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ジャズピープル

「やりたいことをやりたい」

サックス奏者 土岐英史×ピアニスト 片倉真由子
プロ・アマ問わず多くのミュージシャンが参加し、街を音楽に染める新開地音楽祭。毎年5月に開催されるこのイベントも今年で18回目となりました。第8回目以降から毎年トリを務めているのは、日本が誇るサックス奏者の土岐英史さん。そして、土岐英史クインテットとして今年3回目の参加となるピアニストの片倉真由子さん。新開地音楽祭目前に喫茶カシュカシュで行われたライブに出演されたお二人に、神戸のこと、互いの親子のことについてお話しをうかがいました。

person

土岐英史

1950年生まれ、神戸出身。中学時代にクラリネットを始め、16歳でプロデビュー。76年から松岡直也、山下直也、坂本龍一らと共演が始まる。78年NYでレコーディングした1stアルバム「TOKI」は米ダウンビート誌で四つ星半の高い評価を得る。山下達郎バンドのバックメンバーとして30年間、絶大な信頼を集めるその音は存在感があり、一度聴いたら耳が離せない極上のサウンドを放つ。現在は、土岐5、CHICKEN SHACK、TOKI & CRUISUNG 、6/6、などで活躍中。大阪音楽大学客員教授

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片倉真由子

1980年、宮城県仙台市出身。洗足学園短期大学入学と同時にジャズピアノに転向、ピアノを今泉正明氏に師事。同大学を首席で卒業後、奨学金を受け、バークリー音楽大学入学。在学中より、クリスチャン・スコット、 デイヴ・サントロらと演奏を重ねる。2004年のLitchfield Jazz Festivalに、デイヴサントロのピアニストとして出演。2005年、ジュリアード音楽院入学。ピアノをケニー・バロンに、アンサンブルをカール・アレン、 ベン・ウォルフに師事。2006年、Mary Lou Williams Women In Jazz Piano Competitionで優勝し、翌年5月に、同ジャズフェスティバルに自己のトリオを率いて出演。現在は自己のトリオをはじめ、土岐英史クインテット、伊藤君子グループ、ジーンジャクソントリオ、レイモンドマクモーリンカルテット、北川潔トリオなどのメンバーとして活動中。

interview

「目の前のお客さんを幸せにすること」。土岐さんと新開地音楽祭の素敵な関係。




── 土岐さんはもともと神戸ご出身だそうで、神戸にいらした頃の思い出とかおありですか?

土岐「僕が神戸にいた頃は、全然ジャズの街という感じではなかったです。関西でも高校の頃から仕事はしていて、そのときたまたま渡辺貞夫さんや鈴木勲さんと知り合うことができて、東京に行くだけで楽しかったです。大学の途中で関東に引っ越すことになったのもあって、そのままもうずっと東京ですね。」

── 今年で18回目となる新開地音楽祭は8回目からレギュラーで出演されています。

土岐「神戸の長田出身なので、新開地はよく遊びに行く場所でした。その頃三宮は全然で、神戸の都会といえば新開地だった。だから、子供の頃に大都会だと思っていたところで演奏できるっていうのはすごく嬉しいですね。音楽祭の会長さんからは『最低10年、死ぬまで出てください』って言われて、そんなことなかなか言われることないじゃないですか。だから、じゃあ出たいです、ということで毎年参加させてもらっています。」

── 他のこういった催しと比べて、新開地音楽祭はどんな印象をお持ちですか?

土岐「基本的に世界中どこでやろうがお客さんは変わらないです。日本人だろうがアメリカ人だろうが、お客さんは一緒。どこで演奏するにしても目の前のお客さんを幸せにすることが大切だと思っています。そういう意味でも、新開地はベストだと思います。あと、ここの趣旨はアマチュアが中心になっているのがいい。運営側も評論家やミュージシャンが関わっていないので、しがらみも生まれない。だから僕もなるべく口を出さないようにしています。本当にいい音楽祭で、僕は大好きです。」

── 片倉さんも土岐さんと一緒に新開地音楽祭に参加されていますね。

片倉「今年で3回目になります。他でも何度か神戸には来てますが、そうしょっちゅうということはないですね。」

── 土岐さんと片倉さんは普段からよく演奏されてるんですか?

土岐「彼女は年が若いのでそんな長い付き合いではないですが、ピアニストを探しているときに紹介してもらって以来、“よく”なんてレベルじゃない付き合いですね。」

片倉「月3,4回くらいは一緒ですよね。」

土岐「もうレギュラーだよね。今回の新開地音楽祭もレギュラーのクインテットに関西の広瀬未来を入れた構成になっています。このレギュラーのクインテットは僕の一番好きなユニット。片倉さんは仙台出身なんだけど、仙台でもデュオで一緒に演ったし。」

── 改めてお互いの魅力をお聞きしてもいいですか?

土岐「え、相手を前にして(笑)? この人はね、とにかくアンサンブルが上手いんです。ピアニストってアンサンブルが下手な人が多いんですよ。他の楽器は人と合奏して上手くなるものなんだけど、ピアノは唯一発表会で一人で演奏する楽器なんです。だから、上手いしいろいろできるんだけど、全員で合わせるのが苦手という人が意外と多いんです。でも、この人はそこを命がけでやってくって言うと大げさだけれど、本当に人と合わせるのが上手い。もちろんピアニストとしてもすごいんだけども、一緒に演っていて気持ちいいなと思うのはそこですね。……目の前で褒めてしまった(笑)。」

── 確かにジャズには欠かせない素質ですよね。

片倉「じゃあ今から私も言いますから、土岐さんは耳を塞いでてください(笑)。土岐さんは、演奏はもちろん尊敬してるんですけど、なによりバンドリーダーとして憧れますね。自分もリーダーをやることがあるので思うことなんですが、ツアーに出たときとか、バンドリーダーとしては当然毎日バンドをいい方向に持っていきたいと思うじゃないですか。でも、お客さんには伝わらないレベルでも、バンドの中には『なんか今日はちょっと…』という状況の日もある。そういうときに私だったらなんとかしなくちゃと思ったりするんですが、土岐さんは気づいていても全然焦らないんですよ。バンドのメンバーを信用しきっているからだと思うんですけど、どんと構えてて。リーダーに信用されるって、メンバーにとってはすごく大事なことで、結果必ず最後にはいい方向にいくんです。それがすごい。それにやっぱりこういうお人柄だから、みんな土岐さんに懐いちゃうんですよね。」

── 懐が深いんですね。レギュラーで演られているお二人だからこそ感じるお互いの魅力に話は尽きませんね。。

片倉「母に『貫禄出てきた』って言われました」。
奇しくも親子でプロミュージシャンなお二人。



── 片倉さんはプレーヤーであることはもちろんですが、現在学生さんへの指導もされています。やはりご自身で演奏されるのと人に教えるというのは違ったりしますか?

片倉「最近は教えることにやっと慣れてきたというか、授業で言ってることが自分のプレイにつながってくるようになりました。結局教えるのって自分に言ってるのと同義というか、自分もちゃんとできてるか返ってくる部分も多いので。まあ、私は教えのプロではないんですけど、やっと慣れてきたところではあります。」

── 土岐さんも神戸ヤマハで定期的にレッスンを行ったり、さまざまなところで後進の育成をされていると思いますが、いかがですか?

土岐「僕も教えのプロではないので、やっぱり教えるといっても自分も一緒にずっと吹いてますね。あと、ヤマハみたいなところだと定年退職して趣味で楽しみたいという人も来られるので、そうういう方には楽しむことを一番に感じてもらえるようなレッスンをしますよね。でもこういう人がちょっと吹けるようになったら僕もすごく嬉しい。音楽を楽しむという純粋なところがあるのがいいですね。」

── 中高生を相手にしたクリニックなんかもされてますか?

土岐「しますよ。僕も中学生からクラリネットを始めましたが、管楽器はそのくらいから始めるのがいいと思います。あんまり小さい頃からやっても管楽器は良くないと思う。重たいし、子どもの手の大きさに比べて楽器が大きすぎるし、口の形も難しい。あと、親御さんによく言ってるのは『楽器は買うな』って話ですね。最近は皆さん、早い段階で結構いい楽器を買い与えたりするんですが、そうするとだいたい続かないんですよ(笑)。買ってって言われても、しばらく焦らすと本気でやりたい子は本気を見せてくるので(笑)。だから音楽の世界に飛び込んでほしくなかったら、ぱっといいのを買ってあげるといいですよ(笑)。」

── 土岐さんも娘さんの麻子さんにはそうだったんでしょうか(笑)。

土岐「うちは勧めてはいないですね。二世はね、片倉さんも二世なんだけど、勝手に親の背中を見て、ぱっと振り返ったらいるって感じですよ。」

片倉「そういえばうちも一回も勧められなかったなあ。」

土岐「その方が順調にいくんだよね」

片倉「なってほしかったみたいですけど、うちの親は何も言わなかったですね。自発的に親のライブを観に行ったり、生活を見てたら自然と、という感じですね。でも親は、私が『将来ピアニストになりたい』って言ったときは『しめた!』と思ったみたいです。」

土岐「僕は親の立場だから思うんですけど、小さい頃からジャズなり何なり音楽が必ず鳴ってるじゃないですか。だから突然ジャズを聴いて興奮したとかではなくて、音楽は日常に当たり前にあるものという感じなんだよね。」

── 自然と音楽に触れて自然と音楽の世界に入っていくっていうのはいいですね。

片倉「そんな感じですね。本当に当たり前のように、生まれたときからずっと音楽に囲まれていたので。そういう意味でも両親には本当感謝しています。なれるかなれないかは別ですけど、なりたいという気持ちはずっとブレなかったですね。」

── やっぱりお子さんが音楽をやってくれるのは嬉しいですか?

土岐「僕はあんまり考えたことなかったけど、自分が一番やりたいことをやってくれるのが親としては嬉しいから、今そうなってるならいいよね。」

── 図らずともお二方とも親子でプロミュージシャンなの、すごいですね。

土岐「結構いるけどね。二世ってなんか演りやすいんですよね。」

片倉「そうそう、二世ってなんかみんな空気感が似てるんですよ。」

土岐「がつがつしてなくて信頼できる(笑)。」

片倉「ああ、そうですよね(笑)。私もだけど、みんなマイペースですよね。私が私がっていう感じではない。」

土岐「一言でいうとラクだね(笑)。やっぱり音楽が染み付いているからか、すごい演りやすいよね。」

── 貴重な二世トークを聞くことができました(笑)。最後になりますが、お二方のこれからの展望をお聞かせください。

土岐「展望…うーん、まあ僕はやりたいことをやりたいですね。こうやったらウケるだろうとか、そういうのは何も考えなくて、自分がやりたいことをやっていけたらと思います。」

片倉「それに尽きますよね。私も具体的にやりたいプロジェクトとかは浮かばないですけど、自分の信条として、自分のやりたいことに嘘をつかず、真面目にやっていきたいと思います。」

── もちろん大変なこともあるかと思いますが、お二方とも等身大で、楽しそうで、充実されてるようで素敵ですね。

片倉「そうですね、本当に楽しいです。でもずっとそうだったわけじゃなくて、私はこれまで無我夢中でやってきたという感じで、今ようやく自分のやりたいことを、やりたい人と、やりたいカタチで、いい感じでできるようになってきたと思います。やっぱりこうなるまでに時間は結構かかりました。単純に大人になったとも言えますけど、やっぱり10年は大きいですよ。この前母がライブに来てくれたんですけど『貫禄でてきたわね』って言われました(笑)。」

土岐「なんかいろいろ考えさせられるな(笑)」

── 今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!

interview

土岐英史×片倉真由子 LIVE 2018年5月9日(木)@喫茶cache cache(湊川)
サックスの音色に酔いしれる湊川の夜。
 神戸の下町・湊川商店街の中にある喫茶店カシュカシュ。日中は買い物途中に一息つけるカフェとして地元の皆さんに愛されているお店ですが、営業終了後には「こんな人が神戸に!?」とびっくりするようなアーティストが出演するライブ会場になることも。この日は日本を代表するサックス奏者の土岐英史さんの定期公演に、話題のピアニスト片倉真由子さんも参加するとあって、聞きつけたお客さんでお店は満員。 新開地音楽祭への出演を機に、湊川ではすっかりおなじみとなった土岐さんと片倉さんは共にリラックスした様子で登場。これまで何度となく音を合わせてきたお二人だけに、1曲目「C minor」からピッタリ生きの合ったプレイで会場を酔わせてくれます。震災の際に神戸復興を願って作られたこの曲を神戸で聴くことができるのは嬉しいサプライズです。
 2曲目はA.C.ジョビンの「How Insensitive」と続き、3曲目は土岐さんの新曲「Little Phoenix」。ゆったりとしたメロディにサックスの音色が心に沁みます。うってかわって明るく楽しいムードの「On The Trail」でファーストステージは終了。休憩をはさんでセンドステージも「Time To Smile」、「 It Could Happen To You」とポップな曲が続きます。音楽に身をまかせてただただ楽しめるのは、クオリティの高いお二人だからこそ。そして、渋くメロウなサックスの音色が美しい「After Dark」。最後はオリジナル「At The Jazz Club」、アンコールはデューク・エリントンの「In A Sentimental Mood」。最初から最後までサックスの音の魅力を改めて感じさせてくれる土岐さんの極上の音色とジャズのスピリットが染み込んだ片倉さんのピアノにうっとりと聴き惚れる湊川の夜でした。

information

[ライブ情報]
土岐英史ライブ

6/27(水)名古屋Jazz inn Lovely
土岐Session
土岐with小濱安浩Band
(ts.小濱安浩、p平手裕紀、b.徳田智史、d.倉田大輔)

6/28(木)お茶の水NARU 0332912321
土岐Session
(tp.市原ひかり、p.片倉真由子、b.上村信、d.奥平真吾)

7/15(日)青山Body&Soul 0354663348
土岐Session
(as.中島朱葉、p.片倉真由子、b.佐藤恭彦、d.奥平真吾)

7/20(金)六本木alfie 0334792037
土岐Group
(tp.市原ひかり、p.片倉真由子、b.佐藤恭彦、d.奥平真吾)

7/27(金)お茶の水NARU 0332912321
土岐Group
(tp.市原ひかり、p.片倉真由子、b.佐藤恭彦、d.奥平真吾)

8/8(水)大阪Mr.kelly's 0663425821
土岐Session
Duo with 宮川純p.

8/9~12京都RAG4days 0752410446
8/9(木)RAG1stDay
Toki- TOKU-esq
(vo.key.三谷泰弘、vo.flg. TOKU、key.宮川純、b.清水興、d.マーティブレイシー)

8/10(金)RAG2nd Day
New 4Alto
(as.寺地美穂、前田サラ、朝岡周、key.宮川純、b.清水興、d.マーティブレイシー)
8/11(土)RAG3rd Day
3Alto(20周年!)
guest:本田雅人as
(as.坂田明、伊東たけし、key.宮川純、b.清水興、d.マーティブレイシー)

8/12(日)RAG4th Day(最終日のみ17:00開場 18:00スタート!)
4Alto(10周年!)
(as.坂田明、伊東たけし、本田雅人、key.宮川純、b.清水興、d.マーティブレイシー)

8/17(金)六本木alfie
土岐Session
(as.加納奈美、p.宮川純、b.佐藤恭彦、d.奥平真吾)

8/30(木)お茶の水NARU
土岐Group
(tp.市原ひかり、p.片倉真由子、b.佐藤恭彦、d.奥平真吾)

詳細はWebsiteよりご確認ください。


片倉真由子ライブ
6/27 Satin Doll Special Session@Satin Doll
片倉真由子 山田拓児(as) 中西暁子(tp) 西口明宏(ts) 佐藤ハチ恭彦(b) 山田玲(d)

6/28 土岐英史5@お茶の水NARU
土岐英史(as) 市原ひかり(tp) 片倉真由子 上村信(b) 奥平真吾(d)

6/29 ジーンジャクソン3@Body&Soul
ジーンジャクソン(d) 片倉真由子 パットグリン(b)

6/30 伊藤君子@Body&Soul
伊藤君子(vo) 片倉真由子 坂井紅介(b) 海老沢一博(d)

詳細はBlogよりご確認ください。