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ジャズピープル

自分で何かを生み出せる、ヴォーカリストになりたい。

5月に開催された「第15回神戸新開地ジャズヴォーカルクィーンコンテスト」に出場し、富士通テン賞を受賞した大野いずみさん。「ブースに入った瞬間に緊張しました。いつもできることがなかなかできなくてむずかしかったです」と、レコーディングを終えて、コンテストを振り返るとともに、直前に控えたニューヨーク留学に向けての心境をお話していただきました。

person

大野いずみ
[ジャズヴォーカリスト]

大阪府出身。5歳よりクラシックピアノ、14歳より声楽を学ぶ。大阪府立夕陽丘高校音楽科、相愛大学音楽学部声楽専攻卒業。在学中に渡欧し、オーストリア・ウィーン、イタリア・ミラノでマスタークラスを受講。ニューイヤーコンサートで有名なウィーン学友協会ホールの出演を果たす。卒業後、即興的に呼応するアンサンブルのスタイルに興味を抱きジャズに転向。2011年よりヴォーカリストとして活動を開始し、関西圏のライブハウスなどで演奏活動を行なっている。2014年、第15回神戸新開地ジャズヴォーカルクィーンコンテストで富士通テン賞を受賞。現在はニューヨーク留学中。

interview

コンテストはこれからもっともっと頑張らないとと思えるような経験でした。

── コンテストが終わって、受賞後、変わったことはありますか?

「知らなかった方に声をかけていただけるようになりました。受賞できると思っていなかったのでびっくりして、私が賞をいただいてよかったのかなという気持ちがあります。コンテストはたくさんの方が受けられることは知っていたので、本選に受かるかなという思いがありました。ヴォーカルとして活動を始めて4年目になりますが、今までそんなに注目されているわけではなかったので、自分に甘えていたところもあり、今まで以上に責任を持って一つひとつのステージをきちんとしないといけないと思うようになりました」

── コンテストに応募したきっかけを教えてください。

「コンテストのことは以前から知っていました。ニューヨークに留学に行くことは、コンテストに出る前から決めていたのですが、その前に日本で挑戦できることは何かと考えていたときに、ちょうど、タイミングが合いました。留学の決心がついていなかったら受けていなかったと思います」

── 本選出場が決まってコンテストに向けてどのように過ごしましたか?

「選曲は悩みました。2曲の課題曲を歌うものと思っていて、本選出場の通知が来たときに違う曲でもいいということで選びました。本選までの1か月くらいで変わることはできるかもしれませんが、あまり意識しても等身大の今の自分以上のものを出すことはできないので、コンテストのことはあまり意識しないで過ごしました。本番はいつもの80%くらいしか出せないと思いますので、力まずに今の自分を出すことができたらいいとコンテストに臨みました」

私なりに歌う理由があると、思い切って曲を決めました。

── 選曲に迷われたようですが、曲に対してどんな思いがあったのでしょうか?

「レパートリーの80曲くらいの中で2曲選ぶのはむずかしく、2曲目に歌った『Blame it on my youth』は、邦題が『若気の至り』という意味があるのですが、私の今の年齢で、この歌を歌うことに迷いがありました。歌う曲が決まったとき、大先輩のある方に選曲を尋ねられたのですが、経験を積んでからこそ、歌える歌ではないかと言われて、やっぱりそうなのかなと思いましたが、二十歳のときのことを思い出したら、今の方が少しくらいは成長していると思い、そのときそのときなりの若気の至りでいいのではないか、私なりに歌う理由があるのではないかと、歌うことを決めました」

── 実際にコンテストのステージはいかがでしたか?

「お客さんの距離が近かったのですが、ステージのライトが眩しくてお客さんの顔がほとんど見えませんでした。ふだんのライブではそれほどライトは強くないので顔は見えるのですが、そういう意味で逆に表情が見えなかった分、ステージに集中することができたように思います。歌詞のストーリーも自然に感じることができました。顔が見えないから怖いという部分もありましたが、反対に見えるからこそ、表情がわかる怖さもあります」

── 審査員の先生のコメントで印象に残っていることはありますか?

「選曲のことをやはり言われましたね(笑)。実は悔やまれるところもあって、ストーリーを感じて表現するところは、ある程度できてよかったのですが、緊張していたこともあって、テクニックの部分でコントロールできなかったところもありました。コンテストは完ぺきが求められる場所なので、それができなかったことが悔やまれます。だから、受賞できるとは思っていませんでした」

── コンテストに出場されて、よかったこと、ご自身が得たものはありますか?

「ライブと違い評価されるという立場で、どれだけできるかというコンテストはいい経験になりました。ふだんの積み重ねがないと自分が思うような結果につながらないので、もっと経験や練習が必要と思いました。賞という結果に関しては、たくさんの方に祝福していただいて、今までは歌っていることは知っているけど、聴いたことがなかった方にも聴いてもらえるようになって自信にもなりますが、恥ずかしくないようにという思いが強くなりました。恥ずかしくて心から喜べて、私の頑張りを認めてくれてありがとうとは、なかなか思えていない自分がいるような気がします(笑)」

留学は実感として背景を深く知ることができます。

── 留学するとお聞きしましたが、どれくらいの期間になるのですか?

「5年間の予定でニューヨークに行きます。ライブ活動をするようになってしばらくして、いつかは海外で勉強したいという思いがあり、今年くらいに行くつもりで準備していました」

── 大学時代にも留学されていますが、今回の目的やテーマはありますか?

「作曲に興味があって、自分で何かを生み出せるヴォーカリストをめざしています。スタンダードを歌うにしても、自分がつくる音楽という経験を通してアプローチしたいという思いがあります。ヨーロッパに短期留学したことがあるのですが、言語や文化、建物のつくりなども含め、海外は空気や生活環境が違います。その中で、わからないこともたくさんあったのですが、たとえば、発声方法ひとつにしても、教会で声を出すと響き方が違います。今まで習ったことや、理屈で言われていた発声の仕方が、こういうことなのかと、環境に入ることで知ることができるのが、海外で学ぶことだと思います。海外で学ぶということは、自分で感じることで納得することが経験としてあります」

── 将来はどんなヴォーカリストをめざしていますか?

「クラシックピアノと声楽を習っていたのですが、自分で歌って表現したいという思いがありました。好きなヴォーカリストがシャーリー・ホーンとカーメン・マクレエなのですが、お二人ともスタイルが違い、歌詞やストーリーが選ぶメロディーラインやタイミングがすばらしく、表現が伝わってきます。既存の曲を歌われていますが、音楽を自身でつくっていると感じられるところがあって、彼女たちのようなヴォーカリストになりたいと思っています」