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ジャズピープル

縛られない、自然体なピアニスト。ピアニスト・丈青さん。

SOIL&"PIMP"SESSIONSのキーボードディストであり、ピアノトリオJ.A.Mのリーダーでもあるピアニストの丈青さん。J.A.Mのニューアルバム「Silent Notes」をリリースする目前の4月に右手薬指を負傷。約1か月の休養を経て、活動を再開。7月にはSOIL&"PIMP"SESSIONS名義でテレビドラマ「ハロー張りネズミ」の劇伴、野田洋次郎さんとコラボした主題歌「ユメマカセ」が話題になりました。今回はJ.A.Mの「Silent Notes」ツアーで大阪・ミスターケリーズでライブをされる丈青さんにお話をうかがいました。

person

丈青

1975年生まれ、広島県出身。3歳からピアノにふれクラシックを学ぶ。同時にブラックミュージックをはじめとする多岐にわたる音楽に親しみ、その語法を独学で習得。「鈴木勲OMA SOUND」への参加を期にジャズシーンに広くその名が知れ渡り、日野皓正や菊地成孔、José JamesやJamie Cullumとも共演を重ねる。2003年にはSOIL&“PIMP SESSIONSに加入、ビクターエンタテイメントからメジャーデビューを果たし、多くのメジャーアーティストと共演しCDをリリース。SOIL&“PIMP”SESSIONS にてMontreux Jazz FestivalやGlastonbury Festival などに出演、世界進出を果たしその後毎年世界各地で公演を行う。2007年には同バンドから派生したピアノトリオJ.A.M を結成。

interview

J.A.Mの新譜にSOILの活動、復帰してからも忙しい日々。


── 4月にケガされた右手はもう大丈夫ですか?

丈青「はい、もうだいぶ良くなりました。伸筋腱断裂、化膿性腱鞘炎ということで、どうやら僕は100人に一人の割合でいるらしい細菌に弱い体質だったみたいで、それでちょっと大変なことになっちゃったんですけど。まだ完治しきったわけではないですが、もう弾いても支障のないくらいまでは回復しました。」

── 本当に良かったです。弾けない間やリハビリは大変でしたよね。

丈青「そうですね。それまで一週間とか弾かない時期はありましたが、1か月まるまるピアノを触らないという経験はなかったので、すごく長く感じましたね。ずっとギブス状態だったということもあって、その間はどうなるか分からなくて不安でしたね。」

── ツアーも再開されてほっとしました。大阪にはよく来られていますが、神戸にいらしたことはありますか?

丈青「大阪では定期的にライブをやっていますが、神戸でライブをする機会はあまりないですね。でも母(ジャズボーカリスト・佐藤いよりさん)が震災前の神戸ジャズストリートに参加していて、よくついて行ったりしたので、わりと昔から馴染みのある街です。地元は広島なので近いですし、高校生の頃には三宮に遊びに行ったりとかもしましたね。オシャレな街という印象と、あとちょっとガラの悪いイメージもありますね(笑)。」

── そのイメージは是非払拭したいですね(笑)。また神戸にも演奏しにいらしてください。直近の活動の話というと、やはりSOILでのドラマ「ハロー張りネズミ」の劇伴と主題歌になるのですが、野田洋次郎さんとはどういう経緯でご一緒することになったのでしょうか。

丈青「タブゾンビがスペースシャワーで番組をやってたときにRADWIMPSがゲストで来たことがあるくらいで、元々何かつながりがあったわけではないんですよ。イベントとかでも不思議とあまり被ったことがなくて。SOILはもともと劇伴だけって聞いてたんですが、そこから主題歌どうしようってなったときに監督が『野田くんはどうだろう』というので今回コラボレーションするに至った感じですね。」

── 個人的にはあのSOIL&"PIMP"SESSIONSとあの野田洋次郎さんが!という感じで衝撃的でした。一緒にやってみた感想はいかがでしょうか。

丈青「野田くん本人も楽しんでコラボレーションしてくれたのが一番良いことですね。リリックとかもいい感じにハマってると思いますし、野田くんの新しい面も出せていると思いますし、僕らにとってもすごく楽しくお仕事できましたね。」

── 丈青さんはSOILやJ.A.M、そのほかにも多岐にわたってご活躍されていますが、ご自身で活動するうえで気持ちの住み分けなどはありますか?

丈青「うーん、単純に面子が違うので。たとえばSOILにはリーダーがいないということになってるけど、J.A.Mだと僕がリーダーなのでわかりやすく違いますよね。J.A.Mだとほとんど僕が曲を書いていますし、自然な感じで住み分けできています。なので、あんまり意識したことはないですね。」

日本人のピアノトリオだからこその音楽、ニューアルバム「Silent Notes」について。


── 5月にリリースされたJ.A.Mの「Silent Notes」はアルバムにコンセプトはありますか?

丈青「うーん、コンセプトは特にないですけど、僕がほとんど曲を書いているので、どうしても僕の色になっちゃうのはありますね。J.A.Mだと日本人ミュージシャンのピアノトリオだからこその音楽というのは結構大事にしていますけど。」

── 丈青さんは海外のミュージシャンとも数多くセッションされていますが、やっぱり違いますか?

丈青「全然違いますね。もちろん欧米のミュージシャンも大好きだし、一緒にやるとめちゃくちゃすごいところまでいけるんですけど。でも結局、みんな同じ人種でやるようになるんですよね。日本人同士っていうだけでなく、黒人だけで、白人だけで、みたいな。やっぱり共有している文化や環境が大きいんじゃないでしょうか。」

── アルバムのために短期間で作る人やセッションで作るなど、作曲にもいろいろあると思いますが、今回の「Silent Notes」はどういう感じで曲作りをされましたか?

丈青「僕は楽器をあんまり使わずに譜面に書くタイプですね。頭のなかにあるものを譜面にしちゃう。それで終わっちゃいますね。だから実際に演奏せずに曲ができてることも多々あります。もちろん弾いてるときに思い浮かぶこともありますけど。今回の『Silent Notes』に入ってる曲はいろんな時期のものが含まれてます。J.A.Mのアルバムは5年ぶりなので、その間に書き溜めていたものからアルバムのカラーに合う曲を選ぶという感じですね。カラーに合わなければいい曲でも外しちゃうので、ストックもまだまだいろいろあります。」

── J.A.Mのライブは本当にスリリングですよね。観客としては緊張感があってすごく良かったのですが、プレイしてる側としてはいかがですか?

丈青「緊張感というのは、お客さんに対してマナーとして常に持つべきものだとは思っています。ただ、演奏する上で僕はあんまり緊張とかする方ではないですけど。やっぱり、グルーヴしてみんなに届ける音楽っていうのは一歩先が決まってないのがいい。ハービー・ハンコックがL.Aでやってるのを聴いてたんだけど、カメレオンという2コードのシンプルな曲で、一歩先がまったく決まってないけれど、餅つきみたいな感じで、ハービーがどう打っても周りがシュッと拾っちゃうんです。それが良かった。やっぱり音楽って相当の様式美が付随してない限り、予定調和だとつまらない。もっとリズムのロジックって複雑だし、一歩先が決まっていない緊張感が楽しい。こうやってやろうって狙ったものじゃなくて、自然と、なんの気負いもなくリラックスした状態でそうできるのが一番いいなと思いますし、皆さんにもそこを楽しんでもらいたいと思います。」

「一番いい状態でお客さんに聴いて欲しい」、ライブハウスや楽器に対するこだわり。


── アルバムももちろん素晴らしいですが、やっぱりライブが一番楽しいなと思いました。

丈青「やっぱり一番贅沢ですよね。職人のおじさんの店で、これが一番美味しいからっていう状態で食べてるみたいな感じ。やっぱりそれは産地直送とはいえクール宅急便で自宅で食べるとちょっと変わっちゃうんですよね。例え的にはそんな感じですよね、CDとライブって。同じように作ってるんですけど。」

── 大阪でのライブはミスターケリーズが多いですよね。

丈青「そうですね、ミスターケリーズは最高のジャズクラブのひとつだと思います。NYから来るベテランの方でもここがいいっていう人も結構いますし。何故ならやっぱりやりやすいからです。キャパシティだけじゃなくて、楽器の調整ひとつとってもちゃんとした調律師さんが入っているし、設計上でも音の環境が整っているというリテラシーの高さ。トッププレイヤーたちが場所を選ぶ基準はそういうところです。東京ならここ、ロンドンならここ、というお店が必ずあって、大阪ならミスターケリーズ、という感じで。みんなにいい音で聴いてもらえる場所があるというのはいいです。」

── 特に楽器を持ち運べないピアニストにとっては場所って大事ですよね。

丈青「まあ、いいキーボードがあればその限りではないですが、当然お客さんに変な演奏を聴かせるわけにはいかないので、個体の選定というのは可能な限りしますね。理想をいえば、調律師のレベルが高ければ高い方がいいし、生ピアノもスタインウェイの方がいいというのはありますが、そのへんは自分がツアーをするときはできるだけしっかり現地に行くまでにやれることはやります。ただまあ、いろんな国に行ったりするので、時にはとんでもないことが起こったりすることはありますよね(笑)。それはもう次行くときまでには直しといてね、というしかないですけど。」

── 最後になりますが、今後のご活動の予定を教えてください。

丈青「J.A.Mとしては新しい作品を作ったばかりなので、しばらくは自分がやりたい個人的な活動もしたいし、SOILも忙しい時期なので、だいたいそんな感じですかね。周りの素晴らしいプレイヤーたちともやりたいプロジェクトもいくつかありますし、まずはそのへんを優先したいなと。J.A.Mはいつもそうなんですけど、いついつにリリースしようというよりかは、いい感じに人生の空白ができたときに、お、やろうか、という感じで。なので、またそういうタイミングで次の作品も皆さんに聴いていただければと思います。」

── これからのご活躍も楽しみにしています!本日はどうもありがとうございました。

information

[ LIVE ]

東阪ワンマンライブ「晩秋のハリネズミ」/SOIL&"PIMP"SESSIONS
2017-12-08
会場:BIG CAT(大阪府)開場18:15開演19:00INFO.夢番地 06-6341-3525
special guest:長岡亮介(ペトロールズ)
TICKET:
STANDING 前売 ¥4,000(D代別)
前方指定席 前売 ¥5,000(D代別)
※前方指定席→SOLDOUT!


[ リリース ]

Silent Notes/J.A.M
国内のみならず海外でも高い人気を博しているSOIL&"PIMP"SESSIONSのピアノの丈青をリーダーに、ベースの秋田ゴールドマン、ドラムのみどりんを加えた3人によるピアノ・トリオ、J.A.Mの約5年振りの4thアルバム。静謐でアグレッシブ、美しい旋律と包容力あるサウンドで今の最新型のジャズを体現。ジャズのみならず、ブラックミュージック、クラブミュージック、ロック、エレクトロなど、同時代的音楽としてリスナーに提案する意欲作。ゲストにフラメンコギターの沖仁を迎えた「Alone」(M-11)、Grey Reverend名義の作品でNinja Tuneより作品をリリースしているUSのシンガーソングラターL.D. Brownを迎えた「Book of Love」(M-4)など、コラボレーション作品も必聴。

<収録曲>
01:Manchester
02:Dancer on the Black Keys
03:Alternative War
04:Book of Love feat. L.D. Brown
05:Bell
06:Apple's Waltz
07:Transitory
08:Serendipity
09:Foundation
10:Totally Disorder
11:Alone feat.Jin Oki

発売日:2017.05.24・¥2,800+税
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A021569/VICL-64799.html  


真夜中のハリネズミ Music from and inspired by ハロー張りネズミ/SOIL&"PIMP"SESSIONS
TBS系 金曜ドラマ『ハロー張りネズミ』のオリジナル・サウンドトラック。インストバンドのソイルが音楽全般を手掛けたサウンドトラックだけに、統一感あるサウンドとバンドの空気感が色濃く漂うアルバム作品。オープニングのタイトルバックで使用されているソイルらしいメインテーマ『ハロー張りネズミのテーマ』<M1>、パーカッションが繰り出すアフロビートを主体としたファンキーな『人生』<M2>、気だるい夏の夜に似合うメロウでスウィンギーな 『Under TheRed Mound』<M-4>、フリージャズにアプローチした『Feel Nothin'』<M-9>、ポストロックとジャズが融合した静謐なサウンドの「Magnetic」<M-11>、図太いビートでファンクネス感溢れる 「The Man FromA.K.T.K.」<M-12>他、ジャズを基軸としながらも、ヒップホップ、ファンク、ロックなど多様なジャンルを縦横無尽に横断、昇華した楽曲達が大集結!遊び心満載のバンドの今を体現したアルバム!

<収録曲>
01:ハロー張りネズミのテーマ
02:人生
03:Blow Up
04:Under The Red Mound
05:Great Buddha
06:Reasoning
07:この静寂の中で
08:Puzzle
09:On The Lotus
10:Feel Nothin’
11:Soilent Remedy
12:Magnetic
13:The Man From A.K.T.K.
14:Rambling Pass
15:Blue Sky
16:Love Step
17:ハロー張りネズミのテーマ (グッドナイト・ハリネズミ ver.)
18:All Over Again
19:ハロー張りネズミのテーマ (真っ昼間のハリネズミ ver.)

発売日:2017.08.23・¥2,500+税
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A018653/VEATP-34550.html