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ジャズピープル

ポップスのなかに自然に息づくジャズの音。

 7月12日に3枚目のアルバムとなる「世界はここにしかないって上手に言って」をリリースしたものんくる。日本語ポップスとジャズが融合した独自のスタイルで、結成以来人気を集めています。これまでジャズバンド編成だったスタイルを一新して、斉藤ネコさんや大儀見元さん、黒田卓也さんなど、多数のジャズミュージシャンをゲストに作り上げた最新アルバムは、ポップな中にも自然と息づくジャズの音色が心地良い一枚となっています。今回は多彩な表現力を持ったボーカル・吉田沙良さんと作詞・作編曲も務めるベースの角田隆太さんのお二人にお話をおうかがいしました。

person

ものんくる

日本語ポップス×ジャズの新感覚ユニット「ものんくる」。 元々ジャズミュージシャンとして活動していた吉田沙良(ボーカル)と角田隆太(作詞/作編曲/ベース)により2011年結成。 2013年菊地成孔プロデュースのもと1stアルバム『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』、2014年『南へ』をリリース。 17年発売の3rdアルバム『世界はここにしかないって上手に言って』がiTunes、AppleMusic,Spotifyなど各配信チャートジャズ部門1位を獲得。 オリコンウィークリーチャート初登場70位ながら、洗練されたポップセンスの中にジャズのエッセンスが光るサウンドが大きな注目を集めた。 確かな演奏力に裏付けされたハイクオリティかつハイテンションなライブでFUJI ROCK FESTIVAL’15などロックフェスから、BlueNoteJapan主催JAZZ AUDITORIAなどジャズフェスまで全ジャンル対応でボーダレスに駆け巡る活動スタイルは今後一層目が離せなくなるだろう。




interview

「ジャズとしてもポップスとしても楽しめる音楽にしたい」。ものんくるの音楽性。



── 7月12日に発売された3rdアルバム「世界はここにしかないって上手に言って」。ポップスの中に自然とジャズが溶け込んでるような印象で、どんな人でも心地よく聴ける音楽だと思いました。

角田「あ、すごく嬉しいです。歌モノなんだけど、インストというかジャズが好きな人にも届くようにしたいし、ジャズなんて知らないっていうお客さんにもちゃんと届くものにしたいなと前作からずっと思ってて。今作でようやくひとつの形になったかなと思ってたので」

── お二人ともベースはジャズなんですよね。角田さんはビッグバンドのご出身だとか。

角田「そうです。明治大学BSSOで、山野ビッグバンドジャズコンテストにも出てました。大学卒業後ものんくるを組んで、すぐCDを出すことになって、モーションブルーヨコハマでのレコ発ワンマンがご縁で菊地成孔さんにプロデュースでアルバムを出すことになり、という出だしでしたね。」

── 吉田さんも学生の頃からジャズ・ボーカルをやられてたんですよね。

吉田「そうですね、高校から音楽学校でクラシックの基礎を学んで、ちゃんと歌を歌える人になろうって、小さいころから考えてました。」

── それはすごいですね。じゃあ高校は声楽だったんですね。

吉田「そうです。高校は桐朋学園の声楽科に通って、大学は洗足大学のジャズ・ボーカル科に進みました。それで在学中からジャズ・ボーカリストとして活動してる中の一つとして、ものんくるの活動があったんですけど、ものんくるを始めて一年経たないうちに『もうこれが一番楽しいよね!』って流れになって、自然とシフトしていった感じです。ジャズ・ボーカルとしてのセッションライブを徐々に減らしていってものんくるに絞るようになって」

── なるほど。ということは、今はもうジャズ・ボーカルとしての活動はされてないんですか?

吉田「桑原あいちゃん(ピアニスト)とのデュオやトリオに参加させてもらったりはしていますが、今はもう殆どやってないですね。その他の様々なアーティストのライブに参加する時も”ジャズ・ボーカリスト”ではなく”ものんくるの吉田沙良”として呼んでもらう事が殆どなので、どうしてもスタンダードなジャズを歌う機会は減っています。」

── じゃあ本当にお二人ともジャズがベースにあるんですね。

角田「ですね」

吉田「大きいですよね。考え方の基本もジャズだし」

角田「うん。なので意識して選んでないのに気づけばサポートメンバーもジャズを通ってきた人にお願いしてることが多いです」

吉田「そういう人の方が音楽面でのコミュニケーションが取りやすいというかね(笑)。会話が音楽でできるというか。自分たちのベースにジャズがあるから、違うところを見てるはずなんだけど、自然とそうなっちゃうんですよね」

「ここを入口に音楽の世界が広がれば嬉しい」。今作で目指した音楽のかたち。


── 今回のアルバムは特にすごいメンバーが揃っていますよね。菊地成孔さんがプロデュースされていますが、参加アーティストの方々はどんな感じで選ばれたんですか?

吉田「菊地さんには大きな枠組みでのプロデュースをしていただいたという感じで、音楽性はやっぱりものんくるのしたいことを大事にしようということで、菊地さんが楽曲にメスを入れたりとかっていうのはなかったよね」

角田「そうだね。編曲も全部自分たちだしね。今回菊地さんにプロデュースに入ってもらって大きく変わったことは、ものんくるはユニットと言いながら毎回ライブのサポートメンバーは、ほぼほぼ固定でバンドサウンドに近かったんですけど、それは一旦やめにして、それぞれの曲に合わせていろんなミュージシャンを呼ぶスタイルでレコーディングしたことですね。」

吉田「実際の人選は私たちがこの人どうでしょうって提案する感じで、パーカッションの大儀見元さん、ドラムのFUYUさんは菊地さんのリクエストだったけど他のメンバーは私たちが集めました。」

── 確かに皆さんジャズ・ミュージシャンばかりですね。

角田「その中でも特に楽曲にジャズの存在感を焼き付けてくれて嬉しかったのが黒田卓也さんで。卓也さんは飲みの席で以前から「俺はものんくるBチームやから。」と冗談で言ってくれてたので今回『Aチームに入って録音してください!』とお願いして実現しました(笑)」

── 今回のアルバムは前作から3年ぶりとなります。前作はもっとジャズ要素が色濃かったんですよね。

角田「出演していたライブハウスも所謂ジャズクラブが多かったです。『南へ』を出したあたりから、それまでと違うフィールドで僕らの音楽を表現してみたくなって。シフトしていくために必要な3年間だったという感じはしますね」

── じゃあいろいろ試行錯誤された3年間という感じだったんでしょうか。

角田「そうですね。フジロックをはじめとしたフェスやポップスのイベントに出演を重ねてみて、そういうフィールドで実際に鳴ってる音楽やライブのあり方と、自分たちの音楽に思っていた以上に深い溝があるんだなと思い知らされて。もっと広いところに届けたいと思ったときに、今のままでは届かないと思って試行錯誤した3年間ではありました。でも自分たちの根底にある大好きなジャズのエッセンスは大切にして。」

── 確かにお二人の音楽を聴いていて、ジャズにとらわれる必要はないんだなと思いました。当然ベースにジャズがあるから滲み出てくるものだと思いますし。KOBEjazzでは学生のビッグバンドを応援していますが、学生に好きなジャズといつも聴く音楽を尋ねてみると、ジャズは自分たちが演奏するビッグバンド、グレン・ミラーやカウント・ベイシーしか聴かない。普段聴くのはやっぱり流行りのポップスが多くて。

角田「僕が大学でビッグバンドをやっていたときもそれはありましたよ。サークルに所属してることが楽しい、楽器を吹くことが好きだからやってるけど、ジャズ自体が好きなわけじゃないっていう子は多いと思いますね。でもジャズを頑張って聞く必要もないし、好きなものは大事に聞き続けてたら、いつかそれぞれが同じものとして自分の中ですっと腑に落ちる時が来ると思います。」

── 今のジャズシーンって新しい音楽との融合もあって、とても面白いのでもったいないなと思うんですよね。今の、ジャズにとらわれず新しい音楽を作り出してるバンドの音楽をもっと聴いてほしいなと思うことがあって、そういう入口にものんくるさんが立ってるんじゃないかなと思います。

角田「そんなこと言ってもらえたら本当に嬉しいです。ものんくるを入口にして、僕らが影響を受けてきた音楽を聞くようになってくれたらそんなに嬉しいことはないですね。」

吉田「今でもちっちゃい子がライブに来てくれて、家ですごく楽しく歌ってるんですよって親御さんが言ってくれることがあるんです。そういうの見てたらやっぱ嬉しいですしね。本当にちっちゃい頃から音楽に触れてると自然と入ってきますもんね」

「ものんくるでは、ありのまま歌いたい」。これからのものんくるが目指すもの。




── 今後の展望などはありますか?

角田「海外でもライブをしていきたいです。僕はカエターノ・ヴェローゾというブラジルのアーティストがすごく好きで、その人はもちろんポルトガル語で歌うんですが、言語を通り越して意味が伝わってきて感動してしまうんです。そういうことを日本語で起こしたいし、沙良はそういうことが出来る素晴らしい歌い手だと思うんです」

── 吉田さんの歌声は本当に素晴らしいと思います。技術面はもちろんのことですが、力強さの中にも華奢な部分もあって。

角田「それもこの3年間で出てきた部分だよね」

吉田「うん、自分でも変わったと思います。3年前とか4年前のアルバムの声を聴くと、もうこの歌は歌えないなあと思うくらいストレートで怖いものがない感じで歌ってる。この3年間のいろんなこと、普通に起こる人生のことも含めて、変わっていったなあと思うんです。もともとクラシックでは35歳くらいからようやく声ができあがると言われてるので、そういうのもあって変わっていくとは思うんですが、自分の人生をそのまま歌に出せたらいいなと思っているので、良し悪しはあれどそれが私の歌だと思ってますね」

── 自然と変わっていったという感じなんですね。

吉田「ものんくるでは、ありのまま歌えればいいなと思っています。その『ありのまま』が変わっていってるっていうことがすごいことだし、嘘のない私の正解だと思うし。そういう感じでやっていきたいですね」

── 最後になりますが、今回のアルバムの一番の聴きどころがありましたら。

角田「「それは勿論歌ですね。その中でも前作と一番大きく変わったのはコーラスかな。沙良の声を重ねたり、コーラスをつけたり。ボーカルの表現が格段に広がったと思います。」

吉田「それがポップになった要因でもあると思います」

── そうですね。一聴するだけではジャズだとは思わないですよね。構えず自然と入ってくる感じはとても魅力だと思います。

吉田「ああ、それは嬉しい」

角田「ジャズに興味ない人にもポップスとして普通に聴いてもらえるんだけど、間奏のほんの数秒間の中にジャズのエッセンスをギュッと凝縮したりしてるので、知らないうちにジャズに馴染んでて耐性がついてくなんてことがあったらいいなと」

吉田「無意識下に潜入していくみたいな(笑)。知らないうちにジャズが聴けるようになっていったら面白いですよね。変拍子とかもそうですけど、変拍子って難しいという印象を大人が持っているから、子どもたちも難しいことなんだって思っちゃってなかなかできなくなると思うんです。でも子ども番組とかで変拍子の曲が普通に流れていたら、それを聴いた子どもは普通に歌えるんです。何拍子か変拍子かなんて考える必要がないから。そういうふうにジャズも浸透していけばいいのに、と思います」

角田「でも僕らがそうだったように大人が何を言ってても、子供達は自分のアンテナで自分にぴったりなものをキャッチする力があるから、放っておいても大丈夫なんだよね。ものんくるもどこかの子供のアンテナと不意に交信できるように、本質的でありながら常に誰にでも開けた良い音楽をこれからも作っていきたいです。」

── 今日はどうもありがとうございました!

interview

2017年8月22日 神戸VARIT.「Laquda 6th &神戸VARIT.13周年"スイートミートvol.2"」
 ライブハウス・神戸VARIT.13周年と尼崎の飲食店Laquda6周年を記念したライブイベントのトリにものんくるが登場。3rdアルバム「世界はここにしかないって上手に言って」のライブツアーということもあり、今回初披露の曲も多数。ものんくるとしては初となる神戸での演奏ということもあり、多くのファンが集まりました。17名ものゲストが参加したニューアルバムをライブで再現するとあって、今回のツアーではものんくるのお二人に加えて、ギターの小川翔さん、ドラムの伊吹文裕さんに、宮川純さん、渡辺ショータさんというダブルキーボードというユニークな編成。1曲目の「SUNNYSIDE」では艶やかな吉田さんのボーカルに華を添えるようなキーボードとギターの多彩な音色に思わず溜息が漏れるほど。吉田さんの圧倒的な歌唱力とグルーヴ感のある演奏が観客の心をぐっと掴みます。2曲目は1stアルバム「飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち」から「優しさを重ねること」。リズムに自然と体が揺れて、ものんくるの作り出す世界観に聴き惚れます。3曲目はややダークな雰囲気が魅力の「花火」、そして「空想飛行」「最終列車 君を乗せて」とニューアルバムの曲が続きます。ライブならではの間近で触れる吉田さんの声の魅力はやはり格別。ソロパートの演奏にジャズを感じながら、ステージはどんどん進みます。自然体な二人のMCが入って、後半は吉田さんの独特な世界観を描いた「透明なセイウチ」。あっという間にラストの1曲、アルバムタイトルにもなっている「ここにしかないって言って」。心地よさに身を委ねたまま、アンコールは「透明な星座をつくる」。“ポップス”だとか“ジャズ”だとか、垣根を超えたものんくるの音楽は本当に心地いいもの。短い時間ではありましたが、濃密で心地良いものんくるの音楽に浸れるひとときでした。ぜひ今度はワンマンライブを神戸で開催してほしい!

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[ RECCOMEND MOVIE ]

ものんくる / ここにしかないって言って 【MV】

ものんくる『世界はここでしか聞けないってTOUR』トレイラー


[リリース情報]世界はここにしかないって上手に言って/ものんくる
3年ぶり3作目となる今作は、前作までの固定メンバーによるサウンドを一新し、斉藤ネコ、大儀見元、黒田卓也、FUYUなど世代を超えた豪華ゲスト陣に加え、桑原あい、井上銘、石若駿、宮川純という同世代気鋭のジャズミュージシャン達と共に、ハイクオリティな歌唱/演奏だけに留まらず圧倒的な多幸感とポップネスをパッケージし、2017年の日本における「ジャズ×ポップス=」の答えを鮮やかに導き出す。プロデュースは前作に引き続き菊地成孔。

 01: Driving Out Of Town
 02: 空想飛行
 03: SUNNYSIDE
 04: 花火
 05: Birthday Alone
 06: ここにしかないって言って
 07: 時止まる街
 08: 二人
 09: 透明なセイウチ
 10: 最終列車 君を乗せて
 11: the dawn will come
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[ライブ情報]
11.27(Mon) 『歌で紡ぐ、トアに続く』@神戸 VARIT.
会場:神戸 VARIT.
開場:11.27(Mon) 18:30/開演19:00
料金:前売2,800-/当日3,000円(+1drink)
出演:ものんくるmini+strings/SUMMY/and more…
ものんくる=吉田沙良(vo)角田隆太(b)田島華乃(Vn)関口将史(Cello)伊佐郷平(per)


12.21(Thu) クリスマスライブ@代官山UNIT
吉田沙良(vo)角田隆太(b)宮川純(Key)渡辺ショータ(key)小川翔(gt)伊吹文裕(dr)/and more…
to be announced…
詳細はwebサイトよりご確認ください。