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ジャズピープル

クラシックとジャズの融合
チェロでジャズを
アルコウ 佐野まゆみさん

2013年にピアノ岸淑香(きしさやか)さん、チェロ佐野まゆみさんのデュオで活動を開始した”アルコウ”。 ジャズの道を歩んで来たピアニスト岸さんとクラシックの道を歩んで来たチェリスト佐野さんとの二人が奏でるサウンドはジャズでもあり、クラシックでもある新しいカタチ。これからの活躍が楽しみなお二人です。今回は、神戸でのライブを控え、神戸出身でチェリストの佐野さんに、ご自身のことやアルコウ結成の経緯、これからのことなどを語っていただきました。

person

アルコウ

ピアノ岸淑香(きしさやか)、チェロ佐野まゆみ、からなるアコースティックデュオ。2013年からデュオライブを重ね、2015年5月「アルコウ」結成。クラシックを学び、ボーカリストやポップスのサポートにも定評のある佐野。エレクトーン出身ながらジャズを始め、多ジャンルで活動するピアニスト岸。ピアノとチェロというクラシックな編成でありながら、奏でる楽曲は感情をえぐるようなものからディープな世界に浸るものまで多種多様に表現している。宛らクラシックでありフリージャズ。互いのオリジナルを中心に、ジャンルを問わない名曲スタンダードのアレンジもデュオならではの演奏でステージを盛り上げる。ユニット名の「アルコウ」は、弓で弾くarcoと、一緒に「歩こう」の2つの意味を掛けている。2015年オリジナル曲7曲のみを収録した1st デモCD「出会い」発売。2017年2月15日 1st Full Album「Asymmetry」全国発売。東京近郊から、関西へのレコ発ツアーも控えますます精力的に演奏活動を行なっている。



チェリスト 佐野まゆみ

神戸出身。クラシックの演奏会などの活動を続けながら、ジャンルレスをモットーに様々なジャンルや編成のライブ活動、ライブサポートに重点をおいている。他に、様々なレコーディング、ツアーサポート、イベント、音楽番組のバック演奏やpv出演など、多岐に渡る活動を行っている。チェロを今までに上塚憲一、勝田聰一各氏に師事。アルコウのチェロを担当。

interview

ハンドボールからチェロの世界へ。

── チェロ奏者としてご活躍されていますが、チェロを始めたきっかけを教えていただけますか。

佐野「私はチェロを始めたのが遅くて。楽器を始めたのは高校からなんです。中学3年生までハンドボールをやってまして、学校も強いクラブでした。その時は青春の全てをクラブに捧げていました。引退してから行きたい高校は決まっていましたので、勉強以外にすることがなくなってしまいまして。ただ、何かをやりたいというエネルギーに溢れる年ごろですよね。それで、元々弦楽器に興味があったので楽器を始めたいなと。伯父が壊れたバイオリンを持っていたので、それを修理して使うかと勧められたんです。それでバイオリンを始めようとしたところ、父親が知り合いに、"中学3年生でバイオリンを始めても遅い”と助言されたそうで、”チェロだと小さい頃から始める人はいないから、まだ間に合うんじゃないか”とその一言でチェロを始めることにしました。」

── 本格的に始めるのは高校からですか?ただ、チェロができる場所は限られているように思います。

佐野「実は高校に、弦楽部があったのです。もちろん入部したのですが、1年で辞めてしまいました。ただ、チェロは好きだったので辞めても先生にはずっと習っていました。途中から音楽大学を目指し始めたので、学校が終わればすぐ自宅に帰って練習していましたね。でも高校3年生の時、自分の望んだ音楽の学校には合格しなかったので、1年間武者修行をしました(笑)。親はとても反対しましたけど。」

── 中学でスポーツをされていたのに、高校でスポーツやることは考えなかったのですか?

佐野「バスケットボールをやりたかったんですけど、チェロをやることが前提にあったので、手をケガするわけにはいかないと思い、断念しました。」

── 高校からチェロを始めて、音楽大学を目指すことは勇気がいることではないですか?

佐野「始めたからには、行けるところまで行こうと思ってましたね。チェロ自体が安い楽器ではないので、趣味でやるにはもったいないですよね。あと、後先考えず、目の前のことに精一杯になる年代でしたから。大学も、親に“浪人してまで音楽大学へ行くなら東京の学校に行きなさい ”と言われたので、東京の大学を選びました。今、親に聞くと、“そんなことを言った覚えはない“と言いますね(笑)。ただ、音楽家としてやっていく上で、東京で活動した方が、仕事もたくさんあるだろうと思ったのだと思います。」

── 大学を卒業された後は、どんな活動をしていたのですか?

佐野「パーティ演奏やアマチュアオーケストラのサポートなどをやっていましたが、ほかにも色々チャレンジしながら、仕事の幅を広げていっているという感じですね。もちろん、クラシックを辞めたわけではないので、今も時々演奏しています。やはりクラシックは自分のルーツでもありますからね。」

きっかけはジャズピアニスト岸淑香との出会い

── ジャズをやろうというきっかけは?

佐野「一番のきっかけはアルコウで一緒にやっている岸さんに出会ったことですね。彼女は元々エレクトーンをやっていて、ジャズピアニストになった方です。私とは歩んで来た道が全く違ったのでとても新鮮な出会いでした。色々なことを教えてもらい、色々な場所に呼んでもらい、あとは性格的なところも合ったので、一緒にやることになりました。」

── 岸さんとはどういう形で一緒にやることになったのですか?

佐野「知り合いのイベントに呼ばれた時、初めて会いました。その時は、そのイベントに出演しているみんなで演奏する曲を一緒にやったのですが、“すごいピアノを弾く人がいるなぁ”というのが最初の感想でした。そこで”仲良くなりたい!“と思って、演奏終わったあとに声をかけて、話をしたり、一緒にお酒を飲んだりしたのが最初ですね。そこから半年くらい経って、彼女がある仕事に呼んでくれたんです。」

── じゃあ、岸さんも佐野さんのことを気にされていたんですか?

佐野「実はそうではなく、別にお願いしていたチェリストが急遽参加できなくて。チェリストって大勢いるわけではなすし、私もクラシックではないところの活動を始めていましたので、そこで私に白羽の矢が立ったみたいですね。」

── ところでジャズでチェロって珍しいですよね。

佐野「数人知っている人もいますが、他の楽器に比べると少ないですね。ただ、クラシックの世界ではピアノとチェロっていうのは当たり前にある組み合わせなんですね。チェロのソロにしても伴奏にピアノがあったりしますので。」

── 2013年からお二人でデュオの活動を始めていますね。

佐野「そうですね。当初は岸淑香・佐野まゆみデュオで活動していましたが、2015年にデモCDを制作したこととお客さんに名前が長いと指摘され、”アルコウ”という名前で活動するようになりました。最初のデモCDはライブハウスを借りて、そこで一発録音したものですね。それを手刷りしていました。」

── デュオ名のアルコウ(歩こう/arco:弓で弾く を掛けた)というのは素敵な名前ですね。

佐野「ありがとうございます。弾(はじ)くのは”ピチカート”っていいますよね。弓で弾(ひ)くことはarcoです。クラシックだと弓で弾くのが基本ですが、”ピチカート”の後に、弓で弾くところに戻る譜面には”arco”と書いてあります。それと”歩こう”というのを掛けて名前にしました。ちなみにアクセントは”ア”で、”歩こう”のように”コ“のアクセントではないんです。」

クラシックとジャズの両方を楽しんでもらいたい

── アルバムの楽曲はお二人で作曲するのですか?

佐野「そうですね。二人でそれぞれ作曲しています。私もジャズはまだまだ勉強中ですし、チェロでジャズをやっている人も少ないので、何ができるだろうかといつも考えています。私の作る曲はどちらかというとクラシック寄りだったり、彼女が作る曲はジャズだったりと違う要素がありますね。チェロという楽器はベースにもなるし、メロディーも奏でられます。そういう強みはあるものの、その時その時の空気を読みながら、演奏するのは難しいですね。」

── 2017年2月に発売されたアルバムについて聞かせてください。

佐野「アルバムに収録している曲からアルバム名を決めました。Asymmetryは”非対称“という意味以外に”不安定”という意味があります。自分自身が少し”不安定”な時期があって、その頃に作った楽曲です。アルバム自体は二人でどんな曲を入れるかを話し合って制作しました。私たちの曲は1曲が長く、ディープな世界観を表現しているので、長く聴くと疲れてしまうんじゃないかと。なので、何曲入れるかをまず話し合いました。あと、収録した曲はこれまでライブで演奏してきたもので、新たに書き下ろしたものではないです。レコーディングは基本一発録りでしたね。」

── アルバムで聴いてほしいところはありますか?

佐野「私たちデュオはリズムを刻む人がいないのですが、先ほども話た通り、バイオリンでもなければベースでもない。チェロはどちらもできる存在です。なので、岸さんがリズムを刻む時もあれば私がリズムを刻むこともあります。ピアノもチェロもどちらも楽しんでもらえると思います。また、チェロならではのディープな世界観を楽しんでもらえればと思います。あとはクラシックで歩んで来た私とジャズの道を歩んで来た岸さんとの組み合わせも楽しんでもらえればと思います。」

地元神戸への凱旋


── 今年は神戸でのライブ活動をされたとお聞きしましたが。

佐野「2017年はアルバム発売を記念して、神戸北野工房のまちやグリーンドルフィンでライブをやりました。そのほかにバースデーライブとしてクレオールでライブもしました。この後1月でも神戸の旧グッゲンハイム邸でライブをやります。」

── 2017年はアルバムも出されて、色々と忙しかったのではないですか?

佐野「今年を振り返るとアルバムを出して、関西で初めてライブして。名古屋も静岡も札幌にも行きましたね。ライブペインティングのイベントもやりました。」

── ところで旧グッゲンハイム邸は海が見えて、建物も素敵なところですよね。

佐野「私たちもライブハウスじゃないところで演奏する方が合うんじゃないかと。ですので、東京でも美術館でやったり、あとマイクを使わずアコースティックでやることも私たちが好きな演奏スタイルです。今回の旧グッゲンハイム邸は、アルコウに合うんじゃないかと勧めてもらって。あとはとても素敵な場所が気に入っています。」

── 確かに旧グッゲンハイム邸と”アルコウ”は合いそうですね。今回はゲストの参加がありますが。

「今回は私の高校の時の同級生でクラシックで声楽をやっている友達の山守美由紀さんがゲストで参加してくれます。以前にバースデーライブの時に一緒にやって、とてもよかったというのもありましたね。あとは、よく一緒に演奏するパーカッションのスズキトモヒサさんを含め4人でやります。」

── ライブへのこだわりはありますか?

佐野「音楽を聴いてもらいたいので、あの手この手を使うようなことはしないですね。ですので敢えて目立たないように衣装は黒で揃えるようにしています。パフォーマンスで派手なことをすることもないです。ただMCは岸さんと楽しく掛け合ったりしますよ。どちらも関西気質でオシャベリなところもあるので、そこも楽しんでもらえたらと思います。」

── 最後に、今後やりたいことは何でしょうか?

佐野「都内での活動が中心なので、いろんなところに行きたいですね。あとは、また新しいアルバムを作りたいですね。二人の世界観は維持しつつ、いろんな人とのコラボなんかもやっていきたいですね。」

今後の活動がとても楽しみなお二人ですね。1月20日の神戸でのライブがとても楽しみです。お忙しいところありがとうございました。

information

[ RECCOMEND MOVIE ]

アルコウ「天つ風」 2017.2.11 求道会館


ピアノ 岸淑香 チェロ 佐野まゆみ アルコウ「MV2016」



[ Live Information ]

日時:2018年1月20日(土)open / 14:00 start / 14:30〜2stage
場所:神戸 旧グッゲンハイム邸(兵庫県神戸市垂水区塩屋町3丁目5−17) http://www.nedogu.com/
料金:¥3000
出演:アルコウ、ゲスト:スズキトモヒサ(perc)、山守美由紀(voice)
問合せ:mail:arcou.pf.vc@gmail.com/web:https://arcou.jimdo.com/

公演日:2018年1月21日(日)open / 12:00 start / 13:00〜, 14:15〜
会場:大阪STAR LIVE U6(大阪市天王寺区上本町6-3-31-302)http://starliveu6.wixsite.com/u6-hp
料金:¥2,700
出演:アルコウ、ゲスト:スズキトモヒサ(perc)、藤田剛充(vo)
問合せ:mail:arcou.pf.vc@gmail.com/web:https://arcou.jimdo.com/

公演日:2018年1月23日(火)open / 18:30 start / 19:00〜2ステージ
会場:京都Bonds Rosary(京都府京都市東山区廿一軒町236 鴨東ビル3F)https://bondsrosary.com/
料金:¥3000
出演:アルコウ、ゲスト:丹精(タップ)
問合せ:mail arcou.pf.vc@gmail.com/web https://arcou.jimdo.com/



[ Release ]

1st Album「Asymmetry」
1.Asymmetry
もがいてももがいても前にも後ろにも進めない、そんな不安定な心の叫びみたいなものを曲にしました。今回のアルバムタイトルにもなっています。アシンメトリーだから見える世界というものがあると思います。(佐野)

2.G線上のアリア
J.S.バッハ作曲の有名なクラシックの「G線上のアリア」をブルース風にアレンジしました。元の曲は「管弦楽組曲第3番二長調BWV1068」より「アリア」です。(佐野)

3.背中
今まで自分が歩んできた人生の後ろには、自分が選ばなかった道がたくさんある。いつも前を向いていたいけれど、背中にはそんな選ばなかった物や事がたくさんあるという事。そしてそんな背中にある選ばなかった方の目線で書きました。(佐野)

4.空のアオ
夏の青空が大好きなのですが、夏のカンカン照りの空の下では、暑すぎて悩み事も吹き飛んだりしますよね。そんな「もういいやーっ」という瞬間を音にしてみました。(佐野)

5.時のハザマ
とある打ち合わせで入ったお店。いきなりその幻想的な内装の店内に圧倒され、帰り道に急いでこの曲を書きました。今回はなんとジャケットの写真や他の写真でも使われているのがこのお店です。(岸)(普段は露出NGのお店ですので、このお話をして特別に許諾していただきました。)

6.六月のうたうたい
真夜中、外は雨が激しく降っていて叫びたい事も雨がかき消してくれるのではないか、そんな想いを込めた一曲です。ピアノで創ったメロディですが、チェロが本当に良く合います。(岸)

7.あいにゆこう
亡くなってしまった友人の仔猫が、もしかしてたまに天国から遭いに来てくれているのではないか?というメルヘンな想いを託した、仔猫目線のドラマチックな曲です。(岸)

8.忘らるる
右近の百人一首の句より引用した、叙情的な雰囲気の曲です。実はむかーし好きになった人が忘られない、というメッセージも込められています。(岸)

9.up to you -アルコウver.-
何をするにもあなた次第!up to you=自分 でもあります。2014年に出した私のCD「feat.手」にも収録されている曲ですが別バージョンの録音です。(岸)

10.Restart
ある年の地元神戸のコンクリートジャングルで見た元旦の夕日を見て、また新たに1年間頑張ろうと思って書いた曲です。(佐野)

11.天つ風
とにかくチェロという楽器の持つ重低音の魅力を激しく放つ曲が書きたくて、私がバックグラウンドのピアノを、メロディのチェロを相方が、共作しました。ユニットとしては新境地になる一曲に仕上がったと思います。(岸)

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