ビッグバンド漫談
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田中啓文のビッグバンド漫談
バンド名をどうするか

もし、あなたがアマチュアビッグバンドを結成するとき、まっ先にしなければならないことは「名前をつけること」である。うちのバンドは、「ユナイテッド・ジャズ・オーケストラ」という名前に決まるまでずーっと名無しのまま練習していて、最初は「名無しのビッグバンド」と呼ばれていた。それでは練習にも力が入らない。

ジャズバンドの場合、いいかげんなネーミングが多い。ロック畑では「アイアン・メイデン」とか「ブラック・サバス」とか「クイーン」とかかっこいい名前ばかりだが、ジャズのほうは、リーダーの名前をとって、○○トリオとか○○クインテットとか○○グループとか、名前なんかどーでもいーもんねー、という態度がみえみえである。ただし、これも名前によりけりで、バンマスが「雲固忠介」という名前だったりすると、司会者が、紹介に困り、せっかくシリアスな演奏をしようとしているのに客席はその時点で大爆笑……ということになる。こういう場合は、しかたないから芸名をつけるかグループ名を「タダスケファイヴ」とかにするしかない。また、ピアノトリオのリーダーが鳥尾という名前だったら、鳥尾トリオになってしまい、これもどうしたものか。

では、ビッグバンドの場合はどうか。プロのバンドを見てみると、「デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ」、「カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ」、「サド・ジョーンズ・アンド・メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ」、「サン・ラー、アーケストラ」、「ミンガス・ビッグ・バンド」、……といたってシンプルである。これはやはりリーダーの知名度が抜群なので、その名前を前面に出せばそれだけでちゃんとしたネーミングになってしまうからだろう。せっかくの看板を隠すことはないのである。ほとんどが「○○・アンド・ヒズ・オーケストラ」、「○○・ジャズ・オーケストラ」と個人名を冠しているが、なかには「グローブ・ユニティ・オーケストラ」、「ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ」、「ウィーン・アート・オーケストラ」、「イタリアン・インスタビレ・オーケストラ」、「生活向上委員会大管弦楽団」、「渋さ知らず」……といったものもあるが、全体としてはまれであり、それらの多くは、特定のリーダーがいない、オールスターグループ的なものである

著者Profile
田中啓文
1962年、大阪府生まれ。作家。
神戸大学卒業。1993年、ジャズミステリ短編「落下する緑」が「鮎川哲也の本格推理」に入選。
同年「背徳のレクイエム」で第2回ファンタジーロマン大賞に入賞しデビュー。2002年「銀河帝国の弘法も筆の誤り」で第33回星雲賞日本短編部門を受賞。主な作品に「蹴りたい田中」「笑酔亭梅寿謎解噺」「天岩屋戸の研究」「忘却の船に流れは光」「水霊 ミズチ」(2006年映画化)などがある。
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