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フリューゲルホルンがリードする心地良いサウンド

4本の「フリューゲルホルン」をフィーチャーした珍しいスタイルのFour Flugels。メンバーはそれぞれがヒットチャートを賑わすアーティストのサウンドを支える日本でも最高峰のプレイヤーが揃っています。リーダーでありトランペッターである小林正弘さんにバンド結成の経緯やこれからやっていきたい音楽などについてお話を伺いました。また、2018年11月に結成して始めての関西ツアーが行われ、神戸・CHIKEN GEORGEで行われたライブも合わせてレポートします。
アーティストインタビュー&コンサートレポート by 小島良太(ジャズライター、ジャズフリーペーパーVOYAGE編集長)

person

小林正弘

5歳よりトランペットを始め、高校在学中にRCサクセションのサポートメンバーとしてプロデビュー。その後国立音楽大学に進学したが、キャンディーズのバックバンド「MMP」に参加するなど多忙を極めたため中退。1979年に「宮間利之&ニューハードオーケストラ」に1年間在籍。退団後は、大先輩である数原晋のサイドマンとして数多くのスタジオワークに参加。1980年代後半よりサックス奏者の小池修らと共に自己のホーンセクションで数多くのスタジオワークやサポートワークに参加する。1994年にはフュージョンバンド「Source」を結成。1997年に初めてのアルバム『Source』をリリース、音楽雑誌「ADLIB」(アドリブ)の読者人気投票でその年の「最優秀新人バンド賞」を受賞した。1998年にバンド「Kicks」を結成、翌1999年11月にはアルバム『Kicks』をリリース。また2001年にはボサノバ系バンド「Nouvelle-B」を結成。更には同じトランペット奏者であるエリック・ミヤシロ率いる「EM BAND」などで活動中である。また同じくトランペット奏者で「BIG HORNS BEE」などで活躍している小林太は実弟。「小林ブラザーズ」(別名「兄弟HOT! BROTHERS」)として、ライブなどでの共演も多い。

interview

4本の「フリューゲルホルン」をフィーチャー

── Four Flugelsの活動はいつ頃からスタートされたのでしょうか?

小林「結成して、だいたい15年ぐらいかな。最初はベースの青木(智仁)さんもいたから。東京でしかやってなくて、半年の1回のペースでしていたのが、年末1回になって(笑)。レギュラーでは本来、西村浩二さんが参加しているのですが予定調整が合わなくて、今回は石井真君に入ってもらいました。」

── フリューゲル4本という編成は珍しいですよね。結成のキッカケは?

小林「サックス4本や、トロンボーン4本っていうのはけっこうあるんですけど、トランペット4本というのはなかなかない。でもトランペットは音がきついし、攻撃的な音楽しかできなくなっちゃう。トロンボーンよりちょっと音域が高くて、柔らかい音色のフリューゲル用に譜面を書き出したら、けっこう面白くなってきて。」

── このバンドで表現したい音楽はどういう音楽でしょうか?

小林「基本的にはメロディの綺麗な楽曲を演奏しています。クリフォード・ブラウンのソロを4人でハモって演奏する曲やサックスの演奏で有名な「Four Brothers」をフリューゲルで演奏するなど工夫も凝らしています。4ビートのリズムというより、ボサノヴァのリズムとか、緊張感というより、癒やし系、心地良い音楽を目指しています。たとえば、ドライブに行った時に聴いても邪魔にならない音楽と言えば良いかな。秋の時期にはピッタリじゃないでしょうか(笑)。」

── 皆さん一線で活躍されるすごいメンバーですよね。メンバーの人選の経緯を教えてください。

小林「一緒にスタジオで集まっていたミュージシャンが中心です。普段から話していて、音楽性の合う人、そこが一番重要じゃないですか。ある程度、譜面を書いた曲にリスペクトを持って演奏してくれる人と一緒にしたいですしね。東京のライブブッキングのペースが早くなってきているし、それぞれがミュージシャンサポートのツアー等で忙しいけど、できるだけこのメンバーでやっていきたいです。」

若い人には”良い音楽”を聴き込んで欲しい

── 今回の神戸公演は本当に貴重な機会ですね。

小林「こんなにツアーブッキングが大変だとは。人数も多いし(笑)。でも東京以外では初めてのライブなので、これを機にまた神戸に来たいですね。何かジャズフェス、イベントあれば、是非お声がけください!」

── このバンドで演奏する時に心がけている事はどういった事でしょうか?

小林「私が全部譜面を書いているので、メンバーが気持ち良く演奏してくれる事が一番です。難しい、キツイ曲もありますけど(笑)。ライブハウスぐらいのハコが一番緊張します。アドリブの演奏があるし、お客様の表情がわかるから。野外フェスやホールで数万人の前で演奏するより緊張します。でも、普段味わえない緊張感が楽しいです。」

── 神戸の印象、思い出はありますでしょうか?

小林「昔は年末に「神戸セッション」というライブイベントがあって、12月30日、31日に村上ポンタ秀一さん、ベースの青木智仁さん達と一緒に来ていました。最近なら、サザンオールスターズや桑田圭祐さんのバンドで来た以来かな。妻が神戸出身なので、何か親しみはありますね。」

── KOBEjazz.jpは学生のプレイヤーも多く見ているサイトです。若いプレイヤーに向けて是非アドバイスをお願いします。

小林「”良い音楽”を聴き込む事です。私達の若い頃はネットですぐ音源が聴けませんから、とにかく一枚のLPを聴き込みました。圧縮された音源ではなく、色々な音楽を聴き込まないと。あの曲があるから、この曲で盛り上がるというようなアルバムの流れってあるじゃないですか。それって大事ですよ。あとはジャズジャズしたくない、という事かな。眉間に皺を寄せて聴かれるような音楽にはしたくないです。だけどやっている事は凄い!というのもある演奏です(笑)。」

── 今後の展開を教えてください。

小林「年明けぐらいにCDを作りたいなぁという構想があります。」

── それは管楽器プレイヤー必聴ですね!!作品、楽しみにしております。ライブ前のお忙しい所、ありがとうございました。

interview

Four Flugels Live in KOBE Four Flugels/2018年11月6日(火)神戸・CHIKEN GEORGE
マエストロ達の妙技に酔う
様々なジャンルのライブ、レコーディングに日夜活躍するトランペッター、小林正弘さん率いる、4本の「フリューゲルホルン」をフィーチャーした「Four Flugels」の神戸での初ライブが神戸ライブシーンの聖地、CHIKEN GEOGEで行われました。
小林さんはもちろん、メンバーそれぞれがヒットチャートを賑わすアーティストのサウンドを支えている“職人”が勢揃い。先述した4本のフリューゲルをギター、キーボード、ドラムスが強固にバックアップ。リハーサルでも百戦錬磨の面々だけあって、統率の取れたサウンドを早速響かせて、本番への期待が高まります。
気になるセットリストはジャズや映画音楽の名曲を中心にした、音楽ファンの方なら必ずどこかで耳にした馴染みのある楽曲達。「Everything Happen to Me」では4管の清らかなハーモニーが爽快。フランシス・レイ(残念ながら奇しくもライブの翌日7日に逝去)の名曲、「白い恋人たち」で美しい音色をたっぷり聴かせる所もあれば、「Donna Lee」では伝説のトランペッター、クリフォード・ブラウンのアドリブフレーズをそれぞれが盛り込んだ演奏を披露するなど高いテクニックをアピールする場面もあり、管楽器のプレイヤー、また演奏経験のある方にはたまらない演奏だったと思います。
セカンドセットの1曲目はウディ・ハーマンオーケストラの代表的ナンバー、「Four Brothers」から。この曲は4本のサックスによる演奏が有名で一般的ですが、それをフリューゲルホルンで演奏するというのはやはりこのバンドだからこそできる離れ技。どう聴いても子供の子守唄には聴こえない(笑)、「Tell me A Bedtime Story」もやはりムーディーな情景を想い起こさせました。「A Night in Tunisia」でもクリフォード・ブラウンのオマージュを織り込み、圧倒的なテクニックときめ細やかな音の羅列に観客のボルテージも上昇。そこから「You Don’t Know What Love is」で締めくくるステージングはさすがの貫禄。アンコールでは、11月2日に惜しくも49歳の若さで亡くなった名トランペッター、ロイ・ハーグローヴの名曲「Strasbourg/St.Denis」で追悼。小林さんがライブ前日に急遽譜面を書いたそうです。小林さん曰く、「シンプルな構成なのに、良い曲で演奏していてとても楽しい」との事。改めてロイの残した偉大な功績を感じずにはいられませんでした。
1曲ごとの丁寧な曲紹介、またメンバーの仲の良さが伺える、ほのぼのしたトークも楽しく、ハイレベルな演奏と和やかな気持ちが共存した、音楽の“マエストロ”達の饗宴に心温まる一夜でした。

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