ジャズ探訪記 バックナンバー
●LiveHouse & Restaurant POCHI(ポチ)
ジャズファン喜び庭かけまわる、ほんまもん@明石。
さていきなり明石なんである。
明石といえば明石焼き、魚の棚の安くて新鮮な魚、おおそういえば魚の棚商店街のジャズイベント「タコタコジャズ」にも取材でやってきたなあ。
知らない道のりは遠く感じるものだけど、いざ電車に乗ってみると、大阪からでも40数分、神戸からなら30分かからない。意外なくらいに近間なんである。
JR明石駅を降りて海側に、2号線を渡ったら西側に折れてほんの2,3分。お、なんか手書きっぽいサインの中にトランペットのイラストが見える。ここだな、今回おじゃまする「ポチ」さんは。

地下のお店、と聞いていたので迷わずらせん階段を降りる。…なんていうと、またもやタバコの煙、茶色くくすんだ壁、黄ばんだまま飾られているLPジャケット…みたいなイメージもしちゃうわけですが。ところが広いんですね、この階段が。階段、というより、階段のあるホールを地下に向かうという感じで。ビル自体も新しいようで、とても清潔で明るい。

地下1階にしては長い階段だなあと思いながらドアを開けると、いや、これはなるほど。この高い天井はとても地下とは思えない。2階分くらいの高さがないと、この広々とした空間はできないんじゃなかろうか。
やや細長い店内は、まず左手にカウンター、右手からはテーブル席が奥に向かって伸びている。奥にステージがしつらえられていて、少し高さがあるせいでテーブル席に座っていてもとても見やすそうだ。ここではなんとビッグバンドのライブが聴けるという事前情報もあり、ステージが広々しているのも納得である。
いや、こりゃあいいお店だなあ、空気もキレイだ。

この「ジャズ暖房機」、いやいや暖房してどうする、「ジャズ探訪記」、もいつの間にか足かけ5年。直接・間接にいろんなお店の情報に触れることになって、そんな中で、いい店かどうかを嗅ぎ分けるカンのようなものが多少は身についたような気もするんですね。そのカンで判断するなら、ここはまちがいない、内なる声がそうささやいた気がして…。
五月としてもずいぶん暑かったこの日、ハハハ、ビールなんかお願いしたりして、そんなことを考えているうちに今日のライブが始まった。今日はビッグバンドではなく、ピアノトリオ+トランペットという編成である。




あれ、なんていい音…!
素直で、バランスがとてもいい。トランペットみたいな楽器が入ると、けっこうキンキンした感じに聞こえることも少なからずあるのだけど、とても落ち着いたいい音だ。もちろんプレイヤーの技量のせいもあるんだろうけど、こりゃあいいなあ、食事やお酒や、なにより会話を楽しみながら聴くことができる音質だ。
…と感心していると、
「そうでしょう?、苦労しましてん」と応えていただいたのがオーナーの吉見さん。
なんと遮音のために、ステージの下には砂が!一杯に入れられているんだそうだ。何度もいろんな方法を試してみながらたどり着いたのがこの方法だったとか。
吉見さんご自身もトランペットやピアノを演奏されるということで、そういう部分に妥協はないようだ。

ブラスバンド出身で、始めはトロンボーンだったという吉見さん、なんでも昔は三宮界隈のライブハウスに通いつめるうち、なぜかピアニストとして演奏をするようになっていたとか(笑)。2004年には「ポチ」のオリジナル・ビッグバンドを結成、ジャズ熱はさらに熱くなったようだ。そして今年、「ポチ」の開店という運びになったということらしい。ライブハウスをやりたい、という夢の実現でもあるわけだけど、
吉見さんは一歩下がったところからお店やミュージシャンを見ているようで、「遊びやボランティアでなく、ミュージシャンにキチンと仕事をする場を提供したい」さらに「明石をもっと楽しい街にしたい」というのが、夢のもうひとつの側面でもあったようだ。お店に「旦那の義太夫」的な匂いがしないのは、きっとそんな思いが反映されているからだろう。いや、クールですねえ。

さて、妥協がないといえば、それは音ばかりではなくて。
ピッツァやサラダ、揚げギョーザなど、お願いしたフードもドリンク類も、ちゃんとしたホンモノの味わいである。なかでもピッツァは、生地が薄くてパリパリの僕好み。タマネギサラダは早生のタマネギをわざわざ淡路島から取り寄せて…という凝りっぷりである。お酒の品揃えも充実していて、なるほど、お客さんに楽しんでもらうには演奏だけでなく、そのあたりも大事ということでしょうね。

吉見さんや、ポチの店長・中西さんも参加して結成されたオリジナル・ビッグバンドのCD「ポチ・ジャズクラブ」を聴かせていただいた。選曲もビッグバンドものあり、映画ものあり、でジャズだけにとどまらない。
音楽表現とか芸術性とか、あるいはある種の気取りとか。
そんなものはとりあえずおいといて、まっさきに聴こえてきたのは「音楽は楽しい!」というメッセージだ。そしてそれこそが、本当はいちばんの音楽表現なのではないか…、なんてことを考えてしまった。
ま、細かいコトはヌキにして。とりあえずイッパイ飲んで、ピッツァでもつまんで、のんびりゆるゆるライブ聴きましょ。
ジャズは、音楽は、やっぱり楽しいものなんだなあって、きっと思いますから。

あ、そうそう、「ポチ」って名前の由来ですが。
戌年生まれの、吉見さんの子供時代のニックネームだそうです(笑)。

LiveHouse & Restaurant POCHI
●兵庫県明石市本町2-1-1 インティイビルB1F
●TEL/FAX:078-911-3100
取材日:2010.5.18
●http://www.pochi-live.com
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