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ウディー・ハーマン
ウディ.ハーマンという人はエリントン、ベイシーと言った大御所と肩を並べてもおかしくないくらいの実績のあるバンドリーダーだと思うのですが、案外忘れられている気がします。彼らが健在であった頃は、スタン.ケントンやウディ.ハーマンに参加してからNYでメル.ルイスに行く、みたいな叩き上げの流れが白人ジャズミュージシャンにはあったのです。だから、今では有名な人の若い時代のプレイが聞けたりするなんていうことが良くあったりします。決して40年代のFour Brothersだけではないのです。そんなわけで、今回は1970年代のウディ.ハーマンのレコードをいくつか紹介しましょう。
Giant Steps
ウディ.ハーマンのバンドの魅力というか、バンドのカラーは「その時 代の流行りものをどんどん取り入れる」というものでした。それは初期 のファースト.ハードからサードハードと言った時代からそうだし、今 回紹介する Thundering Herdでも全く変わっていません。最初に 紹介するGiant Stepsでは、コルトレーンの表題曲やEddie HarrisのFreedom Jazz Dance, George CablesのThink On Me等と言ったモダンジャズに混ざって、コリアのLa Fiestaとか レオン.ラッセルのSong For Youなんかも入っていますね。この あたりの曲は昔は売り譜が存在していたので、日本の学生バンドでは昔 からのレパートリーになっているものが多いのではないでしょうか。 キャッチーで取っ付きやすい素材をアレンジしているので、今のとにか くモダンなサウンド、というのと違う魅力があると思います。このアル バムは近年のクラブジャズDJがバディリッチを回したりした影響 でビッグバンドのアップテンポのいいトラックが入ったものが復刻され た流れで最近再発されたもので、個人的には非常に懐かしいものがあり ます。もはやベテランピアニストのAlan BroadbentのBe-Bop and Rosesも収録されていますね。これはこの時期のライブ盤にも入ってい ますね。

収録曲

1. Fiesta

2. Song for You

3. Freedom Jazz Dance

4. Meaning of the Blues

5. First Thing I Do

6. Think on Me

7. Giant Steps

8. Child Is Born

9. Be-Bop and Roses

参加アーティスト

メンバー不明。

Thundering herd
こうした流れにあるアルバムとしてもう一枚、Thundering Herd も紹介しましょう。ここでもコルトレーンのLazy Birdや Naimaに混じってフランク.ザッパやキャロル.キングやスタンリー. クラークがネタにされてます。ここでのLazy Birdは、無理なハ イノートも出て来ない、コンパクトで実にいい譜面だったと思います。 このアレンジを書いたBill Stapletonはプレイヤーとしても非常 に魅力的だったのですが、80年代半ばに亡くなってしまっています。 トロンボーンのジム.ピューをフィーチャーしたWhat are you doing the rest of your lifeも色々な大学のビッグバンドの譜面のリストの 中にあるんじゃないかな。

この二枚のアルバムではフェンダーローズがふんだんに使われていま す。ビッグバンドにローズってカッコいいんですよ。時々ファズの使い 方とかに時代を感じることもありますが、もっと認められてもいいで しょうね。もちろんボブ.フローレンスみたいに最初からエレピを想定 して書く人もいるわけですが。

収録曲

1. Lazy Bird

2. Blues for Poland

3. What Are You Doing the Rest of Your Life?

4. America Drinks and Goes Home

5. Naima

6. Corazon

7. Come Saturday Morning

8. Bass Folk Song

参加アーティスト

Woody Herman(ss,as)

Dave Stahl, Buddy Powers, Bill Stapleton, Tony Klatka Bill Byrne(tp,flh)

Jum Pugh, Steve Kohlbacher, Harold Garrett(tb)

Frank Tiberi, Gerg Herbert, Gary Anderson, Jan Konopasek(saxes)

Andy Laverne(p), Chip Jackson(b), Ron Davis(ds), John Rae(perc),

Richard Dollarhide(conga)

Woody and Friends
70年代のウディ.ハーマンということで、もう一枚。79年のモンタ レイ.ジャズフェスティバルのライブ盤、Woody and Friendsも 紹介しましょう。ウディ.ハーマンのライブアルバムでは時々ゲストを 呼んでやったものがあり、その多くが大抵はFour Brothers的な 関係になるのですが、ここではDizzy Gillespie, Woody Shaw, Slide HamptonにStan Getzという豪華な布陣です。ゲッツはさっき紹介 したWhat are yo doing....でフィーチャーされます。スタジオ 録音のジム.ピューのも悪くないのですが、流石はゲッツ、役者が違う 感じです。 ゲストの入った演奏も豪華なのですが、バンド自体のポテンシャルが素 晴らしいです。コルトレーンのカウントダウンでのコルトレーンのソロ をハーモナイズしたサックス隊の鬼のソリであるとか、今とまったく変 わらないゲイリー.スムリアンのバリトンのソロであるとか、聴き所満 載なのです。ウディ.ハーマンは常々『若くてガッツのあるプレイヤー を連れて来い。そうしたら世界でも最高のバンドを作ってやる』って豪 語していたそうなのですが、こうした演奏を聞いていると、彼のバンド リーダーとしての才能の素晴らしさを感じずにはいられません。御大本 人のソプラノサックスやクラリネットのソロについては色々思う方がい らっしゃるでしょう(笑)。でも、こういうバイタルなバンドを生涯率 いたそのパワーには敬服の念あるのみです。

最晩年のハーマンバンドにはJohn Fedchockがレジデンシャル. アレンジャーとして多くのアレンジを書き、またマリア.シュナイダー も参画しました。その意味ではウディ.ハーマンは終生『モダンなビッ グバンドを率いること』を貫いたと思います。もちろん今でもウディ. ハーマン.ビッグバンドは大番頭のフランク.タイベリが引き継いで、 いわゆるゴーストバンドとして機能しています(フェッチョックも度々 参加しています)。ウディ.ハーマン的なバンドのあり方は、多分ジョ ン.フェッチョックのバンドがそれを受け継いでいると思います。が、 彼のバンドのような今のモダンビッグバンドのプロトタイプとして、ウ ディ.ハーマンももっと再評価されるべきではないか、と思います。私 が学生の頃、案外この時期のハーマンの譜面をやったことが自分にそう 思わせるのかもしれないのですが(笑)。
収録曲

1. Introduction

2. Caravan

3. I Got It Bad (And That Ain't Good)

4. Countdown

5. Better Get Hit in Yo' Soul

6. Woody 'N You

7. What Are You Doing the Rest of Your Life?

8. Manteca

参加アーティスト

Woody Herman(ss,as,cl)

Jim Rodoriguez, Tim Burke, Kitt Reid, Jim Powell, Bill Byrne(tp)

Birch Johnson, Nelson Hinds, Larry Shank(tb)

Frank Tiberi, Dick Mitchell, Bob Belden, Gary Smlyan (saxes)

Dave Lalama(p), Dave Larocca(b), Ed Soph(ds)

guest artist

Stan Getz(ts), Dizzy Gillespie(tp), Slide Hampton(tb), Woody Shaw(tp)

 
著者Profile
 
 
 
辰巳哲也( たつみ てつや)
 
DAVE鈴木
 
   
神戸市生まれ。10歳から本格的に楽器を始め、大学入学後ジャズに傾倒。卒業後しばらく会社勤めをしてプロに転向。神戸在住時にAtomic Jazz Orchestra, 西山満氏のHeavy Stuffなどにも参加。98年Global Jazz OrchestraでMonterey jazz Festivalに出演。98年、秋吉台国際芸術村でのアーチスト.イン.レジデンスにAssociate Artistで参加、Dr. Fred Tillis氏の薫陶を受ける。2001,2003年にPersonnage Recordingよりアルバム発表。打込みを含むほとんど全てのトラック制作を行い、クラブジャズのフィールドでロンドンや北欧で反響を呼ぶ。2004年にジャズライフ誌にて「トランペット超初級者コース」連載。50年代ウエストコーストジャズを回顧するオクテット、Bay Area Jazz Ensembleを主宰し、それを母体としたビッグバンドも展開している。一方で2005.6年とThe Five Corners Quintetのトランペット、Jukka Eskolaとジョイントし、2008年にはTom Harrellと東京でセッションを行いラッパ関係者の間で大きな話題となった。Eddie HendersonやCarl Saundersを初め、多くの海外のミュージシャンとも親交が深い。Lincoln Center Jazz OrchestraのEducational Programでの通訳サポートなど、演奏のみならずジャズ教育のフィールドにも関与。『ジャズ』という記号のある音楽であればなんでもやるオールラウンダー。IAJE会員。
 
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