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恐るべし!アメリカの学生ビッグバンド
日本では大学生になってからビッグバンドを始めた方が多いのではないかと思いますが、アメリカでは高校生の音楽の授業でビッグバンドを経験することが可能です。また、高校生の時にはもちろん、大学生のビッグバンドにも必ず指導者がおり、きちんと経験を積んだ指導者の下、レベルアップを図るべく練習を積んでいます。ビッグバンドに指導者なんて・・・と考える方は日本では少なくないと思いますが、アメリカの学生バンドのCDを聞けば、その必要性を必ずや痛感することになるでしょう。

もちろん、日本と同様、アメリカの学生バンドのレベルも千差万別ですが、今回はアメリカの学生バンドの最高峰と言っても過言ではないであろう、北テキサス大学のバンドのCDをご紹介いたします。
LAB 2005
毎年全国から大学ビッグ・バンドが集まり、実力を競い合う「山野ビッグ・バンド・コンテスト」は、いまや夏の恒例行事になり、そのレベルの高い演奏はプロをも凌ぐ勢いがあります。もちろんジャズの本家本元アメリカにも、マイアミ大学、西イリノイ大学、南フロリダ大学、西ミシガン大学、ウィスコシン大学、フラトン・カレッジ、その他たくさんの優秀な学生ビッグ・バンドがありますが、ここ数十年常にその頂点に立つのが、このノース・テキサス大学One O’Clock Lab Bandです。このバンドの卒業生には主にコンボ(※)で活躍するジャズ・ソリストは少ないですが、西海岸でスタジオ・ミュージシャンとして活動しながら、ビッグ・バンドで活躍するミュージシャンは多数います。このバンドは毎年1枚ずつ録音を残していますが、この「Lab 2005」は最新の、とても優れたアルバムです。

1曲目の「Caravan」は、卒業生で最近注目のアレンジャーAlan Baylockのアレンジです。新鮮なサウンドとレベルの高い各ソロは聞き応え十分です。「Both」はディレクターのNeil slater先生のモダンな作品。スタンダードナンバーである「Autumn in New York」は50年代にStan Kentonにアレンジを提供していたBob Graettingerの作品です。彼独特のリハモニゼーションは今聞いてもとても新鮮です。「Quintescence」もStanKentonにアレンジを提供していたHank levyのアレンジです。「Mariano」はDon Sebeskyのバラッドで、フィーチュアされたアルト・サックスがとても良く唄っています。「Chili Fish」はバンド・メンバーのCarl Murrのモダンな作品。「Maria」はMaynard Fergusonのハイ・ノート・ソロで同じみだが、リード・トランペッターが果敢に挑戦しています。Maynardに比べるのはちょっとかわいそうですが、それにしても学生のレベルを遥かに超えた高いレベルです。「What Follows」はモーダルで良くスィングする演奏。テナー、トロンボーン、ピアノの各ソロもとても良いです。「Tuesday Night #1」も「Chili Fish」と同じくバンド・メンバーの作品でHerbie HancockのChameleonそっくりなファンキーな作品です。

とても学生とは思えない優れたアンサンブルと趣味の良い選曲で、全てのビッグ・バンド・ファンに安心してお勧め出来るアルバムです。

なお、この大学にはもう一つのビッグバンド、Two O'Clock Lab Bandがあります。OneとTwoだと、Oneが1軍バンド、Twoが2軍バンドという想像をしてしまいますが、まったくの勘違いで、One O'Clock Bandは午後1時からリハが始まるバンドで、 Two O'Clock Bandは午後2時からリハが始まるバンドだそうです。このTwo O'Clock BandはJames Riggsがディレクターを努める、演奏する曲の傾向も全く違うバンドです。
※コンボ
3人のトリオ、4人のカルテット、5人のクインテット、6人のセクステット、7人のセプテットぐらいまでの小編成のグループの事。10人前後はビッグコンボと言ったりもする。それ以上の人数はビッグバンド、ジャズ・オーケストラと呼ばれる。
収録曲
1. Caravan [ Ellington/Tizol / arr. Alan Baylock ]
2. Both [ Neil Slater ]
3. Autumn in New York [ Vernon Duke / arr. Bob Graettinger ]
4. Quintescence [ Hank Levy ]
5. Mariano [ Don Sebesky ]
6. Chili Fish [ Carl Murr ]
7. Maria [ Leonard Bernstein / arr. Don Sebesky ]
8. What Follows [ Stephen Smith ]
9. Tuesday Night #1 [ Graham Richards / arr. Dave Richards ]
著者Profile
DAVE鈴木
1962年生まれ。まっとうな会社員だったが、ビッグバンドの世界にのめり込み楽譜やCDの個人輸入にはまり脱サラ、ミュージックストア・ジェイ・ピー設立。現在に至る。
どこで買えるの?
ここで、ご紹介したCDは、DAVE鈴木の運営するミュージックストア・ジェイ・ピーのホームページ http://www.musicstore.jp/
index.php?afid=kobe
で購入出来るほか、山野楽器銀座本店、ヤマハ銀座店CD売り場、タワーレコード全店、ジュージヤ梅田ハービスENT店などでご購入いただけます。
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