員メンバーなのですねえ。

ライブのスタートを待ちながら、あれこれお話を聞いてみた。
そもそもなんで吹奏楽を始めたの?
増田さん「実は消去法なんです。運動もなんだか興味がわかないし、美術もねえ…って思ってたら吹奏楽があって。それ以来です」
藤村さん「とくに渡辺貞夫さんのファンだったんですね。部活については私も消去法といえば消去法なんです。バスケをやりたかったんですけど、バスケ部がなくて…。それ以外で毎日活動できる部活を探していたら、たまたま見つけたんです。父がとても音楽好きで、影響されたこともあると思います」
彼女たちにとって、このライブはどんな風に聴こえるんだろう…なんて思いながらステージ近くの席につきます。

料理にも定評のあるサテンドール、さっそく飲み物とピザ、そしてスモークサーモンをつまんでいると、いつのまにかライブのスタート時間になっている。

今夜のライブ、ボーカルは高橋リエさん、ピアノは宮下博行さん。
たった二人という編成は、大勢の部員が集まる大学の活動とはずいぶん雰囲気も違うはず。なによりサテンドールのようなお店でのライブは初めてらしい。ま、たしかにオトナな感じのお店ではありますよね。

宮下さんのソロ演奏が何曲か続き(深い左手の響きが印象的でした)、いよいよ高橋リエさんの登場。
あらかじめお願いしていたんだけれど、一曲目は増田さんのリクエスト”all of me”から。

ドラマーとしてはめずらしい選曲なんじゃない?
増田さん「以前、バイブラフォンで演奏したことがあるんです。とても好きな曲なんですよね」

二人とも真剣に聴き入っている様子。編成(?)の少なさももちろんだけど、
「ボーカルがフィーチャーされているライブというのはあまり経験がないんです。いつもはバンドで、インストでの演奏が多いですから」
ということらしい。
あー、そういえばそうかもねえ。スモールコンボの経験がないわけではないということだけど、たしかに大学の活動の中で女性ボーカルが入っていることは少ないかもしれない。「心も身体も、いっそ全部持って行ってくれたらよかったのに」、こんな歌詞はなかなか若いうちには歌いにくいものかな。

曲は進んで、今度は藤村さんのリクエスト”softly as in a morning sunrise”。僕もインストとしては知っていたけど、歌詞がついているなんて知らなかった。高橋さんもスマホで検索して歌詞を確認されたようで(笑)。なんで譜面台にスマホがあるんだろう?なんて思ってたけど、こういう理由だったのですね。便利な時代になったものです。
どうしてこの曲を?と聞くと、
「演奏していてとっても気持ちいいんです」と藤村さん。
ははあ、いかにも実際に演奏している人のセリフだなあ。

ライブのファーストステージが終わったあとに感想を聞くと、
「一曲一曲(の演奏時間)は短いけど、曲の紹介が丁寧で印象的でした〜。こんな意味の歌詞で…とか、タイトルにはこんな由来があって…とか。いつもの演奏ではなかなかできないんです。きょうのライブみたいに、そのへんを紹介してもらえたこともとても新鮮で楽しかったです!」

お腹もふくれ、心も満ち足りてサテンドールを出ると、春は名のみのまだ肌寒い夜。
今回はこのサイトでの企画という形だったけれども、ジャズの先輩にエスコートされたり、あるいは女子会的に仲間と一緒にこんなお店でお酒を飲んだり食事をしたり。いつか彼女たちにもそんな日が来るんだろうなあ…。

「ぜひまた来てみたいです!」
「こんなお店、素敵ですね、ゆったりジャズを楽しめて」
…なんて言いつつ帰路につく彼女たちを見送りながら、そんなことを思ったのでした。