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Gerald Wilson Orchestra"New York New Sound"
Gerald Wilson。ビッグバンドが盛んだと言われているこのニッポンで、この人の名前がほとんど上がってこないのは全く不思議だ。この人は今年90になるけど今も元気でLAをベースにしておよそ60年に渡って自分のビッグバンドを率いている人なのです。最近のクラブミュージックシーンのジャズ流行りの流れの中で彼の60年代のレコードにスポットが当たったりもしていますが、今回は最近の録音を紹介しましょう。
The New YorkGerald Wilson Orchestra
このレコードはLAではなくニューヨークで制作されています。ジェラルドの息子でギタリストのアンソニー.ウィルソンがNYCに引っ越して活動しているので、「お前親父連れてこいよ!」的なノリで実現したのではないかと思われるのですが、なにせメンバーが豪華です。「親父連れて来たんだったら俺も乗せてくれよ!」っていう感じのベテラン勢から、かつてバンドメンバーであったであろう若手~中堅を含めて相当凄いことになっています。なんたって1939年にジミー.ランスフォードのバンドにいたという、最後のビッグバンドの生き字引ですもんね。

まずはマイルスのMilestonesからスタート。豪華なソロ回しです。個人的にはジミー.オーエンスのソロが久しぶりに聴けて嬉しい。あ、あとジミー.ヒースも。アンサンブルもなかなかに重厚です。2曲目はBlues for the Count。ケニー.バロンがベイシーを意識した弾き方をしているのが可笑しいのですが、ソリストは彼以外全員ベイシー関係者。クラーク.テリー、フランク.ウェス、デニス.ウィルソンの3人が回します。ね、豪華でしょう(笑)。3曲目はコルトレーンのEquinox。ピアノはリニー.ロスネス。トロンボーンセクション4人が4バースでソロを回します。ボブ.クランショウがエレベを弾いてます。タイコはStix Hooper。70年代前半のクルセイダーズを知る人には懐かしい名前ですね。4曲目、来ましたViva Tirado。ジェラルドの曲の中では相当有名なトラックでしょう。っていうかこの人の過去のレコードではこれをやってた60年代のが一番入手しやすいのではないかな。いいトラックです。5曲目はバラードのTeri。基本的にジェラルドの音楽はハーモニーが厚いのですが、これなんかはそれの典型な感じがします。息子でギタリストのアンソニーがフィーチャーされるんですが、この人がまた巧いんだよなぁ。6曲目も代表曲のひとつであるBlues for Yna Yna。90年代のLAでの吹き込みよりしっとりした仕上がりになってるなぁ。7曲目のTheme for Montereyは個人的にジェラルドを初めて生で見た時の、98年のモンタレイのまさにこれの初演でした。個人的には向こうの風景が浮かびます。8曲目のM Capetilloはラテン物。ギターに大御所オスカー.カストロ.ネヴィスが参加。M9はバラード。ジェラルドの譜面は管楽器がコードを吹いている状態がかなり多いという印象があって、ピアニストが左手でいつもみたいにコンプしちゃうと却ってぶつかるのでは?と思うのですが、そこはケニー.バロン、流石です。クロージングのNancy Joはブルースを援用したアップテンポナンバー。ゴキゲンです。このアルバムは10曲中8曲がオリジナルです。ジェラルドのメロディメイカーとしての実力も十分出ていると思います。私もモンタレイで見るまでこの人を知らなかったのですが、LAの黒人のビッグバンドとして数多くのミュージシャンを生み出した大ベテランの仕事っぷりに是非耳を傾けてもらいたいと思います。
参加アーティスト
Trumpets:Clark Terry (2,6)、John Faddis(1,2,5,6,8,9,10)、Jimmiy Owens、Eddie Henderson、Frank Green(3,4,7)、Sean Jones
Trombones:Benny Powell、Luis Bonilla、Dennis Wilson、Douglas Purviance
Saxophones:Jimmy Heath、Frank Wess、Jesse Davis、Jerry Dodgion、Jay Brandford
Piano:Kenny Barron(1,2,5,6,8,9,10)、Renee Rosnes(3,4,7)
Guitar:Anthony Wilson、Oscar Cstro-Neves(8)
Bass:Larry Ridley(1,4,6,8,10)、Trey Henry(5,7,9)、Bob Cranshaw(2,3,5)
Drums:Lewis Nash(1,5,6,8,9,10)、Stix Hooper(2,3,4,7)
Percussion:Lenny Castro(4,8)
著者Profile
辰巳哲也( たつみ てつや)
DAVE鈴木
神戸市生まれ。10歳から本格的に楽器を始め、大学入学後ジャズに傾倒。卒業後しばらく会社勤めをしてプロに転向。神戸在住時にAtomic Jazz Orchestra, 西山満氏のHeavy Stuffなどにも参加。98年Global Jazz OrchestraでMonterey jazz Festivalに出演。98年、秋吉台国際芸術村でのアーチスト.イン.レジデンスにAssociate Artistで参加、Dr. Fred Tillis氏の薫陶を受ける。2001,2003年にPersonnage Recordingよりアルバム発表。打込みを含むほとんど全てのトラック制作を行い、クラブジャズのフィールドでロンドンや北欧で反響を呼ぶ。2004年にジャズライフ誌にて「トランペット超初級者コース」連載。50年代ウエストコーストジャズを回顧するオクテット、Bay Area Jazz Ensembleを主宰し、それを母体としたビッグバンドも展開している。一方で2005.6年とThe Five Corners Quintetのトランペット、Jukka Eskolaとジョイントし、2008年にはTom Harrellと東京でセッションを行いラッパ関係者の間で大きな話題となった。Eddie HendersonやCarl Saundersを初め、多くの海外のミュージシャンとも親交が深い。Lincoln Center Jazz OrchestraのEducational Programでの通訳サポートなど、演奏のみならずジャズ教育のフィールドにも関与。『ジャズ』という記号のある音楽であればなんでもやるオールラウンダー。IAJE会員。
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