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今回ご紹介するのはMarshall Mcdonald(マーシャル・マクドナルド)さん。あの世界的に有名なビッグバンド「カウントベイシー楽団」のリードアルトサックス奏者です。昨年の山野ビッグ・バンド・ジャズ・コンテストに出展したKOBEjazzブースに遊びに来てくださったことをきっかけに交流が始まり、このインタビューが実現しました。学生や若い人に伝えたいこと、日本のことなど、様々なことを伺いました。

person

Marshall Mcdonald(マーシャル・マクドナルド)

マーシャルマクドナルドはカウントベイシーオーケストラの現リードアルトサックス奏者。ライオネルハンプトンオーケストラ、デュークエリントン、アブドゥラ・イブラヒムなどでもアルトサックス、テナー、バリトンサックス、クラリネットで活躍し、カウントベイシーに15年間 在籍するベテランミュージシャン。Lionel Hampton Orchestra, Abdullah Ibrahim & Ekaya, Paquito D’Rivera and United, Nation Orchestra, Chico O’Farrill Orchestra, Illinois Jacquet Orchestra, Charli Persip, Supersound, Aretha Franklin, The Four Tops, Johnny Mathis, The Temptations, and Nancy, Wilson などとツアーやレコーディング。ピッツバーグ シンフォニーの首席奏者で、8歳の頃からクラリネットを始め、12歳の頃よりアルトサックスを始める。マーシャルは主にGeorge Coleman, Dr. Nathan Davis (Art Blakey, Nestor Koval (Paris Conservertoire of Music) and Phil Woods protege Mark Kirkより JAZZを学ぶ。

interview

そのソロを止めて、自分のソロをやろう!




── 楽器を始められたのは?

「8歳のころです。クラッシックのクラリネットをピッツバーグのシンフォニーの首席奏者について、習い始めました。12歳のときに、アルトサックスでジャズをやりたいということで、アルトサックスを買ってジャズを始めました。」

── カウントベイシーに入ったきっかけは?

「オーディションとかがあったわけではなく、突然の出会いでしたね。メンバーの紹介で参加することになりました。ケニーヒンのお母さんが亡くなって、テナーに空きができたことがきっかけです。私は中学生の頃、カウントベイシーに入るのが夢だったので、お話をいただいた時は、とてもうれしかった。」

── ミュージシャンの指導などを積極的にされているとお聞きしましたが?

「山野楽器さんとマスタークラスを3回ほどやりました。ビッグバンドをやっている大学生・社会人を対象に、ビッグバンドを一つモデルにして、東京大学と明治大学で1回ずつやりました。レクチャーしながら、その様子をみんなで確認するようなものです。公開クリニックも年に3回くらいやっています。」

── 日本の学生や社会人のビッグバンドでもサミー・ネスティコアレンジの楽曲を演奏します。とてもいい勉強になります。

「楽曲として、とても演奏しやすいと思います。アメリカでもジャズを始める学生には、カウントーベイシーやメイナードファーガソン、ウッディーハーマンなど演奏しやすい楽曲も多いので、若い人にはちょうどいいのかもしれません。一方で、フランク・フォスターやアニー・ウォーキンスなどは難しいですね。どちらかと言うとプロフェッショナル向きだね。」

── 日本の学生は50年代のカウントベイシーアレンジ、ニール・ヘフティとかフレディグリーンなどが好まれています。」

「ニール・ヘフティのアレンジはとても素晴らしいですね。私の大好きなプレイヤーとして、デビッドサンボーン、チャーリーパーカー、日本だと渡辺貞夫さん。彼はとてもクールな印象ですね。」

── 渡辺貞夫さんは1950年代にバークリーで学んでいましたね。1980年代には、彼の作品がとても日本で評価されています。」

「アメリカでもそうでした。とても偉大なプレイヤーです。日本人として、アメリカでもっとも有名なジャズプレイヤーではないでしょうか。あとは日野さんもそうですね。秋吉さんとルー・タバキンさんも有名ですね。」

── ところでマーシャルさんは日本のジャズをどのようにみていますか?

「日本に何年かいるうちに日本人のジャズに対する問題を自分なりに見つけています。クリニックを始めた理由もそこにあります。今、すこしずつ伝えて行きたいと思っています。」

── ちなみに、どういうところに問題があると考えていますか?

「ジャズはインプロビゼーションが大切です。多くの若いビッグバンドのミュージシャンたちはコピーすることに必死です。ソロにしてもそうです。でも、それはジャズじゃないと思う。アメリカでは高校生でもそういったことはしないもんです。アメリカの)学生たちはソロを少しでも変えて、演奏しようとします。日本だと、ソロも同じように演奏しようとします。コピーをするのはとても上手なんだけど、フレーズを変えようとはしない。日本の学生ビッグバンドだと誰かそのもののソロをしている。アメリカだと、オーディションなんかで誰かのソロをやると”もう、帰りなさい”と言われてしまいます。とにかく、クリニックでは、”そのソロを止めて、今、自分のソロをやろう!“と言っています。難しいかもしれないけど、”シンプルでいいから、少しだけ変えてみよう”と伝えています。間違うことを恐れず、とにかくやってみようと言っています。」

── 日本では、中高生がジャズを始めるときに、アドリブの捉え方が分からないと言います。だから、最初はアメリカの人の真似をして、感じやリズムを汲み取って始めていこうとしています。もちろん、どこかのタイミングでそこを抜け出す必要はあるかもしれません。

「その通りなんです。始めは真似をするところから始めたらいいんです。でもそこから少しずつ変えて行って欲しい。そして、そのソロを自分で(譜面に)書いてみて、練習してみよう。ただ、ステージに立つ以上、真似することばかりやっていてはいけないと思う。何でそれを演奏したのか、何でそのコードを選んだのかというのをそこから学ばないといけない。」

── 日本ではカウントベイシーオーケストラのリズムをとろうとしたり、真似しようとするのですが、絶対にできないんです。それは何ででしょうか?

「それはベイシーマジックです(笑)。少しずつ、みんなにクリニックなどを通じて教えています。ベイシーのマジックというのがあります。ここは、こういう風にやるとベイシーらしくなるというポイントがあります。」

── 是非、教えてもらいたいものです。カウントベイシーのリズムは難しいです。

「よく聞かれる質問ですね。だけど、カウントベイシー自身が、毎回違うように演奏をしているんですよ。リーダーが代わっても、自分達はカウントベイシーを真似するということは意識的にはやっていません。ただ、スタイルは似ているかもしれません。」

みんな楽しい?
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── ちなみに、こういったお話しをクリニックでもされることがあるのですか?

「クリニックでは演奏主体でやるので、こういうインタビューやディスカッションでの経験は初めてですね。以前、岡山県で行政がカウントベイシーを呼んでくださって、指導するようなことをやったことがあります。その時はカウントベイシーのメンバーと親しい方がいて、呼んでもらいました。最近は、関西につながりある人が少ないので、関西でも色々なことをやりたいです。」

── ジャズを学ぶ上で伝えたいことはありますか?

「アメリカのジャズの歴史には、差別が底辺にあります。ビッグバンドは白人が踊るために黒人が演奏をしていたという歴史があります。黒人は踊ることができなかったんです。もちろん文化の違いも大きいですね。奴隷制度時代の痛みだったり、学生の皆さんには是非、歴史も学んでもらいたいです。だからブルースをやって欲しいんです。ブルースはそこから生まれた音楽なんです。ただ、いいミュージシャンほど人種や肌の色は気にしないもんです。日本は逆に日本人じゃないことを気にするところがあるかもしれない。あと、カウントベイシーメンバーで学生にクリニックをやった時の第一声は“みんな楽しい?”と質問するところから始まります。とにかくジャズを楽しんで欲しいんです。カウントベイシーで大切にしていることは、”メロディー“、”ダンス”、”スイング”さらにもう一つは”楽しもう”です。」

── 日本の人は、海外のプレイヤーの楽器やセッティングがとても気になるものです。同じことをするとそのミュージシャンに近づいたような気持ちになりますから。楽器はどんなものを使っていますか?

「アルトのこと?テナーのこと?広いのは嫌なんだ。6番を使っているよ。テナーはセルマーを2本使っているよ。セルマー1本と”同じ年((1959年)”のセルマーを別で1本使っているよ。アルトも2本使っているよ。ヤマハとヤナギサワのものを使っている。バリがセルマーだね。大きな音がよければ大きなマウスピースを使うといいね。ロックンロールのような音楽になっちゃうけど。リードはダダリオを使っているよ。」

── 東京と名古屋でカウントベイシーが公演することは聞いたことがあったのですが、最近は関西に来られることがないので、是非、関西で観てみたいです。

「ベイシーメンバーもみんな関西好きで来たいと思っていますよ。確かに大阪でライブをしたのはずいぶん前になるかもしれません。大阪に来ると”にんにくラーメン(薩摩っ子ラーメン)”とみんなで呼んでいたラーメンが好きだったんです。大阪に行くとなると”にんにくラーメン”が食べられると喜んだものです。メンバーに写真を見せるとみんな興奮しますよ。昨日からずっと食べに行きたいと思っています(笑)。」


Interviewer
  日下雄介、五島健史、上田神人、寺田樹


information

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Marshall McDonald Quartet

Marshall McDonald Playing with The Count Basie Orchestra at BIRDLAND NYC