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ケニー・クラーク フランシー・ボラン
今回はヨーロッパのビッグバンドを取り上げてみましょう。60年代後期のヨーロッパのビッグバンドの代表格がこのKenny Clarke-Francy Boland Big Bandです。このバンドはヨーロッパに移住したアメリカ人ミュージシャンと現地のミュージシャンの混成ビッグバンドなのですが、なんたってメンバーが豪華です。バンドリーダーのケニー.クラークはもちろんのこと、Benny Bailey, Idrees Sulieman, Johnny
Griffin, Sahib Shihabuなんていうのがゴロゴロしてます。ヨーロッパの多国籍軍型ビッグバンドと言えば、現在ではジョルジュ.グルンツなのですが、グルンツが芸達者を揃えて劇場的でアクロバティックな音楽をやりがちなのに対して、クラーク=ボラーンはあくまでトラディショナルなビッグバンドサウンドを展開しています。本作と続編のMore Smilesはスタンダード主体の選曲になっています。
Stan Kenton
このバンドは何故かツインドラムなのですが、ビバップドラミングの開祖と言われるケニー.クラークの叩き方が非常に軽快で、ドラムがオカズ入れて煽りまくるみたいなことはあまりせず、非常にスマートにビートが流れます。このページをご覧になる方でいわゆるクラブジャズやnu jazzもお好きな方がどれだけいるのか良く分からないのですが、実は数年前からのいわゆるヨーロッパのクラブジャズ方面のクリエイターにはこのあたりの音楽は非常に大きく影響を受けています。このレコードではないですが、サンプリングのネタで使われたりもしましたし。このバンドのアルバムが復刻されたのはそうしたKoopやNicola Conte達の音楽が脚光を浴びた影響だと私は思っています。

このレコードのレーベルはMPSですが、ここのは音がいいことで有名です。昔のレコード会社はVictorやらCBSやら、放送局やオーディオメーカーが持っててこうしたレコードが売れることがそうした会社の宣伝にもなっていた訳ですが、MPSはドイツ大手のBASFなんです。そりゃぁいい音でしょう。この時代特有のエコーの残り方、アメリカの録音とかなりバランス感覚の違うミックスがいかにもヨーロッパの音だと感じられます。

ハイエンドのオーディオシステムで聴いたらさぞかしゴージャスでしょう。
あ、音楽のことをあまり書いていませんでした。非常にオーソドックスですし、ラッパがハイノート吹きまくりとかいうのとはほぼ無縁です。もしも譜面がきちんとした形で残っているならば、やる価値十分です。こういう難しくない譜面をきちんとスイングさせるのは難しいんです。学生バンドや社会人バンドなどではわりと難解複雑系なモダンな譜面を探す傾向にあるようですが、こういうのをきちんと演奏するバンドっていうのも出てきて欲しいですね(笑)。

クラーク=ボラーンのアルバムはさっき書いた通り、クラブジャズ関係者のおかげで数年前に輸入盤でドカンと再発されましたので、まだまだ入手しやすい状況だと思われます。こういうのをCDで買って、リアルタイムでLPで聴いてた世代のメンバーを驚かしつつ話に花が咲いたりするのは、社会人ビッグバンドならではの愉しみではないかと思われます。また入手困難になる前に是非聴いてみて下さい。
収録曲
1. Let's Face The Music And Dance
2. I'm All Smiles
3. You Stepped Out Of Dream
4. I'm Glad There Is You
5. Get Out Of Town
6. By Strauss
7. When Your Love Has Gone
8. Gloria's Theme (From "Butterfield Eight")
9. Sweet And Lovely
10. High School Cadets
Kenny Clarke-ds, co-leader/ Francy Boland-piano, co-leader
Trumpets: Benny Bailey, Idrees Sulieman, Jimmy Deuchar, Sonny Grey
Trombones: Ake Persson, Nat Peck, Eric Van Lier
Saxophones: Derek Humble, Johnny Griffin, Tony Coe, Ronnie Scott,
Sahib Shihab
Bass:Jimmy Woode
Drums: Kenny Clare
Vibe: Dave Pike
著者Profile
辰巳哲也( たつみ てつや)
DAVE鈴木
神戸市生まれ。10歳から本格的に楽器を始め、大学入学後ジャズに傾倒。卒業後しばらく会社勤めをしてプロに転向。神戸在住時にAtomic Jazz Orchestra, 西山満氏のHeavy Stuffなどにも参加。98年Global Jazz OrchestraでMonterey jazz Festivalに出演。98年、秋吉台国際芸術村でのアーチスト.イン.レジデンスにAssociate Artistで参加、Dr. Fred Tillis氏の薫陶を受ける。2001,2003年にPersonnage Recordingよりアルバム発表。打込みを含むほとんど全てのトラック制作を行い、クラブジャズのフィールドでロンドンや北欧で反響を呼ぶ。2004年にジャズライフ誌にて「トランペット超初級者コース」連載。50年代ウエストコーストジャズを回顧するオクテット、Bay Area Jazz Ensembleを主宰し、それを母体としたビッグバンドも展開している。一方で2005.6年とThe Five Corners Quintetのトランペット、Jukka Eskolaとジョイントし、2008年にはTom Harrellと東京でセッションを行いラッパ関係者の間で大きな話題となった。Eddie HendersonやCarl Saundersを初め、多くの海外のミュージシャンとも親交が深い。Lincoln Center Jazz OrchestraのEducational Programでの通訳サポートなど、演奏のみならずジャズ教育のフィールドにも関与。『ジャズ』という記号のある音楽であればなんでもやるオールラウンダー。IAJE会員。
http://www.myspace.com/
tetsujazz

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