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ORIVER NELSON'S BIG BAND
ジョージ.ラッセル。この人が語られることは滅多に無い。ビバップ全盛期に”Cubano Be”,“Cubano Bop”を提供したり、キャリアはとても長い人なのに。しかも今尚現役で教鞭を取っているのに。恐らくは彼は『リディアンクロマチックコンセプト』などの著作から、過剰に難解な音楽を書く人というイメージがついてしまい、それでとっつきにくいイメージが出来てしまったのではないかと思われるのだ。ジャズのカテゴリーの一つにジョージ.ラッセルのような東海岸でクラシカルとの融合みたいなことを追求する流れにサード.ストリームっていうのがあった。自分たちのやる音楽のモダニティを正当化するために理論武装をしている、という感じがする。一方、ウエストコーストのアレンジャー達はシェーンベルグなど当時のクラシカルの作曲家からも学んでいたので、特段そうした理屈は標榜しないで普通に譜面を書いていたように思われるし。それゆえに評論家からは頭でっかちだのスイングしないだの揶揄された面も否めない。とにかく、ラッセルの音楽は理論武装によりイメージが彼をより難解な音楽家というイメージにしているのかもしれない。あまりに個人的かつ大雑把なイメージ論なので反発を招くかもしれないが、リディアンクロマチックコンセプトは『音楽の上では何をやっても良いということの理論的裏付け』みたいなものだ。彼の理論を勉強したわけではないけれど、リディアンでクロマチックだったら確かに何でもアリだなぁ、って思うもの。彼がそうした理論武装をして出し続けた作品は今の耳で聴くと決してイメージするほど難解ではなく、50年前にこういう発想が出ていることのモダンさに驚く筈です。もうそろそろ『ジョージ.ラッセル=難解な理論で難しい音楽を書く人』っていう看板を下ろしてあげましょうよ。
Live From Los Angels
そんな訳で、まず、彼の一番有名かもしれないレコード、New York, Nyを紹介しましょう。オープニングのManhattanは、いきなり詞の冒頭のリズムのパターンをマックス.ローチが叩きます。続いてジョン.ヘンドリックスによるライムのラップが始まります。ビートとリズムだけでカッコいい。メロディなんかなくてもカッコいい状況をいきなり見せてくれます。私は余り詳しくないのですが、いわゆるビートニクスのポエトリー.リーディングなんかに直結しているのではないかと思います。この曲はスタンダードなのですが、原曲に忠実にやるというよりは、彼ニューヨークに対する思いみたいなのが詰まった感じです。確かにこの曲のコードチェンジも使われるのですが、イントロでのAutuum in New Yorkの断片の挟み込みなども含め、色々な仕掛けがあります。ソリストもボブ.ブルックマイヤー、ビル.エヴァンス、コルトレーン、アート.ファーマーなど豪華絢爛。ハードバップだのモードだのという世間一般のスタイルの分類なんて意味がない感じです。曲はそのまま次のBig City Bluesへと流れます。冒頭のアンサンブルやビル.エヴァンスのソロ部分(多分書かれた譜面)のサウンドはかなり強烈。日本の現代音楽界では武満や黛と言った巨匠のようにジャズに大きな影響を受けた人がいますが、実に納得です。曲はブルースと歌っていて、確かに12小節単位で動いているのですが、ベニー.ゴルソンのソロが出るところでようやく普通のブルースになって安心します(笑)。ソリストはゴルソンとファーマーとエヴァンスの三人ですが、これはファーマーの名盤、Modern Artと同じです。このレコードがきっかけだったのか なぁ、なんて勘ぐったりします。アウトロもアヤシくていいなぁ。3曲目はmanhattan-rico。冒頭のライムではビバップ期のパーカー達がアフロキュー版を取り入れた頃のことが語られているようです。アフロキューバンジャズと言えばラッセルにはCubano-Be, Cubano- Bopという看板ソングがあり、ある意味アフロキューバンのイノヴェイターですもんね。アフロの部分はややアブストラクトで4ビートになると割と普通になる感じで、音楽でのテンションとリリースをそういうバランスで取っている感じがします。クレジットを見るとラッセル本人がクロマチックドラムなるもので参加しています。チューニングしたタムを並べたようです。 4曲目はメドレー。Autumn in New YorkとHow About Youという二曲のスタンダード。真ん中にHow About Youが挟まる感じですね。これはかなりオーソドックスなアレンジです。 5曲目のA Helluva Townは今風に言えばリプライズですね。一曲目のイントロ部分を拡張した感じ。ジョン.ヘンドリックスの冒頭のフレーズのリズムをマックス.ローチが手を替え品を替え色々な所で叩くアプローチは実に面白いです。タイコで言語的なコミュニケーションを取るというアフロなトラディションみたいなものを感じさせてくれます。

メンバーを見ていると分かるのですが、ジョージ.ラッセルのバンドはスタイルを問わずにゴキゲンなソリストを揃えて、後は譜面に強いスタジオ系の人で構成されています。ラッパに特に顕著です。そういえば、80年代に日本でやった時も日米混成で日本側は数原さんとかバストロ の岡田さんとか凄腕ばかりだったもん。いずれにしても、本作はジョージ.ラッセルの入り口としては相当とっつきやすいレコードではないかと思います。

収録曲

1. Manhattan

2. Big City Blues

3. Manhattan-Rico

4. Easrt Side Medley:

Autumn in New York

Hou About You

5. Helluva Town

参加アーティスト

George Russell(arr, cond, chromatic drums)

Art Farmer, Doc Severinsen, Joe Wilder, Ernie Royal, Joe Ferrante (tp)

Bob Brookmeyer, Frank Rehak, Jimmy Cleveland, Tom Mitchell (tb)

Hal McKusick, John Coltrane, Al Corn, Phil Woods, Sol Schlinger (sax)

Barry Galbraith(g), Bill Evans(p), Milt Hinton(b), Max Roach(ds), Don

Ramond(ds), Al Epstine(perc)

Skull Session
ついでに手元にあったのでもう一枚(笑)。1982年のライブレコーディングを紹介しましょう。これはスモールビッグバンド的なセッティングなんですが、メンツが強力。しかもライブ故に一曲が長い。ということはラッセルの変態な譜面の上で強者ソリストが暴れまくるという構図が見えるわけです。だって一枚で3曲ですよ(笑)。そんなわけで一曲目のTime Spairalは22分という長尺です。時代の流れという訳ではないですが8ビート系だったりしますし、後半ではロン.マクルーアがエレベ持ってスラップ弾くというかなり珍しい状況になっています。タイコがヴィクター.ルイスだからどんなビートでも対応出来るとはいえ、この展開はレアです。しかもこの後半部分は相当カッコいい。ギルやカーラ.ブレイとは違う展開の面白さがあると思います。最終的には冒頭の雰囲気に帰っていきますが。

二曲目は多分この人の曲で一番知られていそうなEzz-Thetic。この曲はLove For Saleが元になっているというのもライナーを見て知りましたが、こういうメロディラインを1950年代に書いてるんだからやっぱり強烈です。徹頭徹尾高速4ビートの上をソリストが吹き倒れる構図になっています。日本では全く知られてないマーティ.アーリッヒの長尺のソロが聴けます。しかもギターのジェローム.ハリスの後ろに続くトム.ハレルのソロが強烈。今と違うバリバリしたサウンドで吹きまくるので、ライナーを見るまで彼だとは思いませんでした。で、そのあとにレイ.アンダーソンの凶暴なソロが来るのだから会場は否応無く盛り上がります。しかもサックスソリまである彼にしては極めてオーソドックスな譜面。こんなアレンジばかり集めたコンパイルでもあればみんなやりたいって思うだろうなぁ。この譜面、欲しいです。

三曲目は60年代に書かれたD.C Divertiment。一曲ですが、中で3パートくらいに分かれている感じがします。静謐なスローなパートから始まりますが、この辺の気配はジャズ的ではありつつもコープランド以下のアメリカのクラシカルな楽壇との親和性も感じられるような気がします。ミディアムの4ビートを刻み始める辺りからリズムの変化が激しくなって、3/2拍子になるあたりから俄然バンドがドライブします。

ジョージ.ラッセルはなんだかキワモノみたいに見られがちですが、オーケストラル.ジャズがここまで多様化している今、改めて彼の昔の音を聴いていると、先見性っていうかあのころにこういう音を作っていたことに改めて驚かされます。評論家の文言に騙されてた感じ。ジョージ.ラッセルってカーラ.ブレイやケニー.ウィーラーやマリア.シュナイダーみたいなサウンドが普通になった今こそきちんと日本でも再評価されていいんじゃないかな。New York, Nyは今でも時々国内盤が再発されるし、Time Spiralの方はマイナーだけど絶版にはなってないはずなので輸入盤探せば出ると思います。このイタリアのsoul noteは面白いもの多いですしね。

収録曲

1.Time Spiral

2. Ezz-Thetic

3. D.C. Divertimento

参加アーティスト

George Russell(arr, cond)

RonTooley, Stanton Davis, Brian Lynch, Tom Harrell (tp)

Ray Anderson, Earl McIntire(tb)

Marty Erlich, Doug Miller, Bob Hamilton(woodwinds)

Jerome Harris(g), Jack Reilly(key), Mark Soskin(p), Ron McClure(b),

Victor Lewis(ds)

 
著者Profile
 
 
 
辰巳哲也( たつみ てつや)
 
DAVE鈴木
 
   
神戸市生まれ。10歳から本格的に楽器を始め、大学入学後ジャズに傾倒。卒業後しばらく会社勤めをしてプロに転向。神戸在住時にAtomic Jazz Orchestra, 西山満氏のHeavy Stuffなどにも参加。98年Global Jazz OrchestraでMonterey jazz Festivalに出演。98年、秋吉台国際芸術村でのアーチスト.イン.レジデンスにAssociate Artistで参加、Dr. Fred Tillis氏の薫陶を受ける。2001,2003年にPersonnage Recordingよりアルバム発表。打込みを含むほとんど全てのトラック制作を行い、クラブジャズのフィールドでロンドンや北欧で反響を呼ぶ。2004年にジャズライフ誌にて「トランペット超初級者コース」連載。50年代ウエストコーストジャズを回顧するオクテット、Bay Area Jazz Ensembleを主宰し、それを母体としたビッグバンドも展開している。一方で2005.6年とThe Five Corners Quintetのトランペット、Jukka Eskolaとジョイントし、2008年にはTom Harrellと東京でセッションを行いラッパ関係者の間で大きな話題となった。Eddie HendersonやCarl Saundersを初め、多くの海外のミュージシャンとも親交が深い。Lincoln Center Jazz OrchestraのEducational Programでの通訳サポートなど、演奏のみならずジャズ教育のフィールドにも関与。『ジャズ』という記号のある音楽であればなんでもやるオールラウンダー。IAJE会員。
 
http://www.myspace.com/
tetsujazz

http://members3.jcom.
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