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ベテラン作・編曲家、フィル・ケリー
40年以上の輝かしい経歴を誇る、ベテラン作・編曲家フィル・ケリーのリーダー作を今回はご紹介したいと思います。

フィル・ケリーは、最初はTerry Gibbs(vib)、Red Garland (p)等のジャズドラマーとしてスタートしましたが、その後テレビや映画 音楽の作・編曲で脚光を浴び、The Fort Worth、Houston、Dallas、Cincinnati交響楽団等に、25年以上スコアを提供し続けてきました。1975年頃に大変話題になったトロンボーンのBill Watrous'New York Wildlife Refuge(ニューヨーク野生生物保護管区)と言う変わった名前のバンドにも作品を提供し、そのLPは当時大変話題になりました。現在は半ばリタイヤし西海岸のワシントン州を本拠に、主にジャズ教育の場で、クリニシャンとしても活躍しています。

2003年にレコーディングされた初リーダー作「Convergence Zone」につづき、昨年2枚目のアルバム「My Museum」がリリースされました。それぞれのアルバムはフィル・ケリーの活動拠点が違うことから、演奏メンバーもほとんどが入れ替わっています。どちらのアルバムもほとんどがフィル・ケリーの作曲なのですが、サウンドの違いは歴然としていますので、聞き比べてみると大変おもしろいと思います。

それでは、それぞれのアルバムのご紹介をしていきましょう。
Convergence Zone
40年以上の輝かしい経歴を誇る、ベテラン作・編曲家フィル・ケリーの初リーダー・アルバムです。このアルバムは、Pete Christlieb(ts)、Andy Martin(tb)、Jay Thomas(tp)、Gary Smuylan(bs)、Pat Coil(p)等の実力派のミュージシャンをメイン・ソリストに迎え、アンサンブルとソロが高いレベルでバランスがとれた、モダンでオーソドックスなサウンドを響かせています。

全10曲の中、“Bella Luce”と“You and the Night and the Music”以外は全部彼のオリジナルです。特に印象に残る曲として、“Sweet Georgia Upside Down”はスタンダード・ソングの“Sweet Georgia Brown”を元にした曲で、このバンドの将来を明るく照らすように快適にスイングしています。続く“Bella Luce”は同じくベテラン作・編曲家のJoe Labarberaのオリジナルをアレンジしたもので、名トランペッターConte Condoliに捧げられたものです。Jay Thomasが素晴らしいソロで聴かせています。いつの間にか加わってくるバックのシンセサイザーによるストリングスがとても美しいです。もう1曲のスタンダード“You and the Night and the Music”ではAndy Martinのプレイが相変わらず快調!元スタジオ・ミュージシャンだった奥さんKathyに捧げた美しいワルツの“Kathy's Waltz”は、“Bella Luce”と同様シンセサイザーによるストリングスが入りますが、それが少々鼻につくのは残念です。“The Refrigerator”~冷蔵庫という変わった曲名~の曲は、このアルバム中、唯一の16ビートの曲。全10曲中6曲でソロを聴かせ、この曲でもソロをとるテナーのPete Christliebの存在感が凄いの一言に尽きます。

録音が綺麗すぎるのでしょうか?少々エキサイト感に欠ける面がありますが、内容の非常に濃いおすすめアルバムです。
収録曲
1. Damp Brown Places [ Phil Kelly ]
2. Cuzn Bubba Luvz Ewe [ Phil Kelly ]
3. Subztatoot Shuffle [ Phil Kelly ]
4. Sweet Georgia Upside Down [ Phil Kelly ]
5. Bella Luce [ arr. Phil Kelly ]
6. You and the Night and the Music [ arr. Phil Kelly ]
7. Yada Yada [ Phil Kelly ]
8. O.T.B.S. [ Phil Kelly ]
9. Kathy’s Waltz [ Phil Kelly ]
10. The Refrigerator [ Phil Kelly ]
My Museum
2003年録音の前作「Convergence Zone」から3年、待望のフィル・ケリーの新作がこのアルバムです。今作では本拠地をロサンゼルスに移し、メンバーも前作でも大活躍したPete Christlieb(ts)、 Andy Martin(tb)等に加え、現在油の乗り切ったWayne Bergeron(lead tp)、元Maynard Ferguson Orch.のスター・プレイヤーLanny Morgan(lead alto)、Buddy Rich Bandでも活躍したBill Cunliffe (p)等を迎えて、最高のアンサンブルとソロを聴かせています。

“Jeannine”はピアニストのDuke Peasonのオリジナル で、Cannonball Adderley(as)や、作曲者自身のビッグバンドでの演奏で有名な名曲ですが、ここではトロンボーン・セクションを主体に、更なる魅力を付け加えています。アンサンブルに続くBob Summers (tp)、Andy Martin、Pete Christlieb等のソロも快調そのもの!“Bluelonius”は Philのオリジナルでスロー・ブルース。Lanny Morganと、前作でもフィーチュアされたJay Thomas(tp)のソロが聞き物です。“Pleading Dim Cap”は16ビートのリズムにのって、Bill Holman風に、たくさんのラインが絡み合って構成された佳曲。“Daydream”はDuke Ellington/Billy Strayhornの名曲がメディアム・テンポで心地よくスイングします。アルバムのタイトルになった“My Museum”は、シアトル近辺で活躍するGreta Matassaのヴォーカルがなんとも美しいPhilのオリジナルです。この曲だけに加わったストリングス・セクションと木管群が絶妙なハーモニーを聴かせます。この曲だけでもこのCDを買う価値があるでしょう。

“Juan Beatov Stomp”は、8分の7拍子の8ビート。あまりにスムースなメロディーと演奏なので変拍子に気がつかないかも? この曲と“It's a Lazy Afternoon”だけに加わるGrant Geissman(gt)が良い味を出しています。このアルバムのもう一つの名演が“Body & Soul”です。スローで演奏されること多いスタンダード・ナンバーを、意表をついた倍テンポのラテン、しかもバリトン・サックスを全面的にフィーチュアしています。前作でlead altoを吹いたBill Ramsayがバリトンに持ち替えて気持ち良く吹きまくる。 “It's a Lazy Afternoon”は玄人好みの3拍子の名曲を16ビートに上手くのせ、木管とミュート・ブラスがなんとも豪華なアンサンブルを聴かせます。Bill Cunliffe、Grant Geissmannのソロも最高!“Zip Code 2005”は1973年にBill Watrous(tb) のオーケストラがレコーディングしたものを、このアルバムの為に手直ししたもの。Billに負けじとAndy Martin等が活躍する、アルバムの最後を飾るにふさわしい好演です。

前作も素晴らしかったですが、これは更に一皮も、二皮も剥けた見事なアルバム。絶対の自信を持って皆様にお勧めします。
収録曲
1. Jeannine [ Duke Pearson / arr. Phil Kelly ]
2. Bluelonius [ Phil Kelly ]
3. Pleading Dim Cap [ Phil Kelly ]
4. Daydream [ Ellington / Strayhorn / arr. Phil Kelly ]
5. My Museum [ Phil Kelly ]
6. Juan Beatov Stomp [ Phil Kelly ]
7. Body & Soul [ J. Green / arr. Phil Kelly ]
8. It's A Lazy Afternoon [ LaTouche / Moross / arr. Phil Kelly ]
9. Zip Code 2005 [ Phil Kelly ]
著者Profile
DAVE鈴木
1962年生まれ。まっとうな会社員だったが、ビッグバンドの世界にのめり込み楽譜やCDの個人輸入にはまり脱サラ、ミュージックストア・ジェイ・ピー設立。現在に至る。
どこで買えるの?
ここで、ご紹介したCDは、DAVE鈴木の運営するミュージックストア・ジェイ・ピーのホームページ http://www.musicstore.jp/
index.php?afid=kobe
で購入出来るほか、山野楽器銀座本店、ヤマハ銀座店CD売り場、タワーレコード全店、ジュージヤ梅田ハービスENT店などでご購入いただけます。
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