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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.104
LIVE SPOT ARROW

伝説は遠きに非ず
@兵庫・武庫之荘

なんとなくどことなく、ゆったりした風の流れる街、武庫之荘。
駅前のロータリーもなんだかのんびりした感じで、さてちょっとジャズでも聴きながら…なんて気分にもなるのである。

今回お邪魔するのは「ライブスポット・アロー」、関西のジャズファン、特にビッグバンドジャズのファンならほとんどDNAレベルにまでその名前は刷り込まれているはず、あのアロージャズ・オーケストラの本拠地でもある。

シャープなデザインのビルには、たくさんのフライヤーが貼られている。ここを眺めているだけでも、じわじわとスィングする気分になってくる。
階段を昇るとすぐにドアがあり、そこを開けると歴史と伝説が迎え入れてくれるというわけだ。

店内はとても落ち着いた、豊かで清潔な空気に満ちている。
なんとも居心地のいい雰囲気なんですね。客席は100人でも入れるほどの広さ。ゆったりと音楽を楽しむには絶好といえる空間なのです。
迎えてくださってのは代表の毛田裕美さん。
ご挨拶をしている時に感じたのは、毛田さんの声の美しさ。へえ〜と思っていたら、ずっとアロージャズオーケストラ(以降AJOと略)のMCもされているのだとか。
なんでも、事務所前のちゃんこ屋さんで司会に大抜擢。ハッハッハ、今やファンクラブ事務局の代表のみならず、このライブスポットの代表にまでされてしまったということらしい。

ま、それはさておき(笑)。
僕などがいうまでもなく、AJOといえば関西ビッグバンドの雄、もはや生きる伝説ともいえるビッグバンド。数々のミュージシャンとの共演を見るだけでも、いかに重要なポジションにいるバンドかはすぐにわかる。枚挙に暇がないとはまさにこのこと、アニタ・オデイ、エラ・フィッツジェラルド、マレーネ・デイトリッヒ、ジミー・スミス、ディジー・ガレスピー。国内だって日野皓正、寺井尚子、坂本スミ子、大西ユカリ etc。決してジャズに詳しくはない僕だって知ってるアーティストだらけである。まさにジャズの歴史。毛田さんによると、アメリカでエラ・フィッツジェラルドの未発表音源が見つかり、そのバッキングを探したところ、なんとAJOだった…ってこともあったそうで。おお、まさにLIVING LEGEND!(その音源は限定販売されたそうである)。

お話をうかがっていて感じたのは今のジャズへの危機感なのである。今も昔も、ジャズは先鋭的な音楽ではある。しかし、その長い歴史を経た今、「懐かしい、思い出深い音楽」にもなっているのだ。音楽に限らず、アーティストと呼ばれる人々(自戒を込めて僕自身も)はついつい「自分の表現」に走りがちである。でもファンが聴きたいのは「好きな音楽」「楽しい音楽」なのだ。それは古い古いスィングかもしれない、歌モノかもしれない。ひょっとするとアドリブなんてどうでもいいのかもしれない。

多くのジャズファンはワイン好きに似てる…というのは僕の持論だけど。なにかと「⚪︎⚪︎はよくわからないけど」って枕詞がつくわけですよ、しばしば。でもわからなくたっていいんです!好きか嫌いか、美味しいか美味しくないか、それだけで十分。
だから僕たち「聴く側」のジャズファンも、もっと好みを言っていいんですよね。「ジャズはよくわからないけど…」なんてありがたく聴いているばかりじゃいけません。その意味でも毛田さんは意欲的で、ジャズに限らず、たくさんの魅力的な音楽を紹介できるよういろんな企画を計画中らしい。

その中の一つが、10月12日に予定されている「オール グレンミラープログラム」(!)、そして16日には「橋口俊宏FIRST LIVE」こちらはディズニーナンバーまで演奏されるらしい(詳しくはホームページでご確認を)。
長い歴史を歩んできたAJOの本拠地、しかしながらこんな意欲的な試みもされているわけです。その姿勢こそがジャズなんじゃなかろうか、なんて思った武庫之荘の午後でした。

そう、美味しいお酒と料理とともに、僕たちが「また聴きたくなる音楽」を。ぜひこの空間で!