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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.108
BornFree

聴くか食べるか。それがモンダイだ。
@神戸・岡本

阪急・岡本。
京都で学び、大阪で働いて神戸に住むというのが理想だとすれば、この辺りに暮らすのはある種の夢なのかもしれない。確かにしっとりとおちついた雰囲気はとても心地よいものだ。どちらかというとにぎやかな場所に、もっと言うならごちゃごちゃしたところに(笑)ジャズのお店が多いことを思うと、こんな街にライブが聴けるお店があることはちょっと意外かもしれないなあ。近くには創業40周年なんてレストランもあって、この街のゆったりした歴史が偲ばれる。

さて。
今回おじゃましたのはBornFreeというお店。
これを聞いて「野生のエルザ」を思い出した人も多いのでは。アンディ・ウィリアムスでしたねえ、たしか。
ジャズの名曲やプレイヤーの名前を冠したお店は多いけれども、こんな名前は珍しいですよね。自由、生まれながらにして自由。いかにも軽々と世界を超えていくようで気持ちいい。

オーナーは大塚淳子さん。
なんともおだやかで、眉間にシワなんか入ったことないんじゃないかというお人。お話をうかがうこちらもなんだかほんわかするような方でした。
お店を始めたきっかけをお聞きすると、ずっと音楽をやっていたお嬢さんの影響だとのこと。連れて行かれたライブでジャズを聴き、「あ、これ好き!」と思っていきなりお店を開いたというからすばらしい(笑)。「だから今でも何も知らないんです~。もし修行とかしてたらとても始められません」なんてのんきなことをおっしゃっている。

笑ったのは、CDショップに行った時に…というお話で。
「スマイルス・デイビスのが欲しいんです」と係りの人に聞いたのだとか。ハハハ、もちろんそれはマイルスのことで、探してはくれたらしいけど係りの人も困ったでしょうね。当時まだアルトサックスとテナーサックスの音の違いなんかもまったくわからなかったという大塚さんとしてはなんの不思議もないのでしょうけど。
ただ、なるほどと思ったのは、そんな大塚さん(私はシロートなので、とおっしゃるのだけど)だからこそわかることは、お客さんがその音楽を楽しんでいるかどうかということだ。

ま、それはそれとして…。
言い忘れていけないのは、こちらの料理のことである。
大塚さんご自身が料理好きなようで、なかなか手のかかったゴハンが食べられるのである。
お酒と乾きモノだけ…というお店も少なくない(もちろんそれはそれでかまわないのだけど)中、ちゃんとしたゴハンが食べられるのは嬉しい。
例えば「雪姫ポーク」を使った自家製のパテ・ド・カンパーニュ、ロールキャベツ、ピッツアにチーズたっぷりの焼きカレー(おお!)などなど。ワインもバン・ナチュール(自然派ワイン)を揃えられていて嬉しい限り。メニューそのものは変わるらしいのだけど、きちんと作られた料理がメニューに並んでいる。「ライブはともかく、ちょっとゴハン食べに行きたいなあ」なんて思っているのでありますよ、僕としては。
「フツーの、主婦の料理ですよ」とはおっしゃるのだけど、意外にそんなのが食べられないでしょ。ロールキャベツなんて、なかなかめんどくさいですよ、正直。

フツーでいいから、滋味溢れる、いい音楽を聴きたいじゃありませんか、ねえ?