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NYのトロンボーン奏者&作編曲家、John Fedchock
ジョン・フェチョックは最晩年期のウディ・ハーマンのレジデンシャル・アレンジャーでもあり、今でもフランク・タイベリが引き継いでいるウディ・ハーマンバンドの仕事があると参加しています。ジョン・フェチョックの譜面は、マリア・シュナイダーや、ボブ・フローレンスとは対照的に、ほとんど楽器の持ち替えを要求しません。これは彼がハーマンのようなツアー・バンドに長く在籍したことと関係があるのではないかとと思われます。旅の多いバンドで持ち替え多いと楽器の数が多くなり大変だからです。ですので、彼のバンドのサウンドはいつも正統派ストロング・スタイルのモダン・ビッグバンドなサウンドです。メンバーは半分くらい(サックス隊はほとんど)マリア・シュナイダーと被っており、当然のことながらニューヨークを彷彿させるサウンドです。
今回は、ジョン・フェチョックの2006年の最新の録音をご紹介させていただきます。
UP&RUNNIN
ニューヨークのトロンボニスト、ジョン・フェチョックが80年代後半から率いているNew York Big Bandの2006年の秋の最新録音です。

1曲目でタイトル・チューンの「Up & Runnin」はオープナーらしいアップテンポのナンバー。ソリストは当然腕達者揃いなのですが、自分もトランペットを吹くのでトランペットのスコット・ウェンホルトについて一言書いておきたい。恐らくは几帳面な性格だと思われ、ニューヨークのフルバンドのトランペットセクションには欠かせない人であるようで、色々なところで見かけます。日本だとライアン・カイザーだけに目が行きがちですが、スコットをはじめ、上手い人がいっぱいいます。

2曲目「Embraceable You」はガーシュウィンの名曲。ベタなバラードにせずにポリリズミックに6/8や3拍子系に自在に動けるような作りになっています。ジョンもそうなんですが、アンサンブルでのクローズド・ヴォイシングでのクラスターな感じの音の重ね方っていうのはとても魅力的です。

3曲目「Moment's Notice」はコルトレーンの人気曲。90年代くらいから、コルトレーンの音楽を過剰にスピリチュアルにさせない解釈というのが一つの流れとしてあるように思えます。そういえばミンツァーも以前コルトレーンをラテンジャズ的にアレンジしたアルバムがあったような気がします。ジョンのラテンのアレンジ、カッコイイものが多いんですよね。最後にTony Kadleckにハイノート吹かせたり、お約束もきっちり決めてます。

4曲目「Dedicated To You」はチャップリンの曲とクレジットされています。歌詞をSammy Cahnがつけています。不勉強なのでどの作品で使われた曲なのか分かりませんが、いい曲です。Smileを書く人だけのことはあります。ソロはジョンの独壇場です。

5曲目「Alfie's Theme」はロリンズでお馴染みのアルフィーのテーマ。どうしてもテナーのイメージが重くなるこの曲でバリトンのゲイリー・スムリアンのフィーチャーにしたのは大正解。ゴツゴツして男っぽくてファンキーな味わいがたっぷり楽しめます。ちなみにゲイリーもウディ・ハーマン在籍者でした。
6曲目「J Birds」はスティーヴ・デイビスとの2トロンボーン。スティーヴは去年リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラに参加していましたね。同じ楽器で二人でソロの曲を演奏する場合、トランペットやテナーだとどうしてもバトルになりがちですが、ここでは「いい会話」になっています。J.J.ジョンソンとカール・フォンタナへのトリビュートナンバーです。

7曲目「Elvin's Empire」ですが、ドラマーへのトリビュート作品っていうのはなかなかないものですが、来ました。直訳すると「エルヴィンの帝国(笑)」。もちろんドラムがエルヴィンのイタコになってるというワケではなくて、コルトレーンのあのカルテットみたいなサウンドスケープの曲になっています。ピアノのアレン・ファーナムがマッコイ化してます。ここでのテナーのソロはリック・マーギッツァ。ごく一瞬マイルスのバンドにも乗ったことがあるんですが、この人は巧いです。個人的にはエリック・アレキサンダーなんかよりよっぽど好きです。ソロはこれ一曲だけなので、興味のある人はマリア・シュナイダーをチェックして下さい。

8曲目「Theme for Ernie」もバラード。ここで見得を切るのはリッチ・ペリー。Steeplechaseレーベルからにリーダー作のアルバムを沢山リリースしているベテランですし、マリア・シュナイダーや、ヴァンガード・ジャズ・オーケストラににも良く参加している人でもあります。もう貫禄十分!

9曲目「The Ariztocreat」はかつてのボス、ウディ・ハーマンへのトリビュート。いまではもう亡くなってしまったけれど、白人ジャズミュージシャンの叩き上げコースとして、ケントン~ハーマン~メル・ルイスっていうのは明確に存在していたと思います。ジョー・ロヴァーノとか、トム・ハレルとか、挙げるとキリがありません。多分このジョンのバンドもハーマン・バンド在籍経験者比率はかなりのものであると思われますし、ここでのソリストは皆ハーマン出身です。ベースのリン・シートンは現在はノーステキサスで教鞭を取っていますが、この録音の為に呼ばれたのではないかと邪推してしまいます。

10曲目「Mr. Dudley」はセカンドラインのリズムで書かれています。ビッグバンドでセカンドラインというとLCJOみたいですが、ああいうオーセンティックなのではなくかなりモダンな曲です。ソリストにバス・クラリネット、っていうのは作戦勝ち。これを普通のクラリネットでやると「いかにも」になっちゃいます。
私は10年くらい前にこのバンドをニューヨークで見ましたが、非常に素晴らしいバンドでした。毎週ライブをやるというような状況ではないのですが、20年近くに渡ってこうして自身のリーダー作のアルバムを出すというのは素晴らしいことです。もっと続いて欲しいなぁとアルバムが出る度に安堵しながら思います。

レビュー協力:辰巳哲也
収録曲
1. Up & Running [ John Fedchock ]
2. Embraceable You [ George Gershwin / arr. John Fedchock ]
3. Moment's Notice [ John Coltrane / arr. John Fedchock ]
4. Dedicated To You [ Cahn, Chaplin / arr. John Fedchock ]
5. Alfie's Theme [ Sonny Rollins / arr. John Fedchock ]
6. J Birds [ John Fedchock ]
7. Elvin's Empire [ John Fedchock ]
8. Theme for Ernie [ Fred Lacey / arr. John Fedchock ]
9. The Ariztocreat [ John Fedchock ]
10. Mr. Dudley [ John Fedchock ]
参加アーティスト
[Saxophones] Mark Vinci, Charles Pillow, Rich Perry, Rick Margitza, Gary Smulyan
[Trumpets] Tony Kadleck, Craig Johnson, Scott Wendholt, Kerry MacKillop, Barry Ries
[Trombones] John Fedchock, Keith O'Quinn, Steve Davis, Marshall Gikles, george Flynn
[Rhythm] Allen Farnham (piano), Lynn Seaton (bass), Dick Sarpola (bass), Dave Ratajczak (drums), Bobby Sanabria (percussion)
Reservoir 188
ジョン・フェチョックの曲の多くは、アメリカのKendor Musicより出版されています。このCDからも今後楽譜が出版されるかも知れませんので、要注目です。
著者Profile
DAVE鈴木
1962年生まれ。まっとうな会社員だったが、ビッグバンドの世界にのめり込み楽譜やCDの個人輸入にはまり脱サラ、ミュージックストア・ジェイ・ピー設立。現在に至る。
どこで買えるの?
ここで、ご紹介したCDは、DAVE鈴木の運営するミュージックストア・ジェイ・ピーのホームページ http://www.musicstore.jp/
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