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ジャズピープル

創造性豊かなメロディを生み出す、まさに“作曲家”

オリジナル楽曲が各方面で高い評価を得るジャズピアニストの外山安樹子さん。 精力的にアルバムリリースを続けていらっしゃいますが、トリオ結成10周年を記念した総決算の2枚組アルバム、「TOWARD THE 11TH」を先日リリースされました。そのリリースツアーのお忙しい中、今回のアルバムについて、また作曲の事や初の来訪となる神戸の印象についてもお聞きしました。

アーティストインタビュー by 小島良太(ジャズライター、ジャズフリーペーパーVOYAGE編集長)

person

外山安樹子

札幌市生まれ。6歳よりヤマハネム音楽院にて作曲、演奏法、理論等を学び、自作の曲やクラシックで国内外のコンサートに出演。1993年にはフランスでの国境なき医師団のチャリティーコンサートに参加。フランス国立放送管弦楽団と共演し、その模様がテレビ放映される。他に札幌交響楽団、大阪ニューフィルハーモニーなどと共演。進学のため上京し、早稲田大学で法律を学んだ後、ジャズに出会い、独学と実践で勉強を始める。鈴木ウータン正夫(ds)、菊地康正(ts)、吉野ミユキ(as)ら数々の実力派ミュージシャンと共演を重ねると共に、2007年9月にはYPMレーベルからデュオ1stアルバム『Lilac Songbook』、2009年9月には自己リーダートリオで2ndアルバム『All is in the Sky』、2011年7月3rdアルバム『Ambition』、2013年11月4thアルバム『Nobody Goes Away』、2016年4月5thアルバム『Tres Trick』をリリース。それぞれの収録曲が『ジャズ批評』誌にてジャズメロディ賞受賞。2010年1月に出版された「W100ピアニスト」にて日本の女性ピアニスト100人に選ばれて掲載される。
各地ライブでのアルバムの売上は驚異的と言われ、聴いた人ほとんどがCDを持ち帰るということも少なくない。「ジャズライフ」等各ジャズ雑誌のレビューで好評を得るほか、ラジオのオンエア、出演など多数。楽器店や個人レッスンで多数の生徒も持ち後進の指導にもあたっている。また、ジャズの普及のため「ジャズレクチャー付きライブ」などにも積極的に取り組んでいる。


interview

ニューアルバム「TOWARD THE 11TH」について




── アルバムリリース、おめでとうございます。今回の作品はボリュームたっぷりの2枚組ですよね!2枚組にされた意図を教えてください。

外山「今まで5枚アルバムを作ってきた総決算のベスト盤を作りたいというのと、ライブレコーディングをしてみたかったというのがあります。あと、前作(2016年)のリリース後から温めてきた新曲も発表したい!という3つの想いを一度にできるのが2枚組だったんです(笑)。ライブ盤でベストを作って、スタジオで新曲を収録しました。」

── 一石二鳥ならぬ、一石三鳥ですね(笑)。不動のメンバーでの活動が10年を迎えましたが、変化はありますか?

外山「いい意味で変わらない、という所です(笑)。常に不動のメンバーですが、メンバーが新しい事を急に仕掛けてきたりする所があって、このバンドの中での試行錯誤、変化を楽しみながら演奏しています。」

── 今回のアルバムタイトルの由来は?

外山「11年目に向けて、という意味です。アルバムに同名曲が入っていますが、この曲だけがアルバムを作成して以降に作った曲なんです。これからに向けての想いの詰まった曲ですね。」

── 今回のスタンダード曲の選曲の意図は?

外山「ライブ盤はお客様のアンケートからのリクエストに応えた形です。今年に入ってから、ライブでお客様にアンケートを取って。ニューワークスもアンケートの結果を反映しています。New Worksの中の「Dear Old Stockholm」もライブの中で聴きたいという声があって。」

── お客さんからのリクエスト、面白い企画ですね。

外山「もともとスタンダードを弾くのは好きなんですけど、個性をどうやって出そうかな、と思う部分もあって。お客様からこれを聴きたい、というのを自分だったらどういう風に調理するかという方がスタンダードの演奏では好きですね。
自分が大好きな曲を入れました、というのはオリジナルなんですけど、逆に自分が苦手だったもの、例えば今回のアルバムにも収録している「Dear Old Stockholm」はマイルス(・デイビス)のイメージが強すぎるけど、それをどういう風に自分なりにアレンジできるかという風な楽しみ方ができてきました。」

メロディを大事に育てる作曲法

── 外山さんはオリジナル曲に大変定評がありますが、作曲で心がけていらっしゃる事はありますか?

外山「まずはメロディ、モチーフですね。2小節、もしくは4小節聴いたら、あ、いいなと思えるメロディを思いついたら、それを大事に育てていきます。あんまりピアノで曲は作らないようにしています。なぜかというと、ピアノの指が動きやすいような曲作りをしてしまうからなんです。」

── ピアニストであるのはもちろんですが、本当に作曲家、音楽家ですね。

外山「メロディだけで曲が完結する、そういうイメージを大事にしたいですね。」

── 作曲のアイデアはどういう所から?

外山「今回のアルバムにも収録されている、「Sky Above Dazzling Ocean (SADO)」という曲は実際に佐渡に行った時の印象を元に作った曲なんです。そういう風に実際に見た景色、想像したイメージを音にしています。絵、風景画をを書くんじゃなくて、それを音にして表現している感覚ですね。」

北国のミュージシャンに惹かれる

── 外山さんの音楽のルーツは?

外山「クラシックを習っていたので、その中ではラフマニノフが好きでしたね。北海道に住んでいたこともあってか、北国の作曲家が好きで(笑)。ジャズを始めた時もスウェーデンのピアニスト、ラーシュ・ヤンソンが好きになりましたね。空気がピーンとした所の作曲家が好きみたいです(笑)。」

── 北海道の時はジャズとの接点はあまりなかったんですね。

外山「はい。クラシック中心でしたね。大学で東京に出てきてから演奏活動を離れていた時期があったのですが、また音楽を聴きたいなと思って、たまたま行ったCDショップのジャズコーナーで流れていたピアニストのチック・コリアのライブ音源を聴いて、あ、こういうのやりたいな!と。ジャズを始めた時はクラシックの部分が抜けなくて苦労しましたけど、でもクラシックを経験していたからこそできる部分もありましたね。」

初めての神戸についてのイメージ、そしてこれから

── 神戸での演奏は意外にも初めてなんですよね!実際に来られてみての神戸のイメージを教えてください。

外山「さっき(10/19 萬屋宗兵衛@神戸元町でのライブ前)、メリケンパークに行ってきたんです。ポートタワーにも登ってきました(笑)。本当に綺麗な街ですし、歩いている方がオシャレな方も多いですよね。」

── そういってもらえると、神戸市民としては嬉しいです(笑)。神戸に限らず、ツアーなどで行く各地の印象をしっかり感じていらっしゃいますね。特に印象に残っている場所というのはありますか?

外山「土地の名物を食べたい、というのも大いにあるんですけど。すごい行列で時間の関係もあって断念した神戸牛の牛丼、次回は食べたいですね(笑)。第二の故郷といえるのは新潟ですね。最初に自主制作盤を作った時から応援してくださる方がいらっしゃって、新潟のジャズフェスにも呼んでいただいて。地元の札幌よりも行く機会が多いかも。神戸も今回をキッカケに来る機会を増やしていけたらなぁと思います。」

── これからの展望を教えてください。

外山「新しい曲を作っていくのはもちろんですが、ここまでやってきたのでトリオという形もこだわって続けていきたいです。フロントを入れて、オケを入れてとかも面白いと思うんですけど、このトリオでどこまでいけるかな、っていう所を大事にしていきたいですね。ジャズフォーマットなんだけど、スケールの大きい曲を作っていきたいです。」

── もし今回の神戸のイメージから曲ができたら、神戸のファンは嬉しいですよね。最後に神戸のジャズファンの方にメッセージをいただけないでしょうか。

外山「ジャズの街神戸のオシャレな皆様に私の曲が受け入れてもらえたら嬉しいです。 また来られるように頑張ります。是非一度、アルバムを聴いてください!」

information

[ RECOMMEND MOVIE ]

外山安樹子トリオ 6thアルバム『Toward the 11th』 プロモーション



[ Live Information ]

外山安樹子トリオ アルバムリリースツアー
11月8日(木)菊水「Cafe ハルヤ」
11月9日(金)札幌「フィエスタ」
11月10日(土)千歳JAZZ倶楽部
11月24日(土)桜川「ヴィレッジ」
12月8日(土)大網「カフェリズム」
12月11日(火)六本木「サテンドール」
12月20日(木)吉祥寺「音吉MEG」
※詳細なスケジュールについてはwebサイトでご確認ください。



[ Release ]

外山安樹子トリオ『TOWARD THE 11TH』
結成10周年を迎えた気鋭のピアノ・トリオが、スタジオ&ライヴ両方の魅力を封じ込めた2枚組を発表! 2016年発売の『Tres Trick』(ライス TAR-001)がジャズ批評誌にて「メロディ賞」を受賞するなど、各方面で高い評価を受けてきた外山安樹子トリオ(外山安樹子(pf)、関口宗之(b)、秋葉正樹(ds))。また2017年の暮れにはクリスマス・アルバム『スノーイング・タウン』(同 TAR-2154)を発表し、より幅広い音楽的視野を披露するようになりました。そんな彼らは今年で結成10周年を迎えましたが、それを記念してなんとも豪華な新作を発表してくれました。 本作はこれまで通り素晴らしいコンポジション&アレンジメントを聴かせてくれるスタジオ録音だけでなく、圧巻とも言うべき演奏力と表現力を持ったインプロヴィゼーションを楽しませてくれるライヴの録音も加えたという、いわば“静”と“動”両方の魅力を兼ね揃えた内容。まさに結成10周年に相応しい2枚組となりました。『New Works』と題したDisc1は、前作『Tres Trick』以降に外山が書いた新曲と、「Dear Old Stockholm」「Speak Low」といったスタンダード・ナンバーのニュー・アレンジを収録。一方『Live』と題したDisc2は今年6月10日にTokyo TUCにて行われたライヴを収録したもので、特に人気の高いオリジナル曲のライヴ・アレンジのほか、「チュニジアの夜」「You Don't Know What Love Is」といったスタンダード・ナンバーも併せて収められています。 さらに詳細な解説などが記載されたブックレットを付録してお届けする外山トリオ初となる2枚組。これまでの10年を振り返りつつ、この先の10年20年も見据えた、非常に高い志が感じられる内容となりました。ライス・レコードが自信を持ってお勧めいたします!

[収録曲]
Disc1 「New Works」
01:It Would be Opened to you
02:Hidden Currents
03:Mystic Cathedral
04:Sky Above Dazzling Ocean (SADO)
05:Dear Old Stockholm
06:Harutooshi(春遠し)
07:The Time Begins to Walk
08:Speak Low
09:Song Without Words
10:Toward the 11th
Disc2 「Live」
01:Springlake
02:Nostalgia
03:Frame in Frame
04:誰もいなくならない
05:A Night in Tunisia
06:Under the Lilac Tree ~ Tres Trick
07:May Journey
08:You Don't Know What Love Is
09:Ballad of the Sad Young Men
10:Bassi Samba
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